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万夫不当
ばんぷふとう
作家
作品

芥川龍之介

【きりしとほろ上人伝】

元来この隣国の大将は、獅子王をも手打ちにすると聞えた、万夫不当ばんぷふたうの剛の者でおぢやれば、「あんちおきや」の帝とても、なほざりの合戦はなるまじい。

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中里介山

【大菩薩峠 無明の巻】

「それから、わたしと組ちゃんとは、質屋と古手屋のおちゃっぴいになって、表口から乗込むことにしましょう」
「嬉しいわ、そうして、おちゃっぴいが揃って、万夫不当の朝比奈をぎゅうぎゅう言わせてやれば、ほんとにもうかるわねえ」

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国枝史郎

【神州纐纈城】

昔は由縁ゆかりある武士であった。が、ある不可解の動機のために俄然性質が一変し、賊になったのだということや、土子土呂之介つちことろのすけに剣を学び、天真正伝神道流では万夫不当ばんぷふとうだということや、利休好みの茶の十徳じっとくに同じ色の宗匠頭巾、白の革足袋に福草履、こういうおとなしい風采みなりをして、富士の裾野の三合目辺で陶器を焼きながら稼ぎをする……などということも聞いていた。

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魯迅 井上紅梅訳

【風波】

「棒を恨んで人を打つ。それがなんだ。大兵が今にもここへ到著するのをお前達は知らないのか。今度おいでになるのは張大帥ちょうたいすいだ。張大帥はすなわち燕人えんじん張翼徳ちょうよくとくの後裔で、彼が一度丈八の蛇矛じゃぼこを支えて立つと、万夫不当ばんぷふとうの勇がある。誰だって彼に抵抗することは出来ない」

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吉川英治

【三国志 群星の巻】

 呂布の勇猛は、相変らずすこしも老いていない。むしろ年と共にその騎乗奮戦の技はしんに入って、文字どおり万夫不当ばんぷふとうだ。まったく戦争するために、神が造った不死身の人間のようであった。
 この要害に、董卓自ら守りに当って、十二万の兵を鎮し、さらに三万の精兵を前衛に立てて、万夫不当ばんぷふとうといわれる呂布をその先手に置いたのであるから、まさに金城鉄壁の文字どおりな偉観であった。

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吉川英治

【三国志 臣道の巻】

李典りてん楽進がくしんともがらは勇においてすぐれ、その勇や万夫不当ばんぷふとう、みな千軍万馬往来の士である。なお見よ。左列の 于禁うきん徐晃じょこうのふたりは、いにしえ岑彰しんほう馬武ばぶにも勝る器量をそなえ、夏侯惇かこうじゅんは、軍中の第一奇才たり。

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Last updated : 2024/06/28