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不倶戴天
ふぐたいてん |
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作家
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作品
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福沢諭吉 |
【女大学評論】
法律に当らざる離縁法を世に公けにするは人を誤るの恐れあり。例えば国民の私裁復讐は法律の許さゞる所なり。然るに今新に書を著わし、盗賊又は乱暴者あらば之を取押えたる上にて、打つなり斬るなり思う存分にして懲らしめよ。況(いわ)んや親の敵(かたき)は不倶戴天の讐(あだ)なり。政府の手を煩わすに及ばず、孝子の義務として之を討取る可し。曾我(そが)の五郎十郎こそ千載の誉れ、末代の手本なれなど書立てゝ出版したらば、或は発売を禁止せらるゝことならん。
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岸田國士 |
【美談附近】
「この人形の処置について諸子の意見を徴したところ、毀してしまへといふのが二百四十三、海に投げ棄てよといふのが三百十八、送り返せといふのが三、焼いてしまへといふのが三百二十一、それから、どこか見えないところへしまつて置けといふのが一、そこで、大体の意見としては、この人形を死刑に処するといふことにきまつたわけである。先生がたもみなこの意見に賛成せられたから、今日、此処で、全校の手によつて火焙りの刑に処することにした。不倶戴天の仇、米国の末路はかくの如きものである。高等科二年の加藤、その薪に火をつけろ」呼び出された高等二年の加藤壮一は、静かに列を離れて枯枝の小山の前に立つた。先生の一人が差し出すマッチを、ちらと横目で見たまゝ、受取らうとしない。 |
坂口安吾 |
【本郷の並木道 ――二つの学生街――】
去年東京帝大の仏文科を卒業し、京都のJO撮影所の脚本家となつた三宅といふ人がゐた。京都に友達がなく、無聊(ぶりよう)に悩んで、三日目毎に、どんな悪天候を犯しても、僕のところへ遊びにくる習慣だつた。彼はその身も数ヶ月以前までは学生の身分であつたことを物の見事に忘却し、京都の学生の横行闊歩を憎むこと、不倶戴天の仇敵を見るやうである。なるほど東京の学生は、とてもかうはもてないのである。失はれた青春が、三宅君の癪のたねであつたらしい。京都では、学生の行けない酒場の女達すら、学生向きにできてゐる。東京へ戻つてみると、大学街の喫茶店の女すら、すべての感じが、どことなく大人であつた。学生の行動も亦控へ目である。
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山村暮鳥 |
【ちるちる・みちる】
その中(なか)で年嵩(としかさ)らしいのが「でもまあ無事(ぶじ)でよかつた。人間(にんげん)め! もうどれほど俺達(おれたち)の仲間(なかま)を殺(ころ)しやがつたか。これを不倶戴天(ふぐたいてん)の敵(てき)とゆはねえで、何(なに)を言(ゆ)ふんだ。此(こ)の世(よ)はおろか、此(こ)のかたきは、生(うま)れかはつて打(う)たなけりやならねえ」 すると他(ほか)のが 「生れかはるつて、何(なに)にさ」 「人間(にんげん)によ」 「そんなら人間(にんげん)は」 「きまつてるじやねえか、蚤(のみ)さ」 |
桑原隲藏 |
【東西交通史上より觀たる日本の開發】
所が困つたことは西暦十四世紀の中頃から十五世紀にかけて、トルコ帝國が勃興して來て、次第に勢力を張り、黒海もシリアもエヂプトも漸次にトルコの手に歸し、又は歸せんとする形勢になつて來た。かくてヨーロッパとアジアとの交通路が海陸ともにトルコの爲に威嚇され、又は遮斷されることになつた。元來歐洲諸國とトルコとは、不倶戴天の仇敵の間柄である。第一にトルコはマホメット教を奉じ、歐洲諸國はキリスト教を奉じて信仰を異にして居る。第二にトルコは新興の勢を擧げて侵略の手をヨーロッパ方面に向け、歐洲諸國と絶えず交戰するといふ有樣であつた。その宗教上政治上不倶戴天の仇敵たるトルコの爲に、大事な東洋方面との交通路を遮斷威嚇されることは、歐洲諸國にとつて堪へ難い大苦痛であつた。
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宮本百合子 |
【同志小林の業績の評価に寄せて ――誤れる評価との闘争を通じて――】
宮島新三郎(『報知新聞』三月文芸時評)板垣鷹穂(『文学新聞』小林多喜二追悼号)などは、同志小林の殉難を惜しみつつ、同志小林がその活動を文学的活動の範囲に止めておかなかったことを遺憾とし(板垣)、または、今度のことにつけても作家同盟はよく考えて欲しい(宮島)と云っている。彼等は、ボルシェヴィク作家としての同志小林の発展の必然の道を理解し得ない。即ち、プロレタリアートの道を見出し得ず、かえって同志小林を虐殺した不倶戴天の敵の姿を大衆から覆うことによって、反動の役割を演じているのである。
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モーリス・ルブラン 婦人文化研究会訳 |
【探偵小説アルセーヌ・ルパン】
ここに警視庁刑事主任ガニマール氏はソーニャ・クリシュノフの王冠事件の後、ルパンの部下より探知したたくさんの証拠を握って、ルパンの跡を追い廻していたが、何の得る所もなく、ふらりと巴里(パリ)に帰って来た。帰ってみれば、今まで自分が追い掛けていたはずのルパンがこの大事件を起しているのであった。ガニマール氏はまたしても不倶戴天(ふぐたいてん)の敵アルセーヌ・ルパンのためにうまうまと一枚喰わされたのである。ガニマール氏をしてルパンが東洋方面に逃走したらしく思わせたのはルパンの計略であって、これはこの名探偵を巴里(パリ)の外へ追出しておいて、その留守にうまうまと錦の壁布事件の大事件をしたのである。
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中里介山 |
【大菩薩峠 甲源一刀流の巻】
「剣を取って向う時は、親もなく子もなく、弟子も師匠もない、入魂(じっこん)の友達とても、試合とあれば不倶戴天(ふぐたいてん)の敵と心得て立合う、それがこの竜之助の武道の覚悟でござる」竜之助はこういう一刻(いっこく)なことを平気で言ってのける、これは今日に限ったことではない、 |
夢野久作 |
【斬られたさに】
平馬の顔から血の色が消えた。何もかも解かったような気がすると同時に、又も、眼の前が真暗になって来たので、吾れ知らず二通の手紙を握り締めた。自分の恩師を不倶戴天の仇(あだ)と狙う眼の前の不思議な女性を睨み詰めた。その時に若衆姿の女性が、やっと顔を上げた。平馬の凄じい血相を見上げると、又も新しい涙を流しながら唇を震わした。 |
国枝史郎 |
【天主閣の音】
「一体お前は何者だ?」「妾の父はお殿様に……」 「可い可い」 と宗春は手を振った。 「云うな云うな、俺も聞かない。…… ……父の仇、不倶戴天、こういう義理は小五月蠅(うるさ)い。……訊きたいことが一つある。お前は将来も俺を狙うか?」 お半の方は黙っていた。 |
木下尚江 |
【火の柱】
敢(あへ)て問ふ、謂(い)ふ所の独逸(ドイツ)とは則(すなわ)ち何ぞや、彼等は軽忽(けいこつ)にも独逸皇帝を指して独逸と云ふものの如し、気の毒なる哉(かな)独逸皇帝よ、汝は今夏(こんか)の総選挙に於て全力を挙げて戦闘せり、曰(いは)く社会党は祖国に取つて不倶戴天(ふぐたいてん)の仇敵なり、一挙にして之れを全滅せざるべからずと、多謝す、アヽ独逸皇帝よ、汝の努力に依(よつ)て我独逸の社会党は、忽然(こつぜん)八十余名の大多数を議会に送ることを得たりしなり、
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高神覚昇 |
【般若心経講義】
仏教とマルキシズムの「苦」に対する考え方を、比較しておく必要があります。かつてマルクス主義者は、口を開けばすぐブルジョアがいけないと、まるで敵(かたき)のように罵(ののし)りました。不倶戴天(ふぐたいてん)のごとくに攻撃いたしました。社会の不安も、社会苦も、生活苦も、ことごとく資本家の罪に帰して、社会機構の欠陥を叫びました。だが、果たしてそれは正しい見方でしょうか。
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