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杯盤狼藉/盃盤狼藉
はいばんろうぜき
作家
作品

芥川龍之介

【久米正雄 ――傚久米正雄文体――】

 この久米はもう弱気ではない。そしてその輝かしい微苦笑には、本来の素質に鍛錬を加えた、大いなる才人の強気しか見えない。更に又杯盤狼藉の間に、従容迫らない態度などは何とはなしに心憎いものがある。いつも人生を薔薇色の光りに仄めかそうとする浪曼主義ロマンチシズム

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芥川龍之介

【上海游記】

 ジョオンズ君は悠々と、南京米のカリイを平げながら、いろいろ別後の話をした。その中の一つにこんな話がある。何でも或晩ジョオンズ君が、――やっぱり君附けにしていたのじゃ、何だか友だちらしい心もちがしない。彼は前後五年間、日本に住んでいた英吉利人である。私はその五年間、(一度喧嘩をした事はあるが)始終彼と親しくしていた。一しょに歌舞伎座の立ち見をした事もある。鎌倉の海を泳いだ事もある。殆夜中上野の茶屋に、 盃盤狼藉はいばんろうぜきとしていた事もある。その時彼は久米正雄の一張羅いっちょうらの袴をはいた儘、いきなり其処の池へ飛込んだりした。その彼を君などと奉っていちゃ、誰よりも彼にすまないかも知れない。次手ついでにもう一つ断って置くが、私が彼と親しいのは、彼の日本語が達者だからである。私の英語がうまいからじゃない。

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太宰治

【花火】

「ええ。」声を出して泣きたくなった。
「仕様がねえ。」太い溜息をついて、「ま、なんとかしよう。節子、きょうはゆっくりして行けよ。泊って行ってもいいぜ。淋しいんだ。」
  勝治の部屋は、それこそ杯盤狼藉はいばんろうぜきだった。隅に男がひとりいた。節子は立ちすくんだ。
「メッチェンの来訪です。わが愛人。」と勝治はその男に言った。

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泉鏡花

【縁結び】

「宿へおいでは構わんが、こんな処で話してはちと真面目になるから、事が面倒になりはしないかと思うんだが。
  そうかと云って昨夜ゆうべのような、杯盤狼藉はいばんろうぜきという場所も困るんだよ。
  実は墓参詣はかまいりの事だから、」
  と云いかけて、だんだん火鉢を手許てもとへ引いたのに心着いて、一膝下って向うへして、
「お前さん、たばこよじは?」
  だまって莞爾にっこりする。

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林不忘

【丹下左膳 乾雲坤竜の巻】

 杯盤狼藉はいばんろうぜき酒池肉林しゅちにくりん――というほどの馳走でもないが、沢庵たくあんの輪切りにくさやをさかなに、時ならぬ夜ざかもりがはずんで、ここ離庵の左膳の居間には、左膳、源十郎、仙之助に与吉。
  赤鬼青鬼地獄酒宴じごくしゅえんの図。

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  • このサイトの制作時点では、三省堂の『新明解 四字熟語辞典』が、前版の5,600語を凌ぐ6,500語を収録し、出版社によれば『類書中最大。よく使われる四字熟語は区別して掲示。簡潔な「意味」、詳しい「補説」「故事」で、意味と用法を明解に解説。豊富に収録した著名作家の「用例」で、生きた使い方を体感。「類義語」「対義語」を多数掲示して、広がりと奥行きを実感』などとしています。

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Last updated : 2024/06/28