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万代不易
ばんだいふえき |
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作家
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作品
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太宰治 |
【右大臣実朝】
むかし、厩戸の皇子さまも、御二十一歳の折、大臣馬子の無道をお見事に御予言あそばしたとか、天壌と共に窮りの無き、伊勢大廟の尊き御嫡流の御方の御事は纔かに偲び奉るさへ、おそれおほい極みでございますが、将軍家に於いては、早くより厩戸の皇子さまに御心酔と申し上げてよろしいほどに強く傾倒なされ、私どもには、まるで何もわかりませぬけれど、かの、和を以て貴しと為すとかいふお言葉にはじまる十七箇条の御憲法など、まことに万代不易の赫奕たるおさとしで、海のかなたの国々の者たちにも知らせてやりたい、とおつしやつて居られた事もございまして、せめてその御錦袖の端にでも、おあやかり申したいと日頃、念じて居られた御様子で、そのせゐか、まあこれは愚かな私どもの推参な気の迷ひに違ひないのでございませうけれども、ほんの少し、相通ふやうな影が、感ぜられてなりませぬ。
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折口信夫 |
【神道に現れた民族論理】
さすがに鈴木重胤翁は、早くから幾分此点に注意を払つてゐる。私が、神道学者の意義に於ける国学者の第一位に置きたいのは、此為である。大和といふ国名が、日本全体を意味する所まで、拡がつた事なども、此意味から、解釈がつきはすまいか。「大倭根子天皇」といふのは、万代不易の御名で、元朝の勅にも、即位式の詔にも、皆此言葉が使はれてゐたが、此は云ふ迄もなく、やまとの国の、最高の神人の意味である。
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国枝史郎 |
【鵞湖仙人】
「ははあ、八九の間取りだな。……財集まり福来たり、一族和合延命という図だ。……ええと此方が八一の間取り。……土金相兼という吉相だ。……さて此方は一七の間取り。僧道ならば僧正まで進む。……それから此方が八九の間取り。……仁義を弁え忠孝を竭(つく)す。子孫永久繁昌と来たな。……それから此方は七九の間取り。……うん、そうか、あの下に、金銀が蓄えてあると見える。金気が欝々と立っている。……さて、あいつが九六の間取りで庭に明水の井戸がある。薬を製する霊水でもあろう。六四の間取りがあそこにある。……公事訴訟の憂いが無い。……戌亥に二棟の土蔵がある。……即ち万代不易の相だ。……戌にもう一つの井戸がある。……一家無病息災と来たな。……グルリと土塀で囲まれている。……厩(うまや)が二棟立っている。……母屋の庭は薬草園だ。……」由井正雪は感心した。 |
佐々木味津三 |
【旗本退屈男 第九話 江戸に帰った退屈男】
この御代泰平に軍用金を貯蔵することからしてが、死金(しにがね)を護るも同然の愚かな業(わざ)じゃ。活かすべき時にこれを生かして費うと、後生大事に死金を護ると、いずれが正しき御政道か、それしきのけじめつかいで何とするか。徳川の御代はすでに万代不易(まんだいふえき)の礎(いしずえ)も定まり、この先望むところは只御仁政一つあるのみじゃ。ましてや天台の教えは仏法八宗第一の尊い御教(みおしえ)じゃ。
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