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一言一句
いちごんいっく いちげんいっく |
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作家
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作品
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森鴎外 |
【渋江抽斎】
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太宰治 |
【未帰還の友に】
酒を飲むと、僕は非常にくだらない事でも、大声で言えるようになる。そうして、それを聞いている君たちもまた大いに酔っているのだから、あまり僕の話に耳を傾けていないという安心もある。僕は、君たちから僕のつまらぬ一言一句を信頼されるのを恐れていたのかも知れない。ところが、日本にはだんだん酒が無くなって来たので、その臆病な馬鹿先生は甚だ窮したというわけなのだ。
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太宰治 |
【葉】
「秋まで生き残されている蚊を哀蚊と言うのじゃ。蚊燻(かいぶ)しは焚(た)かぬもの。不憫(ふびん)の故にな」 ああ、一言一句そのまんま私は記憶して居ります。婆様は寝ながら滅入(めい)るような口調でそう語られ、そうそう、婆様は私を抱いてお寝になられるときには、きまって私の両足を婆様のお脚のあいだに挟んで、温めて下さったものでございます。
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夏目漱石 |
【艇長の遺書と中佐の詩】
殆んど自然と一致した私(わたくし)の少い声である。そこに吾人(ごじん)は艇長の動機に、人間としての極度の誠実心を吹き込んで、其(その)一言一句を真(まこと)の影の如く読みながら、今の世にわが欺(あざむ)かれざるを難有(ありがた)く思ふのである。
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薄田泣菫 |
【贋物】
「幾ら名器だつて何万円は高過ぎよう。それにそんな物を唯(たつた)一つ買つたところで、他(ほか)の持合せと調和が出来なからうぢやないか。」 といふと、吉兵衛は女と金の事しか考へた事のない頭を、勿体ぶつて一寸掉(ふ)つてみせた。そして一言一句が五十銭づつの値段でもするやうに、出(だ)し惜(をし)みをするらしく緩(ゆつく)りした調子で、 「なに高い事は無いさ、幾万円払つた骨董が宅(うち)の土蔵にしまひ込んであるとなると、外(ほか)に沢山(どつさり)あるがらくた道具までが、そのお蔭で万更(まんざら)な物ぢや無からうといふので、自然値(ね)が出て来ようといふものぢやないか。」 と言つて笑つたといふ談話(はなし)だ。
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平田禿木 |
【趣味としての読書】
それは我々自身の存在の緊密な一部として永久に留存し、力と慰安と快楽の確保された資源となるのであらうと彼は喝破してゐる。して、子爵自身に就いて云へば、この詩の方面に於ては、キーツ、テニソン、ブラウニングに精通し、特にウワアヅウワアスに至つては、早くからこれを愛誦し、その一言一句をも諳んじて、折に触れ事に接してこれを想ひ起し、回想記にも雑講にも随処にこれを引用してゐる。
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宮本百合子 |
【聟】
末娘のきよ子が、年が改まると二十(はたち)になる。不束者(ふつつかもの)だが、おひとを見込んでの相談がある。どうか聟になってやってはくれまいか。そういうのであった。 ひたむきのお豊の心持は、一言一句のうちに溢れ、詮吉は益々返答に窮した。
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南部修太郎 |
【猫又先生】
「然し、人間は感情の動物です。先生が不愉快な顏附で講義して下されば、聞いてゐる私達も不愉快です。先生はお笑いになつたこともありません、何時もぶりぶりしておいでです。そしてぢきに呶鳴つたり腹を立てたりなさるぢやありませんか。」私はひどく眞面目で、ひどく得意だつた。自分が Patriot でもあるやうな氣持になつてゐた。そして自分の一言一句がクラスの全體から力強く同感されてゐる快さに醉つてゐた。
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菊池寛 |
【真珠夫人】
「夫人は、弟にでも話すように、 それを、黙って聴いている美奈子の心の中に、不思議な不愉快さが、ムラ/\と |
岡本綺堂 |
【蜘蛛の夢】
娘はお春といって、芸妓に出ているときは小春といっていたそうです。小春が治兵衛と心中しないで、青大将を冥途の道連れじゃあ、あんまり可哀そうじゃありませんか。」 おかみさんは他人事(ひとごと)だと思って、笑いながら話していましたが、わたくしはその一言一句を聞きはずすまいと、一生懸命に耳を引っ立てていました。
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夢野久作 |
【冗談に殺す】
そう考えながらホンノ一二秒ばかり躊躇しているうちに、老刑事は又もニコニコ笑い出しながら、私の耳に口をさし寄せた。そうして私が身を退(ひ)く間もなく、ボソボソと囁き出したが、その云う事を聞いてみると、私が想像していたのと一言一句違わないといってもいい内容であった。 「……え
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原民喜 |
【壊滅の序曲】
県庁動員課の男の式辞や、校長の訓示はいい加減に聞流していたが、やがて、立派な国民服姿の順一が登壇すると、正三は興味をもって、演説の一言一句をききとった。こういう行事には場を踏んで来たものらしく、声も態度もキビキビしていた。
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田中英光 |
【オリンポスの果実】
日頃、太ッ腹な氏としては、珍(めずら)しく、話すのも汚(けが)らわしいといった激越(げきえつ)ぶりでした。ぼくにしてみれば、話の最中ふりかえって此方(こちら)をみる、クルウの先輩達(せんぱいたち)もいるし、それでなくとも、氏の一言一句が、ただ、ぼくに向っての叱声(しっせい)に聞え、かあッと、あがってしまうのでした。
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中里介山 |
【大菩薩峠 白骨の巻】
春日長次郎が、あらかじめ一座の成り立ちの口上を述べて、やがて予定の番組にとりかかる。この口上言いの風俗からして、観(み)る人の眼を新しくしたと見えて、その一言一句までが静粛に聞かれていることも、例(ためし)のないほどで、口上があってから、やがて、改めて観客は舞台の装飾から小屋の天井のあたりを、物珍しく見直したものです。
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甲賀三郎 |
【支倉事件】
神戸牧師にして見れば、証人として立った以上、事実を抂(ま)げて陳述する事は出来ない。又実際彼は殊更に事実を抂げて申述べる事をする人でもなければ出来る人でもない。所が神戸牧師の一言一句は直ちに支倉の運命に重大影響を及ぼすのである。事柄が事柄だし、こんな迷惑な証人は恐らく他にないだろう。
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島田清次郎 |
【地上 地に潜むもの】
彼女の崇厳な美しい燃える瞳は、彼の上にぴったり据えられ、弾力ある頬は熱情に紅(あか)らんでいる。ああ永遠なるひとときよ!力に豊かな、ややふるえた和歌子の音声が語ったその日の話は、微細な一言一句もはっきりと平一郎は憶えていた。 |
木下尚江 |
【火の柱】
けれど私の一身には一人探偵が附けてあるのです、取分け既に拘引(こういん)と確定しましたからは、今斯(か)くお話致し居りまする私の一言一句をさへ、戸の外に筆記して居るものがあるも知れないです、
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海野十三 |
【火星兵団】
千二少年が天狗岩で会った怪塔・怪物事件、怪人丸木が銀座でボロンを買うため殺人を犯した事件、それから千二の父親千蔵が、見て大怪我をしたという火柱事件などであるが、それらの事件を通じて、よく考えてみると、どうもこれは何かあるらしいのだ」と言って、課長は、あらためて、部下一同の顔を、ずっと見廻した。一座は、しいんとなって、課長の口から出て来る稀代の怪事件に関する、一言一句も聞きもらすまいとしている。 |
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