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風流韻事
ふうりゅういんじ
作家
作品

鳥谷部春汀

【明治人物月旦(抄)】

 伊藤侯の特質として最も著明なるは、風流韻事自ら高しとするに在り暇あれば必ず詩人を邀へて共に煙霞を吐納し、筆墨を揮灑す是れ胸中の閑日月を示さんとすればなり大隈伯は伊藤侯の風流韻事なく、未だ詩を作り文を品するの談あるを聞かずと雖も、伯の嗜好は反つて一種瀟脱の天地に存するものあり何ぞや、

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佐々木味津三

【右門捕物帖 へび使い小町】

名人右門存生の当時は、すこぶるこのたんざく流しが隆盛をきわめたもので、夏場の両国河岸を色どる唯一の催し物でした。文字からしてたんざく流しというくらいですから、むろん、たんざくを流すのが遊びの眼目ですが、しかしその流すたんざくなるものが尋常普通の品ではないので、仙骨(せんこつ)を帯びだしたご老体は風流韻事の感懐を託したみそひと文字、血のけの多いあで人たちはいわずと知れた恋歌。お時世がお時世ですから、むろんのことに歌の一つもよもうというほどの者は、いずれもみな上つ方ばかりです。

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中里介山

【大菩薩峠 白雲の巻】

「いや、どうも……恐縮です」
  白雲がいたく恐縮をしてしまいました。ことには、いかなれば旅絵師のやつがれ風情に、今日はこうして扶桑(ふそう)第一といわれる風景のところに、絶世の美人で、そうして一代の詩人に迎えられて、水入らずにお月見――美酒あり、佳肴(かこう)あり、毛氈(もうせん)あり、文台がある。山陽、東坡のやからすら企て及ばざる風流韻事の果報なり、と心を躍(おど)らせずにはおられません。
「時に、玉蕉先生、一つお願いがあるのですが」
「改まって、何でございます」


 風流韻事(ふうりゅういんじ)で、いい気持になりきった田山白雲が船を漕(こ)ぎ戻させて、宿へ帰って見ると、果して非常事がありました。  お松から一伍一什(いちぶしじゅう)を聞き取った上、改めて瑞巌寺まで行って問いただしてみると、だいそれた、この「つわ者隠し」の天井に賊が潜んでいたのを、張込んでいた仙台の手のものに捕まってしまった。

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Last updated : 2024/06/28