『注文の多い料理店』序
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『注文の多い料理店』序
宮沢賢治
わたしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、きれいにすきとおった風をたべ、
またわたくしは、はたけや森の中で、ひどいぼろぼろのきものが、いちばんすばらしいびろうどや
わたくしは、そういうきれいなたべものやきものをすきです。
これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、
ほんとうに、かしわばやしの青い夕方を、ひとりで通りかかったり、十一月の山の風のなかに、ふるえながら立ったりしますと、もうどうしてもこんな気がしてしかたないのです。ほんとうにもう、どうしてもこんなことがあるようでしかたないということを、わたくしはそのとおり書いたまでです。
ですから、これらのなかには、あなたのためになるところもあるでしょうし、ただそれっきりのところもあるでしょうが、わたくしには、そのみわけがよくつきません。なんのことだか、わけのわからないところもあるでしょうが、そんなところは、わたくしにもまた、わけがわからないのです。
けれども、わたくしは、これらのちいさなものがたりの
大正十二年十二月二十日
宮沢賢治
底本:「注文の多い料理店」新潮文庫、新潮社
1990(平成2)年5月25日発行
1997(平成9)年5月10日17刷
初出:「イーハトヴ童話 注文の多い料理店」盛岡市杜陵出版部・東京光原社
1924(大正13)年12月1日
入力:土屋隆
校正:noriko saito
2005年1月26日作成
青空文庫作成ファイル:
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●表記について
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「『注文の多い料理店』序」は、宮沢賢治の短編童話集『注文の多い料理店』に添えられたものです。
「注文の多い料理店」は、詩集「春と修羅」に続いて出版された宮沢賢治の初めての童話集です。(盛岡市杜陵出版部、東京光原社、1924(大正13)年12月1日)
「注文の多い料理店」には、この「序」を含めて次の10作品が収録されています。
「『注文の多い料理店』序」
「どんぐりと山猫」
「狼森と笊森、盗森」
「注文の多い料理店」
「烏の北斗七星」
「水仙月の四日」
「山男の四月」
「かしわばやしの夜」
「月夜のでんしんばしら
「鹿踊りのはじまり」