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波瀾重畳
はらんちょうじょう
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作家
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作品
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【骨董】
いろいろさまざまあらゆる骨董相応の値ぶみを間違わず付けて、そして何がしかの口銭を得ようとするのが商売の正しい心掛である。どうして油断も隙もなりはしない。波の中に舟を操っているようなものである。
波瀾重畳がこの商買の常である。そこへ素人 が割込んだとて何が出来よう。今この波瀾重畳険危な骨董世界の有様を
想見するに足りる談をちょっと示そう。但しいずれも自分が仮設したのでない、
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【支倉事件】
私は今まで長々と支倉喜平が逃亡から受縛に至るまでの経路を述べた。その如何に波瀾重畳を極めたるかは読者諸君に、私の
拙い筆を以てしてもよくお分りの事と思う。大正六年と云えば正に今より十年前であるが、この時代に於て、アルセーヌルパンの小説物語をそのまゝ地で行くような大胆不敵にして、かくまで奸智に長けた曲者が実在していようとは、種々の空想を逞しゅうして探偵小説を書く私でさえが夢想だにしなかった所である。
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【大衆文芸作法】
可成出鱈目の事件もあり、荒唐無稽の人物も出没し、ただ専ら、事件の波瀾重畳のみを本意として興味をつなぐ以外に何ものも見いだし得ないのである。
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【植物記】
ダガ、昨日まで暖飽な生活をして来た私が遽かに毎月十五円とは、これには弱った。何分足りない、足りなきゃ借金が出来る。それから段々子供が生れだし、驚く勿れ後には遂に十三人に及んだ。そして割合に給料が上らない。サア事ダ、私の多事多難はここからスタートして、それからが波瀾重畳、
具さに辛酸を嘗めた幾十年を大学で過ごした。その間また断えず主任教授の理不尽な圧迫が学閥なき私に加えられたので、今日その当時を回想すると面白かったとは冗戯半分言えない事も無いでは無いが、しかし誠に閉口した。
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【列のこころ】
これから、時代は益々列をつくる方向に向っていると云えるだろう。一つの国の人間が先ず列をつくることを教えられ、やがて自分たちで列をつくるようになり、追々自分たちの生活の実際の向上のために列を組むように成長してゆく過程は、実に多岐であり波瀾重畳であると思う。ひとくちに人の列と云えばそれまでだが、列をなす一人一人に二つの眼と口と心と生涯とがあるのだと思えば、おそろしき偉観と思えるのである。
〔一九四〇年十月〕
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【八ヶ嶽の魔神】
いでや作者は次回においては、この猪太郎の身の上について描写の筆を進めると共に、全然別種の方面に当たって別様の事件を湧き起こさせ、波瀾重畳幾変転、わが親愛なる読者をして手に汗を握らしめようと思う。
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【楽聖物語】
ベートーヴェンの音楽は、何故にかくもわれわれに働きかけてやまないか、――それはしばらくベートーヴェンの伝記から語らなければならないところであるが、ベートーヴェンの伝記は文字通り汗牛充棟で、一般に知り尽されていることであり、数ページの短文にその波瀾重畳
の生涯を叙することは困難でもあるので、しばらくベートーヴェンの生涯を特色づける、興味深い逸話を綴り合せて、巨人のおもかげを彷彿させ、あわせてベートーヴェンの音楽の驚くべき偉大性を語ろうと思う。
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【戦争史大観】
シュリーフェンの「カンネ」の一節に「翼側に於ける勝利を希うためには最後の予備を中央後でなく、最外翼に保持せねばならぬ。将帥の慧眼が広茫数十里に至る波瀾重畳の戦場に於て決戦地点を看破した後、初めて予備隊を移動するが如き事は不可能である。
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Last updated : 2024/06/28