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富国強兵
ふこくきょうへい |
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作家
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作品
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徳冨健次郎 |
【みみずのたはこと】
ある犬通の話に、野犬(やけん)の牙は飼犬(かいいぬ)のそれより長くて鋭く、且外方(そっぽう)へ向(む)くものだそうだ。生物(せいぶつ)には飢(うえ)程恐ろしいものは無い。食にはなれた野犬が猛犬になり狂犬になるのは唯一歩である。野武士(のぶし)のポチは郎等のデカとなって、犬相が大に良くなった。其かわり以前の強味はなくなった。富国強兵兎角両立し難いものとあって、デカが柔和に即ち弱(よわ)くなったのも逭(のが)れぬ処であろう。以上二頭の犬の外、トラと云う雄猫(おねこ)が居る。犬好きの家は、猫まで犬化して、トラは畳(たたみ)の上より土に寝(ね)るが好きで、儂等が出あるくと兎(うさぎ)の如(ごと)くピョン/\はねて跟(つ)いて来る。
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宮本百合子 |
【私たちの建設】
ましてや、この特異な日本憲法において、全人口の半ばを占める女子の社会的地位を、男女平等の人民として規定しているような条項は、一つもないのである。それは、明治というものの本質から結果された。先に触れたように、明治の支配者が社会に対して抱いた観念は、何処までも彼等の利害を主眼とした富国強兵を主題としていた。農民と土地との関係が、昔ながらの地主と小作の形のまま伝えられたと同じように、「家」というものと婦人との関係、男子に従属するものとしての女子の関係は、殆ど近代化されず封建的のまま踏襲した。
坪内逍遙が「当世書生気質」を発表した頃で、それに刺戟され、それを摸倣して書いた小説であり、当時流行の夜会や、アメリカ人や洋装をした紳士令嬢などが登場人物となっている。十八九歳だったこの才媛は、既に反動期に入った日本としての、女権拡張の立場に立って婦人問題を述べている。花圃の小説中最も愛らしく聰明な婦人と思われている女主人公は、日本の富国強兵の伴侶として、その内助者としての女性の生活を最も名誉あるものと結論しているのである。後年花圃の良人三宅雪嶺とその婿である中野正剛等が日本の文化における反動的な一つの元老として存在したことと考え併せると、極めて興味がある。 |
戸坂潤 |
【思想と風俗】
かつてはスポーツを体育と称して奨励したが、そういう「体操」は段々人気がなくなって、剣道柔道というようなもっと「精神的」な武士らしいものが公認となり、やがて一寸下等になっては相撲が台頭し、それからいわゆるスポーツとして野球が絶対王権の玉座を占めるに至った。しかしもう野球となっては、ほとんど日本魂がなくなっているから、それに対抗して教練(これは兵式体操が進化したもの)が実施されるようになって来た。それはとにかく、いわゆるスポーツという外国語で呼ばれる行動形式は、どうも、直接には富国強兵の手段にはならないらしいので、一頃スポーツは学校教育ではあまり優遇されなかったものである。ところが幸か不幸か、第一次大戦以来、「日本人」の思想も、世界の人間並に悪化して来たので、即ちマルクス主義が学生の「アヘン」(?)となり始めたので、社会における教育当事者は、これに対抗すべくスポーツを別なアヘンとして大安売りを始めたのである。 |
河上 肇 |
【小国寡民】
放翁の東籬は羨ましい。だが、老子の小国寡民はまたこれにも増して羨ましく思はれる。大国衆民、富国強兵を目標に、軍国主義、侵略主義一点張りで進んで来た我が日本は、大博打の戦争を始めて一敗地にまみれ、明九月二日には、米国、英国、ソヴエット聯邦、中華民国等々の聯合国に対し無条件降伏の条約を結ばうとしてゐる。 |
夢野久作 |
【超人鬚野博士】
「利いた風な事を云うな。日本の警察はまだまだズッと大きな罪悪を見逃がしているんだぞ。彼(か)の活動写真屋を見ろ。あんな映画を一本作るために、映画会社が何人の男女優を絞め殺したり、八ツ切(ぎり)にしたりしているか知っているか。しかもその俳優たちは、みんな町から拾って来た良家の子女ばかりじゃないか。まして況(いわ)んや彼(か)の議会を見ろ。何百の議員の首を絞めたり、骨を抜いたり、缶詰にしたりして富国強兵の政策を決議させる。その議員というのは政党屋が、全国各地方から拾い上げて来た我利我利亡者(がりがりもうじゃ)ばかりじゃないか。吾輩が、町から拾って来た動物のクズを殺して、博士を作るくらいが何だ」
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