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不惜身命
ふしゃくしんみょう
ふじゃくしんみょう
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作家
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作品
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【風流仏】
心は冴に冴渡る不乱不動の精進波羅密、骨をも休めず筋をも緩めず、湧くや額に玉の汗、去りも敢ざる不退転、耳に世界の音も無、腹に饑をも補わず自然と不惜身命の大勇猛には無礙無所畏、切屑払う熱き息、吹き掛け吹込む一念の誠を注ぐ眼の光り、凄まじきまで凝り詰むれば、爰に仮相の花衣、幻翳空華解脱して深入無際成就一切、荘厳端麗あり難き実相美妙の風流仏仰ぎて珠運はよろ/\と幾足うしろへ後退り、ドッカと坐して飛散りし花を捻りつ微笑せるを、寸善尺魔の三界は猶如火宅や。珠運さま珠運さまと呼声戸口にせわし。
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【山の今昔】
実際古代に在りて、道もなき高山に登る困難を考えたならば、かかる労力奉仕者なしに十数日乃至数十日に亙る登山は、如何に不惜身命の行苦に心身を鍛錬した僧侶と
雖も、不可能ではなかったかと想われる。勿論この人々は何か事が起れば、主を打ち棄てて真先に逃げ帰ったかも知れないが、又恐る恐る昨日の処に引き返して其安泰を知ると共に、以前に倍して尊信と労力とを捧げることを惜まなかったであろう。
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【三太郎の日記 第三】
佛本生傳に從へば、釋迦は、その前生に於いて雪山童子であつたとき、半偈を聽かむがために身を投げ、薩埵王子であつたとき、餓虎にその身を供養したといふ。併し彼は苦行六年、林中に「羸痩して氣力あることなき」とき、「身に力を求めんが爲の故に」麤食を求めて自己の肉體に供養することを憚らなかつた。彼の肉體には將に涅槃を證せむとする使命が宿つてゐたからである。我等は道を求め道に奉仕せむがために、不惜身命でなければならない。同時に自己の中に道の證を求むる者は、亦極度にその身命を愛惜しなければならないのである。
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【宮本武蔵 円明の巻】
亀右衛門丞の母がいうには、
(三斎公様のお仁慈は、涙のこぼれるほど欣しい。一合のお扶持といえ、馬の沓を作る身には、勿体のうて、否応いえたことではない。――したがおん身達は、落魄れてこそおれ、新免伊賀守様の旧臣、藩士の上に坐りなされたお人達じゃ。それが一纒め千石で、欣んでお召抱えに応じたと聞えては、馬の沓を作っていたことが、真からさもしいことになろう。また、三斎公様の御恩にこたえて、
不惜身命の御奉公をなさる覚悟でもなければならぬこと、お救い米のような、六人一括げの扶持はそれゆえおうけいたされぬ。お身たちは出仕しなさろうとも、伜は出されませぬ)
で、一致して、断ると、藩の者はありのまま、君公へ伝えた。
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Last updated : 2024/06/28