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強迫観念
きょうはくかんねん
作家
作品

萩原朔太郎

【僕の孤独癖について】

 しかし僕の孤独癖は、最近になってよほど明るく変化して来た。第一に身体が昔より丈夫になり、神経が少し図太く鈍って来た。青年時代に、僕をひどく苦しめた病的感覚や強迫観念が、年と共に次第に程度を弱めて来た。今では多人数の会へ出ても、不意に人の頭をなぐったり、毒づいたりしようとするところの、衝動的な強迫観念に悩まされることが稀れになった。したがって人との応接が楽になり、朗らかな気持で談笑することが出来てきた。そして一般に、生活の気持がゆったりと楽になって来た。だがその代りに、詩は年齢と共に拙くなって来た。つまり僕は、次第に世俗の平凡人に変化しつつあるのである。これは僕にとって、嘆くべきことか祝福すべきことか解らない。

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岡本かの子

【病房にたわむ花】

桜よ、咲け咲け、うるさいまでに咲きてよ。咲き枝垂しだれよかし。
 だが、まだ私は、桜花にいての憂鬱感や強迫観念を語りやめようとするのではありません。

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小酒井不木

【恋愛曲線】

 さて、失恋曲線を作った僕は、失恋の反対の情緒たる恋愛曲線を得たいものだと思うに至った。けだし、くことを知らぬ科学者の欲望である。然し、かつては恋愛を感じても、今は失恋をしか感じない僕が、どうして恋愛曲線を作ることが出来よう。これは及びもつかぬことである。こう考えて諦めようとすればする程、いよいよ作って見たくて仕様がなくなった。そうして、後にはこれが一種の強迫観念になってしまった。といって、君に対して はなはだ失礼な言葉ではあるが、君とはちがって雪江さん以外に、何人にも恋を感じなかった僕が、今更いまさら、誰に真実の恋を感ずることが出来よう。実際、僕は、真実の恋を雪江さん以外の人には感じ得ないのだ。して見れば、到底恋愛曲線は得られない訳だ。と思っても、やはり一旦強迫観念となったものは容易に去らない。で、致し方がないから、失恋を転じて恋愛となすべき方法はないものかと、僕は しきりにかんがえをめぐらしたよ。そうして、考えて、考えて、僕は一時発狂するかと思うほど考えたのである。

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武田麟太郎

【現代詩】

 自分は思はず皮肉を云つたが、彼には通じなかつたらしい。時代と云ふものは誰が作るのかと、自分はいぶかしくなつた。彼が消極的な言葉を吐くと、その反対に自分は何か勇しいことが云ひたくてならなかつた。しかし、自分も本当は彼同様なのにちがひないのだ。強迫観念が身近く迫つてゐないだけの相違だらう。在学中から運動に飛こんで、乏しい自分なぞまでシンパにして大に勇猛果敢に活動した闘士がこの栗原とはどうしても思へなかつた。

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三好十郎

【胎内】

戦争か? そうだよ、戦争は、ロクなことあない。イヤだった。ふるふる、イヤだった。……それを、世間で、侵略戦争だの、ドロボウ戦争だ、戦争犯罪だ……サンザンいわれて……いや、そりゃいいさ、実際そうだったんだから。そりゃ、それでいい。ただ、それを聞いていて、俺あ骨抜きになった。腐っちゃった。……てめえが、あんだけイヤがっていた戦争を――しかも、ただ引っぱり出されただけの戦争を、まるで俺が自分でおっぱじめたような気になった。責任は全部自分にあるような気になった。そいで、チャンとして生きて行く資格は自分にゃないように思った。……妄想もうそうだ。強迫観念だ。クソインテリの観念過剰だ。まったく、なってねえ! なんてえこった! ハハ、ハハハ!……そうなんだ。戦争を否定するために、てめえのイノチまで否定していたんだ俺あ。……俺があん時、ここでしたなあ、ありゃ戦争じゃない。俺あ、ただ、無我夢中で穴あ掘っただけだ。

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牧野信一

【裸虫抄】

 彼の妻は、昔の外国行のトランクなどを持ち出して、不必要なものまで詰め込んだ。母親は、相変らず不在だつた。彼は、決して自分の気ままや、見たくないものを見るのを厭うて出てゆくのではない――といふ意味のことを、最も穏かな言葉で書きのこして行かうとしてゐたが、ペン先が震へて文字が記せなかつた。――何も彼も思ひきり好く片づけてしまふのは、自分たちだけでは望ましいに違ひなかつたが、これきりもう帰つて来ないといふ風な、そして如何にもあきらめ強く憤然として飛びたつて行つたといふやうな有様を、あまりに歴然とのこしてゆくのは、そこに戻つて来た折の母親の何んな表情を想像して見ても、しんしんと胸が痛み、刺されるやうな強迫観念におびやかされるばかりだつた。

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坂口安吾

【三十歳】

 私はこの本のたった一ヶ所にアンダーラインをひいていた。それはメルトイユ夫人がヴァルモンに当てた手紙の部分で「女は愛する男には暴行されたようにして身をまかせることを欲するものだ」という意味のくだりであった。
 私はそのくだりを思いだしていた。そして、そこに限ってアンダーラインをひいていたことを、その道々苦笑したが、後日になっては、見るに堪えない自責に襲われ、殆ど、強迫観念に苦しむようになったのである。

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西尾正

【放浪作家の冒険】

ところが自分がよわみをもっているだけ、どうもあとの場合のほうが可能性がありそうに思われ、いまごろはあそびにんや田舎もんに変装した何十人という刑事が、四ほう八ぽうに暗躍しているのではないかと思うと、じつにむじゅんしたはなしだが、自分が真犯人のような錯覚をおこして、きょうはのがれたがあしたは捕まるといったふうに、一種の強迫観念にせめられるじゃないか。この気持はおれとおなじい状態におかれたものでないとわからぬかもしれぬ。

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正岡容

【わが寄席青春録】

今日だから何もかもぶちまけてしまうが、あの頃私はなけなしのお金でお酒を飲み続け、大酔して夜、寝る時が一番辛かった。なぜならまた明日も現金払いで医者へ注射を打ちに行くがごとく、起きる早々みすみすお金をつかって一杯飲みに行かなければならなかったからである。とにかくいくらどんなに酔っていても、あくる朝になるとことごとく酒気はなくなっており、再び舌がもつれ、あらぬ強迫観念が起こりだす。つまりアルコール中毒者の場合は、 宿酔ふつかよいの現象がいっさいなくなるらしい。さあそうなると舌のもつれを一時的に癒すため、すぐさま一杯引っ掛けなければならない。

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宮本百合子

【子供・子供・子供のモスクワ】

 並木通新聞ブリヴァールナヤ・ガゼータという言葉がある。
 先年、モスクワ駐在の不幸な一日本海軍武官が神経の故障から何か個人的問題を起した。モスクワの或る新聞が社会面にそれを書いた。海軍武官はやがて日本の新聞もそれにならうであろうこと、それによって失われるであろう自分の名誉という強迫観念によって、古典的なサムライの手法をもって生命を絶った。当局者の一人がその時、事件に対するヨーロッパ人らしい意外の感じを外交的表現によって云った。

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Last updated : 2022/11/23