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前後不覚
ぜんごふかく
作家
作品

夏目漱石

【吾輩は猫である】

吾輩はいつでもここへ出て浩然こうぜんの気を養うのが例である。ある小春の穏かな日の二時頃であったが、吾輩は昼飯後ちゅうはんご快よく一睡したのち、運動かたがたこの茶園へとを運ばした。茶の木の根を一本一本嗅ぎながら、西側の杉垣のそばまでくると、枯菊を押し倒してその上に大きな猫が前後不覚に寝ている。彼は吾輩の近づくのも 一向いっこう心付かざるごとく、また心付くも無頓着なるごとく、大きないびきをして長々と体をよこたえて眠っている。

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夏目漱石

【門】

御米は容易に覚めそうにも見えなかった。宗助は昨夕ゆうべ御米が散薬を飲んでから以後の時間を指を折って勘定した。そうしてようやく不安の色をおもてに表わした。昨夕までは寝られないのが心配になったが、こう前後不覚に長く寝るところを のあたりに見ると、寝る方が何かの異状ではないかと考え出した。

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国木田独歩

【鹿狩り】

戸外そとがだんだんあかるくなって来た。人々はそわそわし初めた、ただ今井の叔父さんは前後不覚ていである。

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与謝野晶子

【晶子詩篇全集】

今は
(私は正しく書いて置く、)
一千九百十六年一月十日の
午前二時四十しじふ二分。
そして此時このときから十七じふしち分前に、
一つの不意な事件が
私を前後不覚
くつくつと笑はせた。

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太宰治

【弱者の糧】

翌る朝、思い出して、また泣いたというのは、流石さすがに、この映画一つだけである。どうせ、批評家に言わせると、大愚作なのだろうが、私は前後不覚に泣いたのである。あれは、よかった。なんという監督の作品だか、一切わからないけれども、あの作品の監督には、今でもお礼を言いたい気持がある。

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坂口安吾

【西荻随筆】
 私は、西荻窪という停車場へ下車したことは生れて以来一度もないのである。もっとも、去年は酔っ払って前後不覚、奥沢の車庫へはいり、お巡りさんに宿屋へ案内してもらったような戦歴もあり、前後不覚の最中に何をやっているか、どこへ旅行しているか、ちょっと見当のつかない不安もあった。

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種田山頭火

【松山日記】

七月三十一日

 晴――曇。

五時起床、おだやかな朝明だつた。
やつと質を入れて利あげをする。……
午後、道後へ出かけたのが失敗の基だつた、一週間ぶりにひつかけたので悪酔して、無茶苦茶、いつもの無軌道ぶりを展開した、財布もなくなるし、恥も外聞も忘れるし、たうとう交番の厄介にまでなつた! それでもどうやらかうやら戻つてくることは戻つてきたが。――
愚劣、愚劣、愚劣といふより外ない! どうして私はこんなに弱いのか、あまりに弱い、弱すぎるではないか!
前後不覚、自他忘失、……あゝ!

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宮本百合子

【播州平野】

低く靄がこめている藷畑いもばたの上をわたって、大きい池のあっちから、その女の声はとぎれとぎれにきこえた。責任感でかすかにふるえているかと思うその中年の女の声は、ひろ子に田舎町のはずれに在る侘しいトタン屋根の棲居すまいを思いやらせた。古びた蚊帳の中で汗をかきかき前後不覚に眠ってしまった何人かの子供らの入り乱れた寝相と、一人の婆さまの寝顔とが思いやられた。その家には、たしかに男手が無いのだ。

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中里介山

【大菩薩峠 年魚市の巻】

 駒井甚三郎は、マドロスが酔倒していた現場まで来て見たけれども、もはや、そのところにマドロスの形がありません。
 そのあたりを、暗い中で、相当にあたりをつけて見たけれど、単にいたところの人が見えなくなったというだけで、そのほかにはなんら異常の気配は見えないようです。
 つまり行違いになったのだ、先生、ようやく目がさめて、あわてふためいて立戻り、いまごろは、寝床へもぐり込んで、前後不覚の夢を繰り返しているのだろうと、駒井はタカをくくって、そうして、それから海岸の方へと歩みを進めました。

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吉川英治

【三国志 赤壁の巻】

 夜はすでに四更に近い。陣中を巡邏じゅんらする警板の響きがする。……周瑜はとみればなお前後不覚ていたらくだ。残燈の光淡く、浅ましい寝すがたに明滅している。

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Last updated : 2022/11/23