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進退両難
しんたいりょうなん
作家
作品

幸徳秋水

【翻訳の苦心】

 適当な訳語が出来る、其を忠実に原文の字句を遂ひ一節、一段の順序に随い器械的に並べて、翻訳は出来るのであるかといへば、是れでは文字を並べたのみで決して文章を為すことは出来ぬ、完全な翻訳は其意義を明かにするのみでなく、其文勢、筆致をも写さねばならぬ、其原文の軽妙なるは軽妙に、流麗なるは流麗に、雅健なるは雅健に、滑稽なるは滑稽に伝へねばならぬ、然るに余りに忠実に原文の字句を遂はんとすれば、筆端窘束して訳文は丸で其生命を失つて了ふ、訳文をして原文の如き文勢筆致を保たんとせば、原文の字句を勝手に増損し、前後を倒置するなどの必要を生ずる、是れ実に責任ある翻訳家の進退両難とする所である、昔し三蔵法師も、経文の翻訳には余程テコズつたと見えて、翻訳は猶ほ食物を噛砕いて其子に食せるやうなもので、美味は母親の舌に残つて、子は糟粕ばかり食ふことになると嘆じたことがある。

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幸田露伴

【運命】

 待設まちもうけたる斉泰は、たゞちに符を発し使を遣わし、いて燕府の官属を逮捕せしめ、ひそか謝貴しゃき張昞ちょうへいをして、燕府に在りて内応を約せる長史ちょうし葛誠かつせい指揮しき盧振ろしんと気脈を通ぜしめ、北平都指揮としき張信ちょうしんというものゝ、燕王の信任するところとなるを利し、密勅を下して、急に燕王をとらえしむ。しんは命を受けて憂懼ゆうくすところを知らず、情誼じょうぎを思えば燕王にそむくに忍びず、勅命を重んずれば私恩を論ずるあたわず、進退両難にして、 行止こうしともにかたく、左思右慮さしゆうりょ、心ついに決する能わねば、苦悶くもんの色は面にもあらわれたり。信が母疑いて、何事のあればにや、なんじの深憂太息することよ、となじり問う。

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岸田國士

【荒天吉日】

 彼は、そこで、あまり愚痴つぽくならぬ程度に、男親の惨澹たる苦労を、笑ひを含みながら語つた。
 それから、後添ひをといふ二三の勧めにも拘はらず、娘たちの母親といふ資格を考へると、どうしても、彼女たちの年相応の気持を第一に汲んでやらなければならないので、容易にさういふ条件に適つた候補者を求めることができなかつた事情を述べ、殊に、かういふ時世に、男が家庭に心を奪はれて仕事の方に少しでも身がはいらぬやうなことがあつてはならぬと思ひ、さうかと云つて、安易に事を運ぶ危険は、なほさら目に見えてゐるといふわけで、まつたく進退両難に陥つてゐたところへ、娘たちから或る日、矢代の小母さんに是非自分たちのお母さんになつていただきたいといふ誠に突飛とも思はれる申出があつたことに言ひ及んだ。

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吉川英治

【三国志 図南の巻】

「――天恵です、それに一案があるのです。かならず馬超はお味方へ招いてみせます。私がにわかにこれへ来たのもそのためにほかならないのです」
 孔明はいう。そして、疑う玄徳にむかい、その理由ある所以ゆえんを次のように説明した。
「このところ、馬超が、つねにも増して、強いわけは、今や彼の立場は、進んでも敵、退いても敵、進退両難に陥っているためで、いわゆる 捨身すてみ奮迅ふんじんだからです」

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Last updated : 2022/11/23