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百尺竿頭
ひゃくしゃくかんとう ひゃくせきかんとう |
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作家
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作品
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森鴎外 |
【渋江抽斎】
「聖人の道と事々(ことごと)しく云(い)へども、前に云へる如く、六経を読破したる上にては、論語、老子の二書にて事足るなり。其中にも過猶不及(すぎたるはなおおよばざるがごとし)を身行(しんこう)の要とし、無為不言(ぶいふげん)を心術の掟(おきて)となす。此二書をさへ能(よ)く守ればすむ事なり」というのである。抽斎は百尺竿頭(ひゃくせきかんとう)更に一歩を進めてこういっている。「但(ただし)論語の内には取捨すべき所あり。王充(おうじゅう)書(しょ)の問孔篇(もんこうへん)及迷庵師の論語数条を論じたる書あり。 |
芥川龍之介 |
【路上】
「おい、君、序(ついで)にレムブラントもデュラアも、我々同様屁(へ)を垂れたと云う考証を発表して見ちゃどうだ。」近藤は大きな鼻眼鏡の後(うしろ)から、険(けわ)しい視線を大井へ飛ばせたが、大井は一向(いっこう)平気な顔で、鉈豆(なたまめ)の煙管(きせる)をすぱすぱやりながら、 「あるいは百尺竿頭一歩(ひゃくせきかんとういっぽ)を進めて、同じく屁を垂れるから、君も彼等と甲乙のない天才だと号するのも洒落(しゃ)れているぜ。」 |
芥川龍之介 |
【木曾義仲論(東京府立第三中学校学友会誌)】
未嘗て源兵衛佐の卓識を以てするも武門政治の創業者としては遂に彼の足跡を踏みたるに過ぎざるを思はずンばあらず。(固より彼は多くの点に於て、頼朝の百尺竿頭更に及ぶべからざるものありと雖も)見よ、彼は瀬戸内海の海権に留意し、其咽喉たる福原を以て政権の中心とするの得策なるを知れり。
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夏目漱石 |
【思い出す事など】
進んで無機有機を通じ、動植両界を貫(つらぬ)き、それらを万里一条の鉄のごとくに隙間(すきま)なく発展して来た進化の歴史と見傚(みな)すとき、そうして吾ら人類がこの大歴史中の単なる一頁(ページ)を埋(うず)むべき材料に過ぎぬ事を自覚するとき、百尺竿頭(ひゃくせきかんとう)に上(のぼ)りつめたと自任する人間の自惚(うぬぼれ)はまた急に脱落しなければならない。
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夏目漱石 |
【高浜虚子著『鶏頭』序】
成程(なるほど)吾々凡人より高く一隻眼(いっせきがん)を具して居ないとあんな御手際(おてぎわ)は覚束(おぼつか)ない。只(ただ)此点丈(だけ)でも敬服の至りである。然し斯様(かよう)に百尺竿頭(ひゃくしゃくかんとう)に一歩を進めた解決をさせたり、月並を離れた活動を演出させたり、篇中の性格を裏返しにして人間の腹の底にはこんな妙なものが潜(ひそ)んで居ると云う事を読者に示そうとするには勢い篇中の人物を度外(どはず)れな境界(きょうがい)に置かねばならない。
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宮本百合子 |
【落ちたままのネジ】
そのようにして歩き出したこの作家は「上海」を意味深い転期として、いわゆる「流行」にまけることを潔しとせず、プロレタリア文学に反撥する強力な緊張で「寝園」「盛装」に到る境地を築き上げて来た。彼の見事さというものは、謂わば危くも転落しそうに見える房飾つきの水盃を、百尺竿頭に保っている、その際どいかね合いで、拍手は、その緊張に対し、そのサスペンスの精力に対してなされた。
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岩野泡鳴 |
【神秘的半獸主義】
先きに非我と定めた自然は大我のうちに融和するので――それで、自然が全く無くなつて居るのかといふに、そうでもない。かうなると、大乘佛教の面影も見えて、世界は神聖な夢であつて、その夢の中にあらはれて居る自然は、心靈が百尺竿頭一歩を進めて、下方へ權化したので、心靈から云へば、その無意識的射影であるのだ。
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狩野亨吉 |
【安藤昌益】
此見地に立つて安藤は治國平天下の代表者聖人孔子を罵り、救世の代表者世尊釋迦をも呵り付けるのである。もし彼が此特色ある問題を提げて起つたとすれば彼は歐米の主義者の先驅者となつたであらう。然るに彼の透徹性は茲に止ることを許さず、彼をして百尺竿頭一歩を進ましめ、何故に治國救世を標榜する政や教が揃ひも揃つて、しかく無能であつて、世間の惡黨をも退治することも出來ず、又古今東西に亙つて行はるる不公平をも匡正することが出來ないのであるかと問はしめたのである。 |
小熊秀雄 |
【小熊秀雄全集-8 詩集(7)恋愛詩篇】
いつそ飯を喰ふこともやめてしまつたらどうか、 階級を、父を母を、 兄妹を、妻子を、同志を、 一切は愛と真理のための闘ひだ、 肉親の愛をつよく肯定したまへ、 さらに百尺竿頭一歩をすゝめ たまには赤の他人を愛する練習もしてみたまへ、 君の心臓は美しいものの心臓と触れるのだ、 |
山路愛山 |
【英雄論 明治廿三年十一月十日静岡劇塲若竹座に於て演説草稿】
思ふて此に至る吾人は賈生(カセイ)ならざるも、未だ嘗て之が為に長大息せずんばあらず、古来未だ嘗て亡びざるの国あらず、而して其亡ぶるや未だ嘗て其国民が当初の品格を失墜したるに因(よ)らずんばあらず噫(あゝ)今に及んで百尺竿頭、更に一歩を転ぜずんば、吾人は恐る、「古(むか)し我先人が文明を買ひし価(あたひ)は国を亡(うしな)ふ程に高直なりき」と白皙(はくせき)人種に駆使せられながら我子孫のツブヤカんことを。
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夢野久作 |
【少女地獄】
私と同様な気軽な、茶目式の人物と思い込んでしまったために、こんな軽はずみな事を彼女に頼んだ次第であった。ところが彼女のこうした不可思議な創作能力は、それからさらに百尺竿頭百歩を進めて、真に意表に出ずる怪奇劇を編(あ)み出す事になった。 |
長谷川時雨 |
【旧聞日本橋 03 蕎麦屋の利久】
暮(くれ)のお席書(せきが)きの方が、試験よりよっぽど活気があった。十二月にはいると西(にし)の内(うち)一枚を四つに折ったお手本が渡る。下の級は、寿とか、福とか、むずかしくなると、三字、五字、七字――南山寿とか、百尺竿頭更一歩進(ひゃくしゃくかんとうさらにいっぽをすすむ)とかいうのだった。課業はすっかりやめてしまって、その手習にばかりかかる。そしてお墨すりだ。 |
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