|
■このサイトに登録されている四字熟語を検索します。平仮名での検索や一文字からの検索、絞り込み検索などもできます。
八方美人
はっぽうびじん |
|
作家
|
作品
|
---|---|
紫式部 |
【源氏物語 梅が枝】
薫衣香(くんえこう)の製法の中にも、すぐれた物とされている以前の朱雀(すざく)院の法を原則にして公忠朝臣(きんただあそん)が精製したといわれる百歩(はくぶ)の処方などを参考として作った物は、製作に払われた苦心の効果の十分に表われた、優美な香を豊かに持たせたものであると、どれにも同情のある批評を宮があそばされるのを、「八方美人の審判者だ」 と言って源氏は笑っていた。月が出てきたので酒が座に運ばれて、宮と源氏は昔の話を始めておいでになった。 |
太宰治 |
【秋風記】
それから、自分で自分をもて余します。自分を殺したく思います。僕は、人間でないのかも知れない。僕はこのごろ、ほんとうに、そう思うよ。僕は、あの、サタンではないのか。殺生石。毒きのこ。まさか、吉田御殿とは言わない。だって、僕は、男だもの。」「どうだか。」Kは、きつい顔をする。 「Kは、僕を憎んでいる。僕の八方美人(はっぽうびじん)を憎んでいる。ああ、わかった。Kは、僕の強さを信じている。僕の才を買いかぶっている。そうして、僕の努力を、ひとしれぬ馬鹿な努力を、ごぞんじないのだ。 |
宮本百合子 |
【海流】
瑛子は、泰造の心の中の計画については何も知らなかった。良人の跫音をききながら、白い疲れた瑛子の顔に、今は誰憚るところのない倦怠と嫌悪の色が漲った。瑛子には、高輪の夫婦のごたごたそのものも不愉快であったし、それに対する泰造の態度も気にくわなかった。泰造には深いところがない。思索的なところがない。八方美人である。日頃瑛子は良人をそういう風に観てあき足りないでいるのであったが、今夜は、泰造が井上に対して一向圧しのきく態度を示さなかったことが二重にいやな気がした。
|
夢野久作 |
【東京人の堕落時代】
彼女は片っ端から少女を誘惑して団員とし、一方から望み次第に若い男性を引っぱって来てその少女に宛がって享楽させる。しかも彼女自身は割りにその方面に超然としているらしく、さればといっていい人があるようにも見えぬ。どちらかと云えば八方美人にも見えるし、一種の変態性欲主義者ではないかと思われる。又は、そうした悪魔的の仕事その物の興味に満足しているに過ぎぬのではないかと思われる節もある。 |
|