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品行方正
ひんこうほうせい
作家
作品

夏目漱石

【彼岸過迄】

「何です今頃楊枝(ようじ)なぞを銜(くわ)え込んで、冗談(じょうだん)じゃない。そう云やあ昨夕(ゆうべ)あなたの部屋に電気が点(つ)いていないようでしたね」と云った。
「電気は宵(よい)の口から煌々(こうこう)と点いていたさ。僕はあなたと違って品行方正だから、夜遊びなんか滅多(めった)にした事はありませんよ」
「全くだ。あなたは堅いからね。羨(うらや)ましいくらい堅いんだから

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夏目漱石

【明暗】

「あたしこれでも津田へ行ってからまだ一晩も御厄介(ごやっかい)になった事はなくってよ」
「はあ、そうだったかね。それは感心に品行方正の至(いたり)だね」
「厭だ事。――由雄だって外へ泊った事なんか、まだ有りゃしないわ」
「いや結構ですよ。御夫婦お揃(そろい)で、お堅くっていらっしゃるのは――」
「何よりもって恐悦至極(きょうえつしごく)

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芥川龍之介

【手紙】

松林は路をあましたまま、ひっそりと高い草を伸ばしていました。僕等の話し声はこの松林の中に存外(ぞんがい)高い反響を起しました。殊にK君の笑い声は――K君はS君やM子さんにK君の妹さんのことを話していました。この田舎(いなか)にいる妹さんは女学校を卒業したばかりらしいのです。が、何でも夫になる人は煙草ものまなければ酒ものまない、品行方正の紳士でなければならないと言っていると云うことです。
「僕等は皆落第ですね?」
  S君は僕にこう言いました。が、僕の目にはいじらしいくらい、妙にてれ切った顔をしていました。

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芥川龍之介

【学校友だち】

 野口真造(のぐちしんざう) これも小学以来の友だちなり。呉服屋大彦(だいひこ)の若旦那(わかだんな)。但し余り若旦那らしからず。品行方正にして学問好きなり。自宅の門を出る時にも、何か出かたの気に入らざる時にはもう一度家へ引返し、更に出直(でなほ)すと言ふ位なれば、神経質なること想(おも)ふべし。小学時代に僕と冒険小説を作る。僕よりもうまかりしかも知れず。

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泉鏡花

【婦系図】

 処へ、名にし負う道学者と来て、天下この位信用すべき媒妁人(なこうど)は少いから、呉(ご)も越(えつ)も隔てなく口を利いて巧(うま)く纏(まと)める。従うて諸家の閨門(けいもん)に出入すること頻繁にして時々厭らしい! と云う風説(うわさ)を聞く。その袖を曳(ひ)いたり、手を握ったりするのが、いわゆる男女交際的で、この男の余徳(ほまち)であろう。もっとも出来た験(ためし)はない。蓋(けだ)しせざるにあらず能(あた)わざるなりでも何でも、道徳は堅固で通る。於爰乎(ここにおいてか)、品行方正、御媒妁人(おなこうど)でも食って行(ゆ)かれる……

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長塚節

【隣室の客】

 私は品行方正な人間として周囲から待遇されて居る。私が此所にいふやうな秘密を打ち明けても私を知つて居る人の幾分は容易に信じないであらうと思はれる。秘密には罪悪が附随して居る。私がなぜそれを何時までも匿して居ないかといふのに、人は他人の秘密を発くことを痛快とすると同時に自分の隠事をもむき出して見たいやうな心持になることがある。


私は健康の恢復しかゝるまで数年間徒然として過した。其間女といふ念慮の往来したことはあるが自分ながら明かにどうといつて述べて見る程のこともない。私に妻帯を勧める人もあつたが其噺を運ぶのには私の心は余りに沈んで居た。私が周囲から品行方正な人間として待遇されて居たのも当然である。私が斯ういふ状態を持続して居たのは病気といふ肉体の欠陥と私を挑発する機会が一度も与へられなかつたからとでなければならぬ。

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宮本百合子

【一九二三年冬】

 私の心持では
  Aが、種々な女の美しさなどにほっこりしない品行方正さ、実は感受性の鈍さが――あるのを知って居る故
  Aが、そういう純潔さに自繋せられて居るという知識、私自身のうぬぼれ等、すべてがコムバインして一つの信用と云うものになって居る。

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紫式部
與謝野晶子訳

【源氏物語 夕霧一】

 一人の夫人の忠実な良人(りょうじん)という評判があって、品行方正を標榜(ひょうぼう)していた源左大将であったが、今は女二(にょに)の宮(みや)に心を惹(ひ)かれる人になって、世間体は故人への友情を忘れないふうに作りながら、引き続いて一条第(てい)をお訪(たず)ねすることをしていた。しかもこの状態から一歩を進めないではおかない覚悟が月日とともに堅くなっていった。

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織田作之助

【青春の逆説】

 某日、軽部の同僚と称して、薄地某が宗右衛門町の友恵堂の最中(もなか)を手土産に出しぬけに金助を訪れ、呆気にとられている金助を相手に四方山の話を喋り散らして帰って行き、金助にはさっぱり要領の得ぬことだった。ただ、薄地某の友人の軽部村彦という男が品行方正で、大変評判の良い、血統の正しい男であるということだけが朧気にわかった。


「そりゃ惜しいね」と校長は言い、「実は……」と説明したのはこうだった。ある篤志家があって、大阪府下の貧しい家の子弟に学資を出してやりたい。無論、条件がある。品行方正の秀才で四年から高等学校の試験に合格した者に限る。それも入学試験のむずかしい一高と二高と三高だけに限り、合格した者は東京、京都のそれぞれの塾へ合宿させる。

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坂口安吾

【帝銀事件を論ず】

 政治家に、人間の自覚が欠けているのだ。政策もむろん欠けている。しかし、なによりも、人間の自覚が完全に欠如している。首相が行い正しいクリスチャンであるとか、品行方正であるとか、そんなことは、とるに足らぬ。品行不良でもかまわないから、人間とはいかなるものか、自分とはいかなる人間か、人間の宿命の悲痛さを、深く誠実に思い知り、罪の悲しさを知らねばならぬ。

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エンマ・ゴルドマン
伊藤野枝訳

【婦人解放の悲劇】

青年は自己の自然の声を黙殺して方正な態度をとる。彼女もまたいつもキチヨウメンで、理性的で、品行方正である。若(も)し彼等が結合を作つたなら、青年は恐らく凍死するの危険を冒さなければならなかつたかも知れないと私は気づかつてゐる。私はこの新しき美人に何等の美を発見する事が出来ないものであることを告白しなければならない。彼女はその夢想する石の壁や床の如く冷淡なのである。私はかの物尺(ものさし)によつて計らるが如き品行方正よりも寧ろロマンチツク時代の恋歌、ドンフハンとヴイナス夫人の恋、或は父母の呪咀と悲哀と隣人の道徳的弁明等を後にして梯(はしご)と縄とによる月夜の出奔を讚美したい。

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吉行エイスケ

【飛行機から墜ちるまで】

 緑色のイルミネェション、青い眼鏡に穴をあけながら、水の上を進んで行く。
  奔流、ごろつきのような波の音が僕に英国少女メリーの靴の踵(かかと)と、乳房に鬘(かつら)をかむったような女主人を思い出させた。
  そのときロップが僕に云った。
  ――ねえ、二人でクラブへ行きましょう。スペイン式の女学生がいるわ、シャンパン飲まして欲しいの………。
  ――ロップ、紙幣と品行方正の匂いがする。
  ――よう!
  ――醜婦奴(しゅうふめ)、ガウンが百度ひらいたって、糞(くそ)。

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大杉栄

【獄中記】

 元来僕は、ほとんど一滴も飲めない、女郎買いなぞは生れて一度もしたことのない、そして女房と腕押しをしてもいつも負けるくらいの実に品行方正な意気地なしなのだ。
  奥さんも御一緒
  それから、これは本年の夏、一週間ばかり大阪の米一揆を見物して帰って来ると、
「ちょっと警察まで。」
  ということで、その足で板橋署へ連れて行かれて、十日ばかりの間「検束」という名義で警察に泊め置かれた。

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ニコライ・ゴーゴリ
平井肇訳

【鼻】

 分別くさい係員は大真面目な顔つきで聴き耳を立てながら、それと同時に、提出された原稿の文字が幾字あるかを勘定していた。あたりには皆それぞれ書付を手にした、老婆だの、手代だの、門番だのといった連中が多勢立っていた。その書付には、品行方正なる馭者、雇われたしというのもあれば、一八一四年パリより購入、まだ新品同様の軽馬車、売りたしというのもある。

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ルイザ・メイ・オルコット
水谷まさる訳

【若草物語】

「なにもわるいことありませんよ。家の玉突では、じょうずな相手がなくてつまらない。だから、ときどきいって、ネッド・マフォットや、そのほかの連中とやるんです。」
「いやだわ、だんだん好きになって、時間をお金をむだにして、いけない子になるんでしょう。品行方正でいてほしいわ。」
「男は、品をおとさなければ、ときどきおもしろい遊びをしてはいけないかしら?」

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夢野久作

【いなか、の、じけん】

給料を一文も費(つか)わないばかりか、営庭の掃除の時に見付けた尾錠(びじょう)や釦(ボタン)を拾い溜めては、そんなものをなくして困っている同僚に一個一銭宛(ずつ)で売りつけて貯金をする。そうして日曜日を待ちかねて、母親を慰めに行くことが聯隊中の評判になったので、遂に聯隊長から表彰された。性質は極めて柔順温良で、勤務勉励、品行方正、成績優等……曰(いわ)く何……曰く何……。

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豊島与志雄

【蛸の如きもの】

 蛸坊主の会合だから、さすがに腕もあり足もある。だが、その腕や足のゼスチュアーも、ここではあまり役に立たない。給仕の女たちは、紺絣にモンペ姿の品行方正な少女だ。蛸坊主どもが如何にも色気たっぷりに、腕や足をさし伸べようと、その吸盤は、深遠な論理の声音が宙に消え失せると同様、宙に迷って何の手応えも得られない。

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新美南吉

【久助君の話】

 久助(きゅうすけ)君は、四年から五年になるとき、学術優等品行方正のほうびをもらってきた。
  はじめて久助君がほうびをもらったので、電気会社の集金人であるおとうさんは、ひじょうにいきごんで、それからは、久助君が学校から帰ったらすぐ、一時間勉強することに規則をきめてしまった。

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佐々木味津三

【右門捕物帖 京人形大尽】

事の勃発(ぼっぱつ)いたしましたのはあれから半月と間のない同じ月の二十六日――しかも、おおかたもう四ツを回った深夜に近い刻限のことでした。古いざれ句にも『ひとり寝が何うれしかろ春の宵(よい)』というのがありますが、常人ならば大きにその句のとおりなんですけれども、わが捕物名人のむっつり右門ばかりは、あいもかわらずじれったいほどな品行方正さでしたから、一刻千金もなんのその、ひとり寝をさせるには気のもめる、あの秀麗きわまりない肉体を、深々と郡内の総羽二重夜具に横たえて、とろとろと夢まどやかなお伽(とぎ)の国にはいったのが、いま申しあげたその四ツ下がり――

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岡本綺堂

【鰻に呪われた男】

勿論、それまでには私の方でもよく先方の身許(みもと)を取調べまして、浅井の兄さんは夏夫といって某会社で相当の地位を占めていること、夏夫さんには奥さんも子供もあること、また本人の浅井秋夫も品行方正で、これまで悪い噂もなかったこと、それらは十分に念を入れて調査した上で、わたくしの家へ養子として迎い入れることに決定いたしたのでございます。

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中里介山

【大菩薩峠 畜生谷の巻】

 その度毎に、道庵の方では、友様の野郎をまいてやったと大得意でふざけきっているが、米友の方では、その忠実厳正なる責任感から、血眼(ちまなこ)になって主と頼む人の行方(ゆくえ)を探し廻ったことも、一度や二度ではありませんでした。
  これは道庵としては、甚(はなは)だ罪のあるやり方ですけれども、一方から言えば、忠実すぎ、厳正すぎる監督者の眼をかすめたくなることも、日頃、品行方正な道庵としては、せめて旅行中ぐらいは、大目に見てやらなければならぬ事情もあります。

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Last updated : 2024/06/28