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平談俗語
へいだんぞくご
作家
作品

島崎藤村

【千曲川のスケッチ】

先ず文学上の試みから始まって、それが社会全般にひろまって行き、新聞の論説から、科学上の記述、さては各人のやり取りする手紙、児童の作文にまで及んで来たに就いてはかなり長い年月がかかったことを思ってみるがいい。何んと云っても徳川時代に俳諧や浄瑠璃じょうるりの作者があらわれて縦横に平談俗語を駆使し、言葉の世界に新しい光を投げ入れたこと。それからあの国学者が万葉、古事記などを探求して、それまで暗いところにあった古い言葉の世界を今一度明るみへ持ち出したこと。この二つの大きな仕事と共に、明治年代に入って言文一致の創設とその発達に力を添えた人々の骨折と云うものは、文学の根柢こんていに横たわる基礎工事であったと私には思われる。わたしがこんなスケッチをつくるかたわら、言文一致の研究をこころざすようになったのも、一朝一夕に思い立ったことではなかった。

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中里介山

【大菩薩峠 如法闇夜の巻】

「しかし、さすが命知らずの長兵も諸藩の矢に攻められて、来島又兵衛は討死する、久坂玄瑞も討死する、福原、国司、益田の三家老は歯噛みをしつつ本国へ引上げるということになって、その後が長州征伐の結末は、毛利公の恭順と、例のその三家老の首を斬って謝罪するということで納まったそうじゃ」
 これらの話し声は、極めて小さい声で行われましたけれども、平談俗語へいだんぞくごの通り、尋常に聞き且つ答えることができました。
 話をしている間も、見廻りの来る心配はありません。ここの牢番もよく見廻りをするよりも、よく眠りたい方です。
「ははあ、それは一大事じゃ」

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中里介山

【大菩薩峠 山科の巻】

 一方、不破の関守氏は、米友を炉辺の対座に引据えて、これもしきりに物語りをしておりました。
 不破の関守氏は座談の妙手である。これはお銀様のように、権威と独断を人に押しつけることをしないし、弁信のように、感傷と理論の饒舌じょうぜつに人を悩ますようなことがありません。平談俗語のうちに、世態人情を噛みしめて話すものですから、米友もたんかを立てるすきがなく、これをして神妙に聞きれて、しきりにうなずかせるだけのものはありました。

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  • それぞれの四字熟語の詳しい意味などは、辞典や専門書でお確かめください。
  • このサイトの制作時点では、三省堂の『新明解 四字熟語辞典』が、前版の5,600語を凌ぐ6,500語を収録し、出版社によれば『類書中最大。よく使われる四字熟語は区別して掲示。簡潔な「意味」、詳しい「補説」「故事」で、意味と用法を明解に解説。豊富に収録した著名作家の「用例」で、生きた使い方を体感。「類義語」「対義語」を多数掲示して、広がりと奥行きを実感』などとしています。

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Last updated : 2024/06/28