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無念千万
むねんせんばん
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作家
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作品
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【夜明け前 第一部上】
その時だ。伊之助は声を潜めながら、木曾の下四宿から京都方の役人への祝儀として、先方の求めにより二百二十両の金を差し出したことを語った。祝儀金とは名ばかり、これはいかにも無念千万のことであると言って、お継ぎ所に来ていた福島方の役人衆までが
口唇をかんだことを語った。伊那助郷の交渉をはじめ、越後、越中の人足の世話から、御一行を迎えるまでの各宿の人々の心労と尽力とを見る目があったら、いかに強欲な京都方の役人でもこんな暗い手は出せなかったはずであると語った。
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【八ヶ嶽の魔神】
松崎清左衛門は何が不足で葉之助の入門を拒絶ったのであろう? それは誰にも解らない。しかし当の葉之助にとっては無念千万の限りであった。
「そういう訳なら師を取らずに己一人工夫を凝らし、東軍流にて秘すところの微塵の構えを打ち破り清左衛門めを打ち据えてくれよう」
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Last updated : 2022/11/23