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盤根錯節
ばんこんさくせつ |
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作家
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作品
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尾崎紅葉 |
【金色夜叉】
我は常に宮が情(なさけ)の濃(こまやか)ならざるを疑へり。あだかも好しこの理不尽ぞ彼が愛の力を試むるに足るなる。善し善し、盤根錯節(ばんこんさくせつ)に遇(あ)はずんば。「嫁に遣ると有仰(おつしや)るのは、何方(どちら)へ御遣(おつかは)しになるのですか」 |
島崎藤村 |
【夜明け前 第二部下】
こういう時に馬籠隣家の伊之助でもそばにいたら、とそう半蔵は思わないではなかった。いかんせん、親しくあの隣人の意見をたたいて見ることもかなわない。この飛騨行きについては、多吉夫婦も実際どう思っていてくれるかと彼は考えた。男まさりな宿のかみさんは婦人としての教養もろくろく受ける機会のなかったような名もない町人の妻ではあるが、だんだん彼も付き合って見て、盤根錯節(ばんこんさくせつ)を物ともしないそのまれな気質を彼も知っていた。人は物を見定めることが大切で、捨つべきことは思い切りよく捨てねばならない、それのできないようなものは一生ウダツが揚がらないと、日ごろ口癖のように言っているのもお隅(すみ)だ。遠い親類より近い他人の言うこともよく聞いて見ようとして、やがて彼は町から引き返した。
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大槻文彦 |
【ことばのうみのおくがき】
古語古事物の意の解きがたきもの、説のまち/\なるもの、八品詞の標別の下しがたきもの、語原の知られぬもの、動詞の語尾の變化の定めかぬるもの、假名遣の據るところなくして順序を立てがたきもの、動植物の英辭書の注解に據りたりしものゝ、仔細に考へわくれば、物は同じけれども、形状色澤の、東西の風土によりて異なるもの、其他、雜草、雜魚、小禽、魚介、さては、俗間通用の病名などにいたりては、支那にもなく、西洋にもなく、邦書にも徴すべきなきが多し。かく、一葉毎に、五七語づゝ、注の空白となれるもの、これぞ此編輯業の盤根錯節とはなりぬる。
旁、又、別に一業を興して、數十部の語學書をあつめ、和洋を參照折中して、新にみづから文典を編み成して、終にその規定によりて語法を定めぬ。この間に年月を徒費せしこと、實に豫想の外にて、およそ本書編成の年月は、この盤根錯節のためにつひやせること過半なりき。 さて、その頃、おのれは本郷に住めり、父を養はむために營みつる屋敷なりけり、かゝる事の用にとならば、なき靈もいなみ給はじ、など思ひさだめて、やがて、そを賣りて、二千餘金を得、これに蓄餘を加へなどして、腰纒をとゝのへて、さて、ひたふるに辭書の成業をいそぎぬ。されども、例の盤根錯節は、たはやすく解けやらず、今はこうじにこうじて、推辭せむか、躱避せむか、棄てむ、棄てじ、の妄念、幾たびか胸中にたゝかひぬ、されど、かゝるをりには、例の遺誡を思ひ出でゝしば/\思ひしづめぬ。 |
狩野亨吉 |
【安藤昌益】
即ち彼は自然を處理する骨を悟つたのである。其骨は主觀的とはいへ全く根本的の原則であつたがため、直にそれを自然の癖ととつた、即ち自然の作用であり性質であると思うたのである。此見方を會得すると同時に、今まで彼を惱ましつつあつた思想の盤根錯節は直に消滅してしまつたのであるから、彼は確に自然の妙用を知つたと思うたのである。然らばそは何ものである。曰く互性活眞。
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黒岩涙香 |
【無惨】
君は是が初めての事件だから充分働いて見る可しだ、斯う云う六(むず)ヶしい事件を引受けねば昇等(しょうとう)は出来ないぜ(大鞆)夫(そ)りゃ分(わか)ッて居る盤根錯節(ばんこんさくせつ)を切(きら)んければ以て利器を知る無しだから六(むず)かしいは些(ちっ)とも厭(いと)ヤせんサ、けどが何か手掛りが無い事にや―先(ま)ア君の見た所で何(ど)の様な事を手掛と仕給うか(谷)何(ど)の様な事と、
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