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尸位素餐
しいそさん
作家
作品

清水紫琴

【誰が罪】

『監獄といへばあたまから、善人の行くべき処でないと思ふ人が多い。なるほどそれは国事犯者の少数と、ある一二の項目に触れて禁錮された、人々とを除いたならば、まるつきり、純潔無垢なるものの、行くべき処でないには相違ない。さらば青天白日とかいふ、監獄の外に居るものは、既往と将来とは知らず、現在では、純潔無垢なものばかりかといふに、なかなかさうはゆかぬてや。この中にはかの有名なる、判官の弄花事件もあつた、議員の収賄事件もあつた。顕れた事実は少数だが、それに類した事が、現在いくら行はれつつあるかもしれぬ。否行はれてゐるのである。先づ例を卑近な辺に採らふならば、わづかの金を振りまはして、格外の手数料、利子などを貪り、貧民の生血を吸つてゐる恠物もある。がこれらは咎め立するほどの、価値ねうちある罪人ではない。それよりも、もつと大きな罪人には、尸位素餐しいそさん、爵禄を貪つてゐる上に、役得といふ名の下に、いろいろな不埓を、働いてゐる徒輩ともがらもある。がまだその上には上がある。君国を売る奸賊、道徳を売る奸賊、宗教を売る奸賊、これらはあらゆる奸賊の中でも、最も許し難き奸賊ではないか。しかるにこれらの大奸賊といふものに、なつてくれば、なかなか公然と張つてある法網に触れて、監獄といふ、小さな箱の中へ這入るやうな、頓間とんまな事はしない。俯仰天地に恥ぢずといつたやうな顔をして、否むしろ社会の好運児、勲爵士として好遇され、畏敬され、この美なる神州の山川を汚し、この広大なる地球を狭しと、横行濶歩してゐるではないか。されば天地間、いづれに行くとしても罪人の居ない処はない。いはばこの娑婆は、未決囚をもつて充満されてゐる、一個の大いなる監獄といつてよいのである。ただその中で思慮の浅い、智恵の足りない、行為の拙なものが、人為の監獄に投ぜらるるまでなのである。しからば監獄を限りて、罪人の巣窟と思ふのは、大いなる浅見ではないか。故に予はむしろこの小さき、否愚かしき、真個憫むべき人間を捉へて、罪人といふのに忍びぬのである。』

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中里介山

【大菩薩峠 京の夢おう坂の夢の巻】

 おたがいに、そこのところを利用し合って、うまく立廻ろうというズルい了見なのだが、それは双方とも甲羅を経ているから、勝負に優り劣りはありますまい。
 そういうわけで、道庵先生は、ここはどうしても、女親方の方のらちがあくまで待つことを以て策の得たるものとする。それも、そう永い時日を要せずして埒があくに相違ないと思っているが、たとえ二日三日の間にしてからが、何か仕事をしたい、何か利用厚生の仕事にたずさわらなければ、自分の生存が徒手遊食ということになり、なおむつかしく言えば、尸位素餐しいそさんということになる。徒手遊食だの、尸位素餐だのということは本来、貴族社会のすることで、道庵の極力排斥しきたったことであるから、たとえ二日でも三日でも、その生活をやっているということは、多年の敵の軍門に降るようなものである。何か仕事をしなくちゃあならねえ、何かかせぎをして飯を食わなくっちゃあ天道様てんとうさまに申しわけがない、と言って退屈して、生活の空虚を感じているところへ、話があったのは、
「どうです、先生、旅籠生活はたごせいかつも御退屈でございましょうし、太夫元さんの方も、ここのところ、乗りかかった船で、なお二三日は引くに引けないんだそうでございますから、どうか、もうあと二三日の御辛抱が願いたいのです、何でしたら、この上の小町塚の閑静ないおりに、ついこの間まで女のお方が御逗留でいらっしゃいましたが、そのお方が大谷風呂の方におうつりになって空きましたそうで、関寺小町の跡でございまして閑静でもございますし、ながめが至極よろしうございます、それに、便もまたよろしうございまして、お酒の通いなども、ちょこちょことございます、何でしたら、あちらの方へ御転宿をなさいましたら……」

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  • それぞれの四字熟語の詳しい意味などは、辞典や専門書でお確かめください。
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Last updated : 2022/11/23