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全身全霊
ぜんしんぜんれい
作家
作品

有島武郎

【或る女 (前編)】

葉子の母が暴力では及ばないのを悟って、すかしつなだめつ、良人おっとまでを道具につかったり、木部の尊信する牧師を方便にしたりして、あらん限りの知力をしぼった懐柔策も、なんのかいもなく、冷静な思慮深い作戦計画を根気こんきよく続ければ続けるほど、葉子は木部を後ろにかばいながら、健気けなげにもか弱い女の手一つで戦った。そして木部の全身全霊つめさきおもいの果てまで自分のものにしなければ、死んでも死ねない様子が見えたので、母もとうとうを折った。そして五か月の恐ろしい試練の後に、両親の立ち会わない小さな結婚の式が、秋のある午後、木部の下宿げしゅく一間ひとまで執り行なわれた。そして母に対する勝利の分捕ぶんどひんとして、木部は葉子一人のものとなった。

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倉田百三

【人生における離合について】

 わが国でも大正末期ごろにはそうした技法によって他人との接触面をカバーするような知性がはやったこともあったが、今はそうではない。愛し、誓い、捧げ、身を捨てるようなまともな態度でなければこの人生の重大面を乗り切れないからである。元来日本人は「水魚の交わり」とか「血を啜って結盟する」とか「二世かけてちぎる」とかいうような、深い全身全霊をかけての結合をせねばやまない激しいところを持っている。これが対人関係における日本的性格の一つの著しい特徴であろう。

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坂口安吾

【将棋の鬼】

 このアゲクが、大事の急所で慎重な読みを欠き、升田ついに完敗を見るに至ったが、誤算に気付いた升田の狼狽、サッと青ざめ、ソンナお手々がありましたか、軽率のソシリまぬかれず、これは詰みがありますか、ガク然として、自然にもれる呟き、こうなると、相撲と同じようにカラダで将棋をさしてるようなもの、ハッとかゞみ、又、ネジ曲げ、ネジ起し、ウヽと唸り、やられましたか、と呻き、全身全霊の大苦悶、三十一分。勝負というものは凄惨なものである。

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永井隆

【この子を残して】

 ところで私の場合であるが、なんと言っても戦争はあらゆる無理を国民一同とひとしく私にも強いた。この無理は避けられる筋のものではなかったし、国民の一人として喜んで果たさねばならぬ義務でもあった。私は、無理は百も承知の上で、全身全霊の力の限りを尽くして、その日その日の無理をとにかく片づけていった。

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原民喜

【夏の花】

 河原の方では、誰か余程元気な若者らしいものの、断末魔のうめき声がする。その声は八方に木霊こだまし、走り廻っている。「水を、水を、水を下さい、……ああ、……お母さん、……姉さん、……光ちゃん」と声は全身全霊を引裂くようにほとばしり、「ウウ、ウウ」と苦痛に追いまくられるあえぎが弱々しくそれにからんでいる。

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岸田國士

【火の扉】

 北原ミユキは耳のそばでさゝやく老夫人の言葉にうわの空で、なんべんもうなずきながら、全身全霊をうちこむとはこのことかと思われる井出夫人の感情をこめた演奏ぶりに魂を奪われていた。

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小栗虫太郎

【白蟻】

 人間心理の奇異ふしぎな機構が、ついに時江を誤殺した――その一筋の意識も、ほどなく滝人には感じられなくなってしまった。もはや何の心労もなく、望みもなくうずきもしない彼女には、額に触っている、冷たい手一つだけを覚えるのみであった。時江は十四郎そのものの正確な写像であり、滝人の全身全霊が、それにかけられていたのではなかったか。そのように、最後の幻までも奪い去られたとすれば、いつか彼女には かびが生え、樹皮で作った青臭い棺の中に入れられることもあろう。が、その墓標に印す想い出一つさえ、今では失われてしまったではないか。

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中里介山

【大菩薩峠 農奴の巻】

 何とは知らず、骨までゾッとしたものに襲われて、この少年の挙動をさまたげてはならない――という気になって、粛然として息を呑んでいると、五体投地の少年の前面に、つまり、親柱のふもとのところに、異様にかがやくものの存在を認めました。よく見ると、夜目にもしるきたけ一尺ばかりなる銀の十字の柱が、厳然と押立てられて、少年はその銀の十字の柱を対象として、全身全霊を以て礼拝している。

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片岡義男

【ラハイナまで来た理由】

 彼女の肉体はなにに反射しているのか。全身全霊をきわめて鋭敏で正確な受信機にして、必要な情報のすべてを自分の内部に集め、その蓄積を一瞬のうちに演算し、その結果のとおりに自分の体を動かす。自分の肉体に彼女はそのような反射をさせている。判断が正確ではないと、いくら体が動いても、そこにはなにものも生まれない。

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Last updated : 2022/11/23