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神色自若
しんしょくじじゃく
作家
作品

河口慧海

【チベット旅行記】

そこはいわゆる死刑に処する場所でありますので、尊者は静かにお経を読まれて居った。すると死刑の執行者は「何か望みがあれば言って戴きたい。また何かあがりたい物があるならば言って戴きたい」と申し上げたところが「私は何も望むことはない。ただ経文を少し読まなくてはならぬ。経を読みおわると私が三たび指をはじくからその三たび目に私をこの川の中に投じてくれろ」と繩に掛りながら仰せられ、暫く経文を唱えて居られたが神色自若 しんしょくじじゃくとして少しも今死に臨むという状態は見えない。ごく安泰に読経どきょうせられて居ったそうです。

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泉鏡花

【式部小路】

 岡野へ寄ろうと、くらがり坂へかかった時は、別にそこで、というあつらえがあったわけではない。
 いっそ、特にあの坂で、とでもいうことなら、いかにお夏さんが神色自若としていたから、といって、こちらが呑気だからといって、墓といい、森といい、暗さといい、たといそこまでは上の空でも、坂の下り口じゃちょいとでも気がさして、 ほかの路を行きましょうぐらいはいえるだろうのに。

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北村透谷

【各人心宮内の秘宮】

 この美こそ、真こそ、以て未来の生命を形くるものなるべし。基督を奉ずるものゝさに専念祈欲すべきもの、けだしこの美、この真の境なるべし。
 倒崖のたふれかゝらんとする時、猛虎の躍りまんとする時、巨鱷きよがくの来り呑まんとする時、泰然として神色自若たるを得るは、即ちこの境にあるの人なり。生死の界を出で、悟迷の外に出でたるの 無畏懼むゐくは、即ちこの境にある人の味ひ得るところなり。

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夢野久作

【鼻の表現】

 偉い人はたった一人でいる時は、宿賃の工面は愚か車の後押あとおしも出来ません。しかるにこれにいったん有意有能な同志や乾児こぶんがくっつくと、無限不動のうちにその同志や乾児の総ての能力以上の価値を示す事が出来るのであります。又鼻は、顔面表現の舞台面に於ける千両役者とも見る事が出来るのであります。
 ……御注進御注進、一大事一大事……ナ、何事じゃ……と慌てふためく動的はした役者よりも、舞台の真中に神色自若としている千両役者の方が、はるかに深い感動を見物に与えるようなものであります。
 鼻は云わずして云う者以上に云い、泣かずして泣く者以上に泣き、笑わずして笑う者以上に笑い、怒らずして怒る者以上に怒る好個の千両役者であります。

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南方熊楠

【十二支考 馬に関する民俗と伝説】

ベレロフォンこれに騎らば鵺に勝ち得べきを知り、アテナ女神の社に眠って金のたづなを授かり、そのつげに由って飛馬の父ポセイドンにいけにえを献じ、その助力でかの馬泉水を飲みに来たところを捉え騎りて鵺をたおし、次にソリミ人次に女人国を制服したとは武功のほど羨ましい。さて帰路を要して己を殺さんとせるヨバテースの強兵を殺し尽して神色自若たるを、ヨが見てその異常の人たるを知り国の半を与え女婿とした。それからチーリンスへ還ってアンテアを欺き、飛馬に同乗するうち、突き落して海中に 溺死できしせしめたまでは結構だったが、ベレロフォン毎度の幸運におごって飛馬に乗り昇天せんとす。大神ゼウスあぶを放ちて馬をさしめ、飛馬狂うてベを振り落し自分のみ登天す。

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坂口安吾

【明治開化 安吾捕物 その一 舞踏会殺人事件】

「どこかで戦争がはじまったかエ?」
「実は昨夜八時ごろ政商加納五兵衛が仮装舞踏会の席上何者かに殺害されました。当夜の会には閣僚はじめ各国の大公使、それに対馬典六、神田正彦も出席いたしておりました」
 さすがの海舟も、神色自若たるものではあるが、口をつぐんで、ちょッと考えこんだ。天下稀代の頭脳、利剣の冴え、飛ぶ矢の早読み、顕微鏡的心眼であるが、事はまことに重大だ。

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長與善郎

【青銅の基督 ――一名南蛮鋳物師の死】

 水を打つた如き式場の中央に藁筵わらむしろを敷き、その上に低い台を置き、更にその上に、踏絵は置かれてあつた。そして其左右には与力が向ひ合ひに床几しやうぎに腰を卸し、一々の者の「踏み方」を疲れた眼できつと睨み見てゐた。二千人以上の其日の「踏み方」はをはつて、もう日暮に近かつた。
 モニカは神色自若としてその前に進み、 ひざまづき、先づその像を手にとつてぢつと打眺めた。
「あゝ貴方は、矢張り、信心を持つていらつしつたのですね。有り難う。」役人にも聞こえぬ程の低い声で彼女はかう呟いた。そして急にそれを抱きかゝへる如くひしと胸に押し当て、接吻し、又それをうや/\しく台の上に置くと手を合はせて拝んだ。勿論彼女は其場に引き立てられた。

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佐々木邦

【苦心の学友】

「エイッ」
 と一声、杉山はしょい投げをくって、がけ伝いに下の畑へ転げ落ちた。
 安斉先生は悠然ゆうぜんとして学習室へもどって、
「でましたよ」と、おっしゃった。
「ははあ」
 と照彦様は先生の顔をじっと見つめた。神色自若しんしょくじじゃくとしていた。
「虎ですよ。ハッハハハハ、がけ下へ投げましたが、あそこにはなにがあるんでしょうか? ドブーン、という音がしました」
「それは大変です」
 と照常様がけだした。照正様も後を追った。
「だれかいないか? 杉山、杉山!」
 と黒須先生も狼狽ろうばいして加勢を呼んだ。

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吉川英治

【新書太閤記 第三分冊】

「近うよれ。餅を進上いたそう」
 脇差を抜いて、信長は、その切っ先に、自分の前にあった菓子の一片をつきさした。――そして村重の方へ突き出した。
「頂戴いたします」
 村重は静かにすすんで、顔へ刀の届く処で手をつかえた。おそらくは両手を出すかとみていると、
「どうぞこれへ」
 と、大きく口を開きながら信長の顔を見た。歯までが、乱杭歯らんぐいばで、黄いろくて、汚い口であるが、その顔は神色自若しんしょくじじゃくとして、わずかの愛嬌さえたたえていた。
 餅の切れが、村重の口へはいると、信長は脇差を納めて、
「あは、は、は」
 と、高く笑った。

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Last updated : 2022/11/23