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『 別世界巻べっせかいかん 』
耳鳥斎にちょうさい

  • 江戸中期の大坂の浮世絵師、戯画作者、 耳鳥斎にちょうさい の画による『  別世界巻べっせかいかん  』
  • 耳鳥斎にちょうさい: 宝暦元年〈1751年〉以前 - 享和2 - 3年〈1802 - 03年〉頃。じちょうさい。
  • 刊行年:江戸中期、寛政5年〈1793年〉頃。
  • 長さ 12m 近い肉筆巻物。21の職業・嗜好などの、「地獄」とされる死後の世界を予告するかのようなが場面が描かれる。
  • 本紙サイズ:24.5cm×1151.9cm
  • 関西大学図書館蔵(関西大学デジタルアーカイブ)。
  • 巻頭の題辞(最初の2画像)以外の図は、当サイト独自の色調補正を行っており、原図とは色合いが若干違います。原図は「関西大学デジタルアーカイブ  」でご覧ください。
  • 標題の「◯◯の地獄」の表記は、原図では「ちこく」「地こく」とするものも見られますが、ここでは「地獄」としました。また、旧字体、歴史的仮名遣いについては括弧書きで補足をしました。
  • 各図の説明は、主に、中谷伸生著『耳鳥齋「別世界巻」』(関西大学東西学術研究所紀要)  を参考にさせていただきました。
  • 下の画像をクリックすると、画面サイズに合わせて拡大して見ることができます。
姻草好の地獄
地獄に落ちた煙草好きは煙管(きせる)にされてしまった。雁首にされた大きく開けられた口は赤く燃え、煙が出ている。煙草入れにされてしまった者も。
ところてんやの地獄
地獄に落ちたところてん屋は、心太突きに頭から押し込まれ押し出される。桶の中からは次に突き出されるところてん屋が様子をうかがっている……
藝(芸)子法師の地獄
着物姿の年増の鬼が三味線の稽古を付ける。三味線にされ、逆さになった人物が目尻を下げ何故か微笑んでいる。心地よい曲なのか……
たいこもちの地獄
三人の太鼓持が裸にされ紐で繋がれている。脱がされた着物類と一緒にある黄色い物は、酒席で客の機嫌を取って稼いだあぶく銭か……
置屋の地獄
店の帳面を見ながら煙草を吸う置屋の女主人の横には、地獄に落ちて蝋燭にされた三人に火が灯される。二人は頭から煙を出して口を開け、一人は燃え尽きる寸前で両足だけが残る。正座をし、着物の袂で顔を覆っているのは若い芸者の鬼か。
人形遣ひ(い)の地獄
二匹の若い人形遣いの赤鬼が人形の修理をしている。右手には二人が台にぶら下げられ、左手には三人がまるで首吊りのように縄で首をくくられぶら下げられている。
明神講中の地獄
真っ赤な明神の鳥居の前で、青鬼は捕まえた男を放り投げようとしている。鳥居の周りには放り投げられた三人が宙を舞い、鋭い爪を立てた赤鬼は三人に迫ろうとしている。
金持頭の地獄
頭に角のような物を生やした男が赤鬼に追われている。男の頭の突起物は「金(かね)」ということか。前方の山肌には、すでに埋められた人物の残骸と思われる五本が埋まっている。「金持」とは、近世初期以来、にわか成金の名称とされた言葉で、これはさながら「成金地獄」。
かふき(かぶき)役者の地獄
歌舞伎役者たちが、大きな釜の中に放り込まれ大根と一緒に釜茄でにされている。一匹の赤鬼が箸で役者の一人を摘み、背後では続いて放り込まれる男女の役者が泣いている。大根役者の末路か……
こんひら(こんぴら)信心の地獄
二本の縄で縛られ、手足を縮めて、酒樽の姿勢をとる二人の人物が波間を漂う。ニ十一の場面中、この場面のみ鬼の姿がない。この図のモチーフは、いわゆる〈流し樽〉で、流し樽は、酒樽を川に流して放浪させ、それを拾った船に届けさせるという一風変わった風習。
あめやの地獄
二匹の鬼が、「やめてくれ」と叫ぶ一人の男の体を捩じって飴菓子を作ろうとしている。その下には、すでに丸く捩じられて出来上がった飴の男が。
立花師の地獄
縞の袴を着けた立花師の赤鬼が、男の腕を鋏で切り落して形を整えようとしている。手前の盆には次の犠牲者二人横たわる。花瓶には四人が草花の姿で差し込まれ、その中の赤と黄の頭部は鮮やかな花の部分か。
鉦講中の地獄
一匹の赤鬼が槌で鉦を打つ。鉦の平円盤の代わりに吊るされているのは縄で縛られた一人の男。打たれる鉦は、いわゆる念仏講で念仏鉦と呼ばれたもの。
錯道具やの地獄
一匹の青鬼が三人の人物の頭部に大きな花瓶を被せている。左手には、花生や茶碗、掛軸の箱と思われる骨董商の商売道具が並べられる。
おやまかいの地獄
赤鬼の老婆に帯で掃かれ、飛ばされている二人の人物。「おやま」は、人形浄瑠璃での女役の人形や、歌舞伎での女方を指す。また、遊女の別称でもあり、これは遊女にうつつを抜かす者たちの地獄ということか。
仲居の地獄
仲居が日常、料理などに使う土瓶、鉄瓶などの薬缶が彼女たちに逆襲する。薬缶から熱い蒸気を吹き付けられ、二人の仲居が逃げ惑う。
衆道好の地獄
四つんばいにさせられた一人の男が、先の尖った楔状の盤を尻に打ち込まれている。衆道は広義には男色を指し、ここでは男色好きの男を責める地獄となっている。
和尚の地獄
大きな蛸に捕まえられ、首と足を掴まれた和尚は手を合わすも絶体絶命。下半身を衣服で覆うつるつる頭の大蛸が、同じく毛髪の無い坊主頭の和尚を責める共食いのような場面。
そは切(そば切り)好の地獄
地獄に落ちた蕎麦好きは、蕎麦の材料にされ、おろし金ですりおろされ、包丁で切り刻まれ、麺棒で平たく延ばされる。
顔見世手打の地獄
三匹の赤鬼が、それぞれ頭に被り物をして拍子木を打つ。被り物と一匹の鬼が持つ扇には、卍の印と草花紋のような模様が描かれる。歌舞伎の顔見世では、贔贋連が土間に立って賛辞の声を上げ、拍手の嵐となるのが決まりで、鬼たちが手に持つ拍子木は、地獄に落ちた者たちが長方形の拍子木にされて叩かれるという光景。刀を持つ青鬼に脅され泣き出す二人も。
馬士の地獄
馬と人間が役割を代えた逆さまの世界。手綱と鞭を手にした一匹の馬には二本の角が生え、指先にも鋭い爪が。馬になった鬼は、馬の格好にされた人間の背に米俵を載せて運ばせている。
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Last updated : 2024/06/30