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不言実行
ふげんじっこう |
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作家
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作品
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太宰治 |
【惜別】
「君の顔は、あまり見かけないようだが、私の講義に出た事がありますか。」「はあ、」と私は泣き笑いの表情で、「あの、これから。」 「新入生ですね。まあ、みんな、はげまし合ってやってくれ給え。津田君には、私からもよく言っておきます。私も、どうもクラス会で、不要の出しゃばりの事を言った。これからは、不言実行、という事にしましょう。」 私はひらいて、眼を瞠(みは)った。どのペエジも、ほとんど真赤なくらい、こまかく朱筆がいれられてある。 「それから、もう、毎週、それが続いているのです。」 |
太宰治 |
【春の盗賊】
「もっとないか。」「興覚めるね。だから、僕は、リアリストはいやだ。も少し、気のきいたことを言ってもらいたいね。どうせ、その金は、君のものさ。僕の負けさ。どうも、不言実行には、かなわない。」私は、しきりと味気(あじけ)なかった。 「金を出せ。」また、言った。 |
太宰治 |
【HUMAN LOST】
君は、無智だ。歴史を知らぬ。芸術の花うかびたる小川の流れの起伏を知らない。陋屋(ろうおく)の半坪の台所で、ちくわの夕食に馴れたる盲目の鼠だ。君には、ひとりの良人を愛することさえできなかった。かつて君には、一葉の恋文さえ書けなかった。恥じるがいい。女体の不言実行の愛とは、何を意味するか。ああ、君のぼろを見とどけてしまった私の眼を、私自身でくじり取ろうとした痛苦の夜々を、知っているか。
三日。 いい薬になりました。 |
宮本百合子 |
【獄中への手紙 一九四四年(昭和十九年)】
わたしは散文というものの実質がどのように充実し高められ、生命そのものが粉飾的でない通りに、飾りない美に充ち得るかということを身をもって知って、一層切実にそう思います。散文をかく人間に生れ合わせたうれしさを感じます。文学的ということも、進歩いたしますね。ああいう小説がかきたいことね、沁々そう思います、不言実行的小説が、ね。
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戸坂潤 |
【思想と風俗】
所謂実際家は本当を云えばいきなり実行するか、もし実行出来なければ口にも出さぬという種類の人間だと考えられて来ているのであって、とに角主張ということにあまり価値を置かない人種のことである。少なくとも東洋的乃至日本的な観念によると、実際家とはそういう不言実行の人を云うらしい。ヨーロッパ的実際家にはこの点必ずしもあて嵌らないので、ファシズムの英雄政治家達に於ては、主張とその不実行とさえが特色であるが、併しヒトラーやムッソリーニと雖も、ショーやウェルズのようには、色々の主張を有ってはいないと云うことも出来るだろう。
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中里介山 |
【大菩薩峠 新月の巻】
「そういう問題は、今更、お雪ちゃんから提出されるまでもなく、世間では、もう充分に、研究も翫味(がんみ)もしつくされていて、今は不言実行の時代に入っているんだよ――まあ早く言えば、いろいろの意味で子を産みたくないという奴が、世間にはうんといるのさ。そりゃ、子を産みたくって産みたくって、神仏まで祈り立てる奴もあれば、子を産みたくなくって、生れようとする奴を産ませまいとして、また産み並べた奴をもてあましてるのが、天下にうんとあるんだ――今更、お雪ちゃんのように、そんなに事新しく、婉曲(えんきょく)に、上品に持ち出すのが古いくらいなもんだが、この道ばかりは、古いが古いにならず、新しいが新しいにならず、やっぱり、人間生きとし生ける間は繰返されるんだ。だが、お雪ちゃんのように、そう学問的に婉曲に持ち出す間は、まだ花で、不言実行となると、みもふたもねえのさ」 「不言実行とは、どういうことなんでございますか」 「言わずして実地に行う、こいつがいちばん始末が悪いね――老子曰(いわ)く、言う者は知らず、知る者は言わずってね――こういう貧乏人にひっかかると、全く始末が悪い。今の問題で言うと、その不言実行、お産の方で、今の不言実行てやつが……」 「それが、どうなんでございます」 |
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