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遠慮会釈
えんりょえしゃく
作家
作品

夏目漱石

【道草】

 彼はこの見地から、昔し細君の弟を、自分の住んでいる遠い田舎(いなか)へ伴(つ)れて行って教育しようとした。その弟は健三から見ると如何にも生意気であった。家庭のうちを横行して誰にも遠慮会釈がなかった。ある理学士に毎日自宅で課業の復習をしてもらう時、彼はその人の前で構わず胡坐(あぐら)をかいた。またその人の名を何君何君と君づけに呼んだ。

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有島武郎

【卑怯者】

往来の子供たちはもとより、向こう三軒両隣の窓の中から人々が顔を突き出して何事が起こったかとこっちを見る時、あの子供と二人で皆んなの好奇的な眼でなぶられるのもありがたい役廻りではないと気づかったりして、思ったとおりを実行に移すにはまだ距離のある考えようをしていたが、その時分には扉はもう遠慮会釈もなく三、四寸がた開いてしまっていた。と思う間もなく牛乳のガラス瓶があとからあとから生き物のように隙(すきま)を眼がけてころげ出しはじめた。

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有島武郎

【カインの末裔】

 遠慮会釈もなく迅風(はやて)は山と野とをこめて吹きすさんだ。漆(うるし)のような闇が大河の如(ごと)く東へ東へと流れた。マッカリヌプリの絶巓(ぜってん)の雪だけが燐光を放ってかすかに光っていた。荒らくれた大きな自然だけがそこに甦(よみがえ)った。

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高村光太郎

【緑色の太陽】

 この点から、僕は日本の作家があらゆる MOEGLICH(可能)な技巧を遠慮会釈なく用いん事を希望している。その時の内面の要求に従って必ずしも非日本的を恐れない事を祈るのである。

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高村光雲

【幕末維新懐古談 仏師の店のはなし(職人気質)】


 右の如く、弟子たちは、仕事のことに掛けては、一心不乱、互いに劣るまい、負けまいと、少しの遠慮会釈もなく、仕事本位の競争をしますが、内面の交わりとなると、それはまた親密なものでありました。

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徳冨盧花

【水汲み】

天秤棒に肩を入れ、曳(えい)やつと立てば、腰がフラ/\する。膝はぎくりと折れさうに体(からだ)は顛倒(ひつくりかへ)りさうになる。呍(うん)と足を踏みしめると、天秤棒が遠慮会釈(ゑんりよゑしやく)もなく肩を圧しつけ、五尺何寸其まゝ大地に釘づけの姿だ。

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伊藤左千夫

【去年】

「えィお嬢さまでいらっしゃいますよ」
 生まれる運をもって生まれて来たのだ。七女であろうが八女であろうが、私にどうすることもできない。産婆はていちょうに産婆のなすべきことをして帰った。赤子はひとしきり遠慮会釈(えんりょえしゃく)もなく泣いてから、仏のような顔して眠っている。姉々にすぐれて顔立ちが良い。

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有島武郎

【或る女(前編)】

食堂で不意の質問に辟易(へきえき)した外交官補などは第一の連絡の綱となった。衆人の前では岡は遠慮するようにあまり葉子に親しむ様子は見せずに不即不離の態度を保っていた。遠慮会釈なくそんな所で葉子になれ親しむのは子供たちだった。


「ゆうべもその美しいお客がいらしったの? とうとうお話にお見えにならなかったのね」
 木村を前に置きながら、この無謀とさえ見える言葉を遠慮会釈(えしゃく)もなくいい出すのには、さすがの事務長もぎょっとしたらしく、返事もろくろくしないで木村のほうに向いて、
「どうですマッキンレーは。驚いた事が持ち上がりおったもんですね」

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島崎藤村

【夜明け前 第一部下】

殿様方はきたない事はできない、幸いここに革細工をするやつがいるからそれにさせろと言われるのと少しも変わったことはない、それに遠慮会釈も糸瓜(へちま)も要(い)るものか、さっさと打(ぶ)ちこわしてやれ、ただしおれたちは自分でその先棒になろうとは思わない

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菊池寛

【貞操問答】

 新子は、憤(いきどお)りで身体が、熱くなっていた。今まで比較的に、平穏無事であったために、軌(きし)み合うことなしに過ぎた二人の性格の歯車が、今やカツカツと音を立てて触れ合っているのだった。なまじ、相手が肉親であるだけに、つい言葉も、ぞんざいになり、一旦云い出したとなると、真正面から遠慮会釈もなく、切り込む新子の太刀先(たちさき)を、あしらいかねて、圭子はタジタジとなったが、すぐ立ち直ると出鱈目な受太刀を、ふり廻し始めた。

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坂口安吾

【老嫗面】

然し派手な着物をきて鼻先から額に汗をにぢませた女共が遠慮会釈もなく框(かまち)の上へどつこいしよと荷物を投げ込み、犬屋の店先であるかのやうに口々に吠え、而して遂にわが良人(おつと)なる人物が汗にまみれて疲労のどん底にありとはいへ、真剣なることアトラスのごとき重々しさで大きな行李をかつぎこんでくる様を認めた時に、松江は思はずきやッと叫んで台所へと退散した。

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佐々木味津三

【旗本退屈男 第四話 京へ上った退屈男】

 町人風情(ふぜい)の葉ッ葉者が、武士を粗略にした雑言(ぞうごん)を吐いたばかりか、ききずてにならぬ事を言いながら、わが旗本退屈男を痩せ浪人ででもあるかのごとくに取扱って、遠慮会釈もなくぐいぐいとうしろに押しのけたので、いぶかりながらふり返って見眺めると、いかさま大道狭しと八九人の取り巻を周囲に集(たか)らせて、あたりに人なきごとく振舞いながら、傲然(ごうぜん)としてやって来たのは、一見して成り上がり者の分限者(ぶげんしゃ)と思われる赤ら顔の卑しく肥った町人でした。

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牧野信一

【鬼涙村】

 法螺忠は何か一言云ふと、あははと馬のやうに大きな黄色の歯をむき出して笑ひ、それに伴れてゲーツ、ゲーツと腹の底から込みあげる蒸気のやうなゲツプを遠慮会釈もなく放出して「どうも胃酸過多のやうだ。」と呟きながら奥歯のあたりを親指の腹でぐいぐいと撫た。鼻は所謂ざくろ鼻といふやつだが、たゞ赤いばかりでなく脂光にぬらついて吹出物が目立ち、口をあく毎に双つの小鼻が拳骨のやうに怒り鼻腔が正面を向いた。

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魯迅
井上紅梅訳

【村芝居】

 わたしどもの日々の仕事は大概蚯蚓(みみず)を掘って、それを針金につけ、河添いに掛けて蝦(えび)を釣るのだ。蝦は水の世界の馬鹿者で遠慮会釈もなしに二つの鋏で鈎(はり)の尖(さき)を捧げて口の中に入れる。だから半日もたたぬうちに大きな丼に一杯ほど取れる。

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西尾正

【放浪作家の冒険】

なにか殺伐な事件がなかでおこりつつあるに相違ないと直感したのだ。もどろうか、そのまま様子をうかがっていようかと、ちょっとのま思案したが、そうこうしているうちにも苦悶の吐息は遠慮会釈もなく、おしつぶされたようにひびいてくる。

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柴田流星

【残されたる江戸】

 某県選出衆議院議員何誰と恐ろしく厳めしい名刺を出して、新橋に指おりの大料理店に上り込み、お定りの半会席を一円にまけとけなぞと遠慮会釈ものう御意遊ばす代議士殿のござる世に、八百善料理の粋を紹介しても、真に首肯(うなず)きたもうお方の果して幾人を数え得ることやら、実は少々心細き限りではあるが、こうでもない、ああでもないの食道楽の末、いよいよという時が来たら山谷にここの板前を吟味したまえ。


 江戸ッ児の気分はただそれ如此(かくのごとく)である、ただそれ如此である、無邪気と、ザックバランと、人を嫌がらせねえのと、遠慮会釈がないのと、物事がテキパキしておるのと、これらを除いてはかれの生命なるもの殆んど他にこれあるを知らぬ。

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宮本百合子

【禰宜様宮田】

 どんな僅かの機会でも、決して見逃すことのない彼女は、幾分かの利益が得られそうだとなると、どんな手段でも策略でも遠慮会釈なくめぐらして、どうにでもしまいには勝つ。

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海野十三

【夜泣き鉄骨】

 一同は、ワッといって、入口の扉(と)の方へ、先を争って駆けだした。ガラガラと、重い鉄扉(てっぴ)が、遠慮会釈(えんりょえしゃく)なく、引き開けられる物音がした。

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国枝史郎

【前記天満焼】

 ところが一方源三郎は、怒りと屈辱とで正気を失い、今や狂暴になっていた。そこで、無闇とあばれ廻り、無二無三に匕首を揮い、遠慮会釈なく人を切る。捕らえることも抑えることも出来ない。

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山路愛山

【明治文学史】

将又(はたまた)明六社なる者が其領袖(りやうしう)西周(あまね)、津田真道(まみち)、森有礼等に因(よ)りて廃刀論、廃帝論、男女同権論の如き日本歴史に未曾有(みぞう)なる新議論を遠慮会釈なく説(と)き立てしが如き、中村敬宇先生が自助論を飜訳し耶蘇教の洗礼を受けしが如き、皆是れ前例なく先蹤(せんしよう)なく、前人の夢にだも思はざる所迄に向つて先づ手を附けし者なり。


彼は極端なる個人主義、放任主義、或る意味に於ての世界主義を遠慮会釈なく説き立てたり。世は彼れの為めに驚かされたり、或る者は其大胆なるに恐れたり、或る者は其議論の条理整然として敵すべからざるを恐れたり。

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中里介山

【大菩薩峠 椰子林の巻】

なにしろ大仏の本尊の盧遮那仏(るしゃなぶつ)が、五丈三尺という日本一の大きさを誇っている、その前ですから、仁王としては無双の仁王が、子供ぐらいにしか見えず、ただ、その芸術の優秀なことに於て前後を睥睨(へいげい)しているのと、案内人が遠慮会釈もなく、「これが有名な東大寺大仏殿の仁王、右が運慶(うんけい)、左が湛慶(たんけい)――」と言って、作ということを言わないから、

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邦枝完二

【おせん】

所詮(しょせん)は男(おとこ)も女(おんな)もなく、おせんに取(と)っては迷惑千万(めいわくせんばん)に違(ちが)いなかろうが、遠慮会釈(えんりょえしゃく)はからりと棄(す)てた厚(あつ)かましさからつるんだ犬(いぬ)を見(み)に行(ゆ)くよりも、一層(そう)勢(きお)い立(た)って、どっとばかりに押(お)し寄(よ)せた。

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  • このサイトの制作時点では、三省堂の『新明解 四字熟語辞典』が、前版の5,600語を凌ぐ6,500語を収録し、出版社によれば『類書中最大。よく使われる四字熟語は区別して掲示。簡潔な「意味」、詳しい「補説」「故事」で、意味と用法を明解に解説。豊富に収録した著名作家の「用例」で、生きた使い方を体感。「類義語」「対義語」を多数掲示して、広がりと奥行きを実感』などとしています。

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Last updated : 2022/11/23