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神出鬼没
しんしゅつきぼつ
作家
作品

小川未明

【常に自然は語る】

 時に、流れて、帯のように細くなり、そして、いつしか煙のように消えて、始めの形すらあとにとゞめない。時に、重々として、厚さを加え、やがては、奇怪な山嶽のように雄偉な姿を大空にもたげて、下界を俯瞰ふかんする。しからざれば陰惨な光景を呈して灰白色となり、暗黒色となり、雷鳴を起し、電光を発し、風を呼び、雨をみなぎらせるのであるが、そのはじめに於て、千変万化の行動に関して、吾人のはかり知ることを許さないのが雲である。
 神出鬼没の雲の動作程、美と不可知の力を蔵するものは他にあるまい。しかし、たゞ、それは、自然の意志の反映なのである。即ち、自然なるが故に、自由なのである。言い換えれば自然は、自由そのものであるからだ。

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坂口安吾

【イノチガケ ――ヨワン・シローテの殉教――】

 一六二九年。日本人の伴天連が四人、故国へ潜入。トメ六左衛門は一六三三年長崎附近で行き倒れ。ミゲル益田は江戸で穴つるし。ペトロ・カッスイも同じく江戸で穴つるし。四人目のトメイ次兵衛は金鍔きんつば次兵衛(又は次太夫とも云ふ)の名によつて当時天下を聳動しょうどうさせた人物で、神出鬼没を極め、切支丹伴天連の妖術使ひと信じられて、九州諸大名の軍勢数万人を飜弄した。

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牧野信一

【変装綺譚】

追手を八方に放ちて怖るべきファウストを追跡したれど終に捕ふることを得ず。間もなく諸々の国々に、面皮脱落病なる不思議なる疫病が流行し、巷の風に骸骨の頬を曝す市民が頻々として続出するに至れり。この疫病を伝染せしむる者は、奇体なる装ひをなし町から町へ渡り歩きつつある怪し気な理髪師の仕業なり――といふことが判明したれども、理髪師の変装とその神出鬼没の出現は人力をもつては如何に為すべき術も見あたらざりき。彼は巨大なる一葉の団扇に乗りて空中を飛行し、山を越え、海を越え、更に時代を飛び越えて、永遠にこの疫病を流行させん――と豪語せり。

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三上於菟吉

【雪之丞変化】

 捕り方たちは、御用提灯ごようぢょうちんを振りかざして、獲物えものを狙う獣物けもののように、背中を丸めるようにして、押しつけて来るのだったが、さりとて急には飛び込めない。相手は何しろ、当時聞えた神出鬼没の怪賊。 迂濶うかつに近寄っては、怪我けがのあるのは当然として、かえって、またも取り逃がすことになるかも知れぬ。
「馬鹿め。何をうじうじしているんだ! 秋の夜は長えといっても怠慢なまけているうちにゃあ、直ぐ明けるぜ」

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原口統三

【二十歳のエチュード】

神様よりもよく見えたのだ。お澄まし顔の紳士たち、挨拶じょうずの奥様方、は、僕の眼の下で慌てたが、けっして逃しはしなかった。
 夜明けごとに、違った地角に姿を現わす、神出鬼没の暁の使者、季節の変わるたびごとに、新しい童話を乗せて渡ってくる異国の風、そうして粉雪の降る正月の晩、貧しい街々をめぐっては、子供たちの枕べに、やさしい初夢の唄を奏でる、僕は恵み深い訪問者、気軽な独り身の辻音楽師であった。

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林不忘

【魔像 新版大岡政談】

 こうして、黒門町があいだに立って、喧嘩渡世の茨右近方へ、食客しょっかくとしてころがり込んだ神尾喬之助であった。
 同じ家に、同じ男がふたり居るようなもので、ことに、世間せけんの眼をくらますために、神尾喬之助は、かみから服装の細部まで、右近と全く同じにつくっているのだから、二人いっしょにいるところを見られない限り、近所の人もあやしまずにいるのだ。茨右近が出て行ったかと思うと、その茨右近が家の中にいる。おや、何時の間に帰ったのだろう――と思うくらいのところで、根が変り者の変った世帯だから、誰も気にとめない。みな、茨右近の神出鬼没 しんしゅつきぼつぶりに感心するだけで、喬之助という影武者かげむしゃのいることには気が付かずに過ぎたのだった。

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野村胡堂

【古城の真昼】

 怪盗判官三郎が、この事件の真っ只中へ飛こんで来たと聞いて、一座の緊張は又加わりました。何となく物々しくなる空気を払い除けるように、玉置子爵は手を振り乍ら、
「イヤ、諸君まで驚いてはいけません。世間はどうも判官三郎を買いかぶって神出鬼没の怪盗で人間以上の事を仕遂げるように信じて居るのは、甚だ しからん事です……そこで私は、明日の夏至に備えるために、県警察部に依頼して、約百五十名程の警官を出し、玉置の城趾を完全に警備して貰う筈です。そんな中に諸君が行かれたところで、決して面白い筈はありません、まあ止された方がいいでしょう」

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吉川英治

【日本名婦伝 静御前】

 彼は奈良ならひそんでいる――といううわさがあるかと思うと、
(いや、多武とうみねで、それらしい落人おちゅうどを見た)
 とも聞え、
(十津川の筋へ逃げた)
 とか、その他、紀州だ、いや、京都の中に潜伏しているのと、彼の足跡をめぐって、神出鬼没なうわさばかり乱れ飛んだ。
 鎌倉勢は、その詮議せんぎに、手をやいた。翻弄ほんろうされているようだった。躍起やっきになって、探しぬいたが、手懸てがかりもない。

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Last updated : 2022/11/23