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勤倹尚武
きんけんしょうぶ
作家
作品

芥川龍之介

【大導寺信輔の半生 ――或精神的風景画――】

 けれどもこう言う見すぼらしさよりも更に彼の憎んだのは貧困に発した偽りだった。母は「風月」の菓子折につめたカステラを親戚しんせきに進物にした。が、その中味は「風月」所か、近所の菓子屋のカステラだった。父も、――如何に父は真事まことしやかに「勤倹尚武」を教えたであろう。父の教えた所によれば、古い一冊の玉篇の外に漢和辞典を買うことさえ、やはり「 奢侈文弱しゃしぶんじゃく」だった! のみならず信輔自身も亦うそに嘘を重ねることは必しも父母に劣らなかった。

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夢野久作

【東京人の堕落時代】

 大正十二年の夏まで、日本を背負って立つ意気を示しているかのように見えた江戸ッ子の、現在の屁古垂へこたれ加減を見よ。
 そうして、これに取って代った新東京人の風俗のだらしなさ加減を見よ。
 その武威に、その文化に、東洋の新興民族として、全世界の眼をみはらした日本人の化の皮は、その首都の名に於て、美事に引っ剥がされてしまったのであった。
 彼等東京人の云う忠君愛国、勤倹尚武、仁義道徳は皆虚偽であった。
 彼等東京人の持つ外国文化の驚くべき吸収力、その不可思議な消化力、並びにその文化方面の宣伝力……それ等は只一時の上辷りのカブレに過ぎなかった。

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斎藤茂吉

【蚤】

 中学校を卒えて高等学校に入った。そこの寄宿寮に二年いたが、寝室に蚤が沢山いて安眠がどうしても出来ない。それにストームなどという習慣があり、学生が酒に酔って来て、折角寝入ったものを起してあるくので、益々眠れなくなる。僕は致方がないから、病人用ベッドのカバアを改良して袋にした。そうして全身裸でその中にもぐり、くびの処を巾著のように締めるように工夫して、毎夜辛うじて明かすことが出来た。それでも翌朝袋の中を見ると、蚤が五六ぴきから十ぴき位這入って居り居りしたものである。それほど寄宿寮には蚤が多かった。
 学生らは、いわゆる勤倹尚武だから、蚤なんかにまいってしまうような学生は学生でないような顔付をしたが、僕はなかなかそういう具合には行かなかった。
 それから数十年が経過した。追々国民の衛生思想が発達し、春秋の大掃除も励行せられ、或る家では、畳の下に新聞紙を敷き、その上にナフタリンを撒いて、蚤を幼虫のうちに退治することが出来るので、一般に蚤の発生が尠くなって行った。地方の旅館などでも、蚤の居る旅館の方が却って少いというほどまでになった。

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木下杢太郎

【市街を散歩する人の心持】

 暗く、陰鬱に、しかも懐しく悲しい水の曲節は、たとへば、西洋楽を聴くに熟せざる吾等若き東洋人がチヤイコウスキイの夜の曲のロマンチツクな仏蘭西的魯西亞的旋律をきく時に、どこかの国が、はたその国、その国民の烈しき情緒生活が音楽の後ろにかくれて居るとは感じながら、遂に其本体を摸索する事の出来ないやうな覚束ない心持を、池を囲む人に、女に、また青きポプラスの並木に、柔らかき夜の空気に起させて居るのであつた。
 調和を失せる痛ましい日本が、一方に勤倹尚武を鼓吹しながら、同時また恁んな近代的情調を日比谷公園裏に蔵して居るといふ矛盾を笑はずには居られなかつた。
 共同ベンチに腰を掛けた一群の人はどういふ感じを持つてゐるか、自分は切に知りたかつた。ここは義太夫のさはりに、新内に、宇治は茶に習ひ得た美的需要を満すに適する所ではなかつた。

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Last updated : 2022/11/23