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不得要領
ふとくようりょう
作家
作品

森鴎外

【独身】

「そんな堅白異同(けんぱくいどう)の弁を試みたっていけない。」
  主人は笑談(じょうだん)のような、真面目(まじめ)のような、不得要領な顔をしてこんな事を言った。
「そうでないよ。君は科学科学と云っているだろう。あれも法なのだ。君達の仲間で崇拝している大先生があるだろう。

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夏目漱石

【長谷川君と余】

横へ回って見ると、それが長谷川君であった。その時余は長谷川君に向って、「ちょっと御訪(おたず)ねをしようと思うんだが」と言い出して、まだ句を切らないうちに、君は「いや低気圧(ていきあつ)のある間は来客謝絶だ」と云った。低気圧とは何の事だか、君の平生を知らない余には不得要領(ふとくようりょう)であったけれど、来客謝絶の四字の方が重く響いたので、聞き返しもしなかった。

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尾崎放哉

【俺の記】

七八人寝て居たゞらう、すると、ドーダ、今の六人の化物は、何の事ない枕を蹴とばす、布団をはねる、机を飛ばす、夢に牡丹餅ならだが、夢に章魚では一寸噛み切れないだらう。処で、寝て居る連中は、定めて驚くだらうと思ひの外、案外だつたね、何の怒る処か、但しボンヤリした、不得要領な顔付はして居たが、起されても、寂しさうな笑ひを、無理に構造して居る、何笑ひと云ふのであるか、但し、実によく馴らした物だな、と、俺も全く感心してしまつたよ。


バツがわるいので、「君は何時此処へ来たのですか」と、少し大きな声できいてやつた。すると、「何時つて、今度で四度目さ」、どうだえらいだらうと云ふ鼻付、何がえらいのか俺には解らぬ。「フーン」と不得要領な返事をして居ると、中で「俺は三度目さ」と云つた奴がある。「俺は二度目だ」と云ふ声が続いて出た。

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寺田寅彦

【ゴルフ随行記】

しかしとにかく一度ゴルフ場へお伴をして見学だけさせてもらおうということになって、今年の六月末のある水曜日の午前に二人で駒込(こまごめ)から円タクを拾って赤羽(あかばね)のリンクへ出かけた。空梅雨(からつゆ)に代表的な天気で、今にも降り出しそうな空が不得要領に晴れ、太陽が照りつけるというよりはむしろ空気自身が白っぽく光り輝いているような天候であった。

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齋藤茂吉

【曼珠沙華】

そういう趣味からいうと、蔟生している青い葉の中から、見えるか見えないくらいにあの紅い花を咲かせたいのであろうが、あの花はそんなことはせずに、冬から春にかけて青々としてあった葉を無くしてしまい、直接法に無遠慮にあの紅い花を咲かせている。そういう点が私にはいかにも愛らしい。勿体ぶりの完成でなくて、不得要領のうちに強い色を映出しているのは、寧ろ異国的であると謂うことも出来る。秋の彼岸に近づくと、日の光が地に沁み込むように寂(しず)かになって来る。この花はそのころに一番美しい。彼岸花という名のあるのはそのためである。

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堺利彦

【獄中生活】

 面会は囚人にとって非常に愉快のことであるが、あまり再々人が来ると一々には許されぬ。手紙は大概のものは見せられる。百穂君の絵葉書だけは一枚きりしか見せられなんだ。それから中村弥二郎君が予の無聊を慰めんとて、昔話を書いた葉書を寄こされたが、それは「不得要領につき不許」という附箋がついて、出獄のときに渡された。獄中ではただ無事(或は単調)に苦しむのであるから、手紙、面会、入浴、散髪、運動等、何でも少し変ったことがあれば非常に愉快に感ずる。

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宮本百合子

【一太と母】

「……そういうんでは、あなたが今云った朝鮮行きもどんなものかな……一つ大決心がいるね」
  一太に会話の大部分は不得要領であった。一太は、ただ漠然いつ朝鮮へ行くのだろうと思った。この頃一太の母はこうして訪ねた先々で朝鮮行きのことを話した。一太にも話した。母親は一太をつかまえて大人に相談するように、
「ねえ一ちゃん。いっそ朝鮮のおじさんとこへでも行くかねえ。こういいめがふかなくちゃあやりきれないもん……ねえ」
と談合した。

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三島霜川

【自傳】

 で、父から遺産どころか、荷厄介な遺族を殘されて、未だ力のない者が、其重荷を負ふてよた/\と今迄遣つて來たのである。
  それで、父に死別れたのは二十の時で、僕は神經衰弱になるし、不得要領の中に、一年と云ふ長い月日を滅茶苦茶の中に送つて了つて、そして二十一二の春ころまでは、書くでもなく、書かぬでもなく、貸してあつた金を取つたり、家財を賣つたり、誠に混沌たる生活をした。

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坂口安吾

【母を殺した少年】

 若い虚無家の不得要領の奔走が有耶無耶(うやむや)のために奏功した。いちの婚約は解消され、いちも洗礼を断念し、勘当を解かれて生家へ帰つた。どさくさが鳧(けり)をつけた翌日だつた。

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内田魯庵

【灰燼十万巻(丸善炎上の記)】

『△△さんの靴は初めて見た、』と暢気な観察をする小僮(こども)もあった。黒い髯で通る○○は露助然たる駱駝帽を被って薄荷パイプを横啣(よこぐわ)えの外套の衣兜(かくし)に両手を突込みの不得要領な顔をしていた。白い髯で通る社長老人は眼鏡越しに眼をパチ/\して、『私(わし)の家(とこ)へは店から火事だと電話が掛った。処が中途でプツリと切れたので、直ぐ二十八番を呼出そうとすると、丸善は今焼けてるという交換局の返事だから、そりゃ大変というので……』と、恰も一里も先きに火事があったように悠々閑々と咄していた。

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コナン・ドイル
三上於莵吉訳

【自転車嬢の危難】

「ははあ、ワトソン君、――」  ホームズは慎重な調子で云った。 「これはあの娘さんの周囲には、何か深いたくらみがめぐらされているよ。あの娘さんの最後の帰り路を、無事に護ってやらなければならない。ワトソン君、今度の土曜日の朝は、一つ一緒に出かけて行って、この奇妙な、不得要領(ふとくようりょう)な事件を、見事に結末をつけてしまおうじゃないかね?」


――それから例の自転車乗りの男も、居酒屋の主人のいわゆる、週末組の一員には相違ないが、しかしこの者も、一たいどう云う者で、何の目的であんなことをするかも、全く不得要領である。しかし私は、ホームズの態度がいかにも厳粛で、しかも出かける時にピストルまでもポケットにねじこんだので、これはとにかく、この変な事件の後にも、なかなかの惨劇も予想されているのだなと思った、のであった。

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岡本綺堂

【半七捕物帳 半鐘の怪】

 彼女がふるえながら話すところに因ると、かれが屋根の上をそっと覗こうとする時に、引窓の穴から二つの大きい光った眼が出た。彼女はそれ以上を見とどける勇気も無しに奥へ逃げ込んでしまったのであった。
  この報告を受け取って、人々はまた迷った。
「番太郎の女房の云うことはあてにならない。どうも人間ではないようだ」と、今夜の評議も結局不得要領に終った。
  こうして不安と混雑とを続けているうちに、半七は一方の用が片付いた。きょうはいよいよ半鐘の詮議に取りかかろうと思っていたが、午前(ひるまえ)は客が来たので出る事ができなかった。

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国枝史郎

【銅銭会事変】

いったい何をしているのだろう? そうやって遊んでいるのだろうか? 座敷の隅で、チビチビ酒を飲んでいた。見ているような見ていないような、不得要領な眼使いを一人の町人はして、茶椀の変化へ眼を付けていた。二人は懇意の仲とも見え、また全くの他人とも見えた。そういう不思議な茶椀の芸当が、しばらくの間繰り返された後、二人の町人は茶屋を出た。ややあって老武士が編笠を冠(かぶ)った。

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中里介山

【大菩薩峠 市中騒動の巻】

 この貧窮組というものが、前に申すように、山崎町の太郎稲荷(たろういなり)から始まるには始まったが、このくらい不得要領な組合もなかったものです。幾百人の男女が市中を押廻って、町の角や辻々へ大釜を据(す)えて、町内の物持から米やお菜(かず)を貰って来て粥(かゆ)を炊(た)いて食い、食ってしまうと鬨(とき)の声を挙げて、また次の町内へ繰込んで貰って炊いて食い歩くのです。


 この不得要領な貧窮組は、その夜は昌平橋際へ夜営をしてしまいました。このくらいの騒ぎだから役人の方へも聞えないはずはありません。けれども幕末の悲しさ、これを押えんために捕方(とりかた)が向って来る模様も見えませんでした。そうなってみると貧窮組の組織は、決してこの一カ所にとどまらないことです。


そうして貧窮組はついに江戸市中を風靡(ふうび)してしまったけれど、その不得要領なことはいつまでたっても不得要領で、お粥を食って歩くこと、せいぜい忠作の家を叩き壊すくらいのところであったが、解(げ)せぬのはその貧窮組が騒いで行ったあとで、必ず貧窮組らしくない仕業(しわざ)が二つ三つは必ず残されていることです。

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Last updated : 2022/11/23