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疲労困憊
ひろうこんぱい |
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作家
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作品
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宮本百合子 |
【婦人と文学】
結婚の習俗に抗しつつ、らいてうと博史との家庭についての感情が、全くあり来りの、おとなしい、けれども我知らず排他的になっている小市民の家庭感情から一歩も歩み出ていないことは、家庭と仕事との摩擦を、耐え難いものと感じさせるに到ったと見られる。家庭と仕事とのやりくり、そのやりくりのために、今は赤裸々な皮膚にふれて来る実生活との摩擦で疲労困憊したらいてうは、その苦痛と敗北と自身の生活態度の本質に客観的に考え究める可能を見出さず「こういう散文的な生活が只私を疲らせ、私の中の高貴なものの総てを汚し、私から光と力とを奪い去るものだ」としかみられなかった。
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坂口安吾 |
【わが血を追ふ人々】
あいにく小左衛門はたつた一人裏庭へでゝ神火を見てゐた。海から上つてくる男に向つて誰かと叫ぶと、あゝ、あんたか、と、男はすり切れたやうな声で答へたゞけだつた。さすがにこの男も冬の荒れ海の水練に疲労困憊してゐたのである。男は暫く汀にうづくまつてゐたが、やがて起き上つて腰に巻きつけてゐたヂシビリナ(鞭)をほどくと、力一ぱい自分の身体を殴りはじめた。
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平出修 |
【瘢痕】
今夜も松村はやはり疲労困憊の人であつた。朝、白川と会つて十時に築地のゝゝ倶楽部で東洋演芸の重役と長時間の交渉を続け、昼飯もせずに二時頃までは陰忍と焦躁の為に神経を張りつめて居た。それから皮革会社創立の計画、夜は二座敷(ふたざしき)の客をつとめてやつと放たれた身体(からだ)となつたのである。帰らなければならぬ時間となつて居たのではあるが、口には帰ると云つても、さて立ち上らうともしなかつた。
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国枝史郎 |
【剣侠】
「お兄イ様ア――ッ」と呼ばわった。木精(こだま)さえ返って来なかった。 クラクラと眼眩み倒れようとした。 そうでなくてさえ荒くれ男、数人を相手に闘ったあげく、一人を突いて倒していた。疲労困憊その極にあった。しかも今も切りかかって来ている。そこへ兄であり恋人であり、許婚(いいなずけ)でもある主水の姿が見えなくなってしまったのである。 恐怖、不安、焦燥、落胆! フラフラと倒れかかった。 そう、主水はお妻の云う通り、あの日陣十郎を追って行き、疲労困憊極まって、鎮守の森で気絶した時、お妻の助けを得なかったなら、後にて聞けば陣十郎が、森へ立ち戻って来たとはいうし、その陣十郎のために刃の錆とされ、今に命は無かったろう。だからお妻は命の恩人と、心から感謝はしているのであり、そのお妻が来る度毎に、それとなく、いやいや、時には露骨に、自分に対して恋慕の情を、暗示したり告げたり訴えたりした。 そこで陣十郎の消息を尋ねた。 |
中里介山 |
【大菩薩峠 駒井能登守の巻】
猫が鼠を捕った時は、暫らくそれをおもちゃにしているように、自分でそこへ抛り出したお絹の面(かお)を見ると、がんりきは物狂わしい心持で、「こうしちゃいられねえんだ」 再びお絹を背負い上げて登りはじめようとしたが、この時はがんりきの身体もほとんど疲労困憊(ひろうこんぱい)の極に達して、自分一人でさえ自分の身が持ち切れなくなってしまいました。 |
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