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百薬之長/百薬の長
ひゃくやくのちょう |
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作家
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作品
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葉山嘉樹 |
【氷雨】
その夜は、囲炉裏の自在鍵には鍋がかかつてゐなかつた。火も燃えてゐなかつた。「さては米代を飲んぢまやがつたな」 と腹の中で云つて、私は首をすくめた。 屋根板を削るのや、頼まれて日雇に行くのが、その家の業だつた。 私はその夫婦の両方に同情した。 セリフは私の家でも同じだ。日本中、いや世界中、このセリフは共通してゐるだらう。そしてこのセリフ位、古くならないで、何時も鋭い実感を伴つて、亭主野郎の頭上に落ちて来るものも少ないだらう。 ジグスのやうに、パンのし棒でのされるにしても、あのやうに朗に飲めるのならば、酒は確かに百薬の長だが。 親子心中を一日延ばすために、飲んだとなると、効き目が一寸あらたか過ぎる。 |
中里介山 |
【大菩薩峠 山科の巻】
いやはや、イケ好かない奴が来たもので、例の「鐚か――一ぱい飲みたいと思っていたところだ」 「イケません、せっかく聖賢の書をひもといて善良な感化に落着きあそばそうというその途端に、酒というやつが悪魔! そもそも、和漢をいわず酒を賞すること勝計すべからず、 「えらく貴様、今日に限って学者ぶるな」 |
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