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百八煩悩
ひゃくはちぼんのう |
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作家
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作品
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徳田秋声 |
【仮装人物】
「僕がここまで引き摺(ず)って来たというんだろ。」「そうじゃないのよ。私は結果を言ってんのよ。」 「そう、解ったよ。じゃ別れようよ。」 しかしそのままに過ごした夜も更(ふ)け、遠近(おちこち)におこる百八煩悩(ぼんのう)の鐘の音も静まってから、縫いあがった洋服を着てみせて、葉子も寝床へ入ったのだったが、庸三は少しうとうとするかと思うと、また目が冴(さ)えだして、一旦葉子の態度で静まりかけていた神経が、今度は二倍も三倍もの力で盛りかえして来るのだった。彼は床をはねおきると机の前へ来て坐った。葉子も目をさまして、彼の坐っているのに気づいて、白い手を伸べた。 |
木下尚江 |
【火の柱】
多事多難なりける明治三十六年も今日に尽きて、今は其の夜にさへなりにけり、寺々には百八煩悩の鐘鳴り響き、各教会には除夜(ぢよや)の集会(あつまり)開かる、永阪教会には、過般(くわはん)篠田長二除名の騒擾(さうぜう)ありし以来、信徒の心を離れ離れとなりて、日常(つね)の例会(あつまり)もはかばかしからず、信徒の希望(のぞみ)なる基督降誕祭(クリスマス)さへ極(きは)めて寂蓼(せきれう)なりし程なれば、除夜の集会(あつまり)に人足(ひとあし)稀(まれ)なるも道理(ことわり)なりけり、 |
中里介山 |
【大菩薩峠 三輪の神杉の巻】
竜之助が、この三輪まで逆戻りをして来たからには、関東へ帰る心を抛(なげう)ったのであろう。また京都へ帰る気になったのかも知れぬ。いや、そうでもない、彼は今や西へも東へも行詰まっている。立往生(たちおうじょう)をする代りに、籠堂へ坐り込んで一夜を明かした、が、百八煩悩(ぼんのう)を払うというなる初瀬(はつせ)の寺の夜もすがらの鐘の音も、竜之助が尽きせぬ業障(ごうしょう)の闇に届かなかった。迷いを持って籠堂に入り、迷いをもって籠堂を出た竜之助は、長谷の町に来て、ふとよいことを聞いた。
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