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一目瞭然
いちもくりょうぜん |
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作家
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作品
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夏目漱石 |
【虞美人草】
「夢窓国師や大燈国師になるから、こんな所を逍遥(しょうよう)する価値があるんだ。ただ見物したって何になるもんか」 「夢窓国師も家根(やね)になって明治まで生きていれば結構だ。安直(あんちょく)な銅像よりよっぽどいいね」 「そうさ、一目瞭然(いちもくりょうぜん)だ」 「何が」 「何がって、この境内(けいだい)の景色(けしき)がさ。ちっとも曲っていない。どこまでも明らかだ」
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与謝野晶子 |
【『新新訳源氏物語』あとがき】
よく原文を読めば文章の組立てが若菜から違っているのに心づくはずである。必ず「上達部(かんだちめ)、殿上人(てんじょうびと)」であったものが、「諸大夫(しょだいふ)、殿上人、上達部」になっている。昔の写本、木版本でない現今の活字本で見る人は一目瞭然(いちもくりょうぜん)とわかるはずである。文章も悪い、歌も少くなった。しかも佳作はきわめて少数である。紫式部の書いた前篇は天才的な佳作に富んでいた。後の作者のにも良い作はないのでもない。
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坂口安吾 |
【禅僧】
野性の持つあの大胆な、キラ/\となまめかしく光る流眄(ながしめ)を送り、お綱はくるりとふりむいた。さうして歩きだしたと思ふと、そんな婆あと遊ぶんぢやないよ、と言ひすて、野禽のやうにけたたましい笑ひ声をたてながら階段を調子をとつて駈け降りて行つた。面喰つた旅人よりも、禅僧の悩みの方が複雑であつたのは言ふまでもあるまい。お綱の奴が急に二階へとんとん登つて行つた意味は一目瞭然であるから、さかりのついた猫の声と同様のけたたましい笑ひ声を耳にしては、腸のよぢれる思ひがしたことであらう。
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太宰治 |
【眉山】
「いつか、羽織の裾(すそ)を背中に背負ったままの姿で、ここへお銚子を持って来た事があったけれども、あんなのは、一目瞭然(いちもくりょうぜん)、というのだ、文学のほうではね。どだい、あんな姿で、お酌(しゃく)するなんて、失敬だよ。」
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岸田劉生 |
【ばけものばなし】
何故徳川中期以前の幽霊に足があって、それ以後に足がなくなったかというと、徳川中期以後は絵画のみならず凡(すべ)ての芸事が実写的(写実的という語と少しちがう、何でも、本当らしくという、自然主義的というほどの意)になって行った。明治になって一層その傾向が強くなった。この事は芝居の大道具背景小道具等の変せんを見れば一目瞭然(いちもくりょうぜん)とするはずである。芝居にしても、荒唐無稽(こうとうむけい)な荒事(あらごと)から自然主義的な人情劇にかわり、明治大正には新劇という少しの芝居もしない自然そのままの芝居になってしまった。
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羽志主水 |
【監獄部屋】
「御同様サ、今日聞き込んだが、二、三日前に這入(へえ)って来たバツクの(東京下(くだ)りのハイカラ)生(なま)ッ白(ち)れエ給仕上りの野郎に聞いたんだが、議会で政府のアラ捜しより能の無え議員が、大分鋭く監獄部屋の件で内務大臣に喰って掛ったそうな、責任塞げにでも、役人に調査材料を集めに派遣(よこ)すのだとサ。何(いず)れ議会の開期中だから、左様遠くもあるめエ、然しネ、オイ、斯様(こんな)一目瞭然の事実を山の鬼共はどう糊塗(ごまか)す積かナア、一寸思案が付かねエがナア」
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蘭郁二郎 |
【白金神経の少女】
私は弱って 「さあ――」 と、口籠(くちごも)っていると 「わからんでしょう――。それは人間の方から考えるから解らんのですよ、さっきいったように、恋愛現象を電気現象と見て、電気の方から考えれば、数学的に一目瞭然たる結果が出て来るんですよ。――あなたはまだお若いし、これから大いに利用価値のある問題だ、よく聞いていて下さい」
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小栗虫太郎 |
【夢殿殺人事件】
「それは庵主、この太腿で、一目瞭然たるものなんですよ」法水が白々し気に云い返した。「内側へ捻れているでしょう。これで下肢が完全ですと、恰度馬の足のような形が見られるのです。
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夢野久作 |
【爆弾太平記】
爆弾船(ドンぶね)の連中が持っている一本釣の道具が、本物かそれとも胡麻化(ごまか)し用の役に立たないものかといったような鑑別が一眼で出来よう筈がない。とりあえず糸(テグス)を引切(ひっき)ってみればタッタ今まで使ったものかどうかは吾々の眼に一目瞭然なんだが……爆弾船(ドンぶね)に無くてはならぬ巻線香だって、イザという時に海に投げ込めばアトカタもない。
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国枝史郎 |
【鸚鵡蔵代首伝説】
「菊弥! ナーニ、本名を云やアお菊か菊女だろう! 手前、女だからなア! うふ、いかに男に姿やつしていようと、この綱五郎の眼から見りゃア――そういう俺らア男さ! ナニ『醒ヶ井のお綱』だって! 箆棒めえ、そいつア土蔵破(むすめし)としての肩書だア。……この綱五郎の眼から見りゃア、一目瞭然、娘っ子に違えねえ!」
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辻潤 |
【ふもれすく】
あの中では、たしかに大杉君は僕を頭から踏みつけている。充分な優越的自覚のもとに書いていることは一目瞭然である。それにも拘わらず僕はとかく引き合いに出される時は、大杉君を蔭でホメているように書かれる。
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直木三十五 |
【大衆文芸作法】
我々の個人的な欲望、要求が如何に社会的、科学的外面生活に圧迫され、影響され来っているかは、諸君が一度諸君自身の生活を振りかえれば一目瞭然たるものがあるであろう。
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田畑修一郎 |
【医師高間房一氏】
その他の所、町場と近在については、この地域での大石医院の勢力は抜くべからざるものだし、又若しこれを強ひて侵さうとしたらそれはかへつて自分の身の破滅を来すやうなものだとは彼にも一目瞭然であつた。
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谷譲次 |
【踊る地平線 テムズに聴く】
これだけの分量の水が靴を満たすためには、一足の靴ぜんたいはもちろん、その周囲の敷物一体が、より多分の水量を受けたものであろうことは、ごく自然に考えざるを得ない。そして、そんなにたくさん水がこぼれたとしたら、靴のなか以外に、一目瞭然としてそこらにあとが残っているはずだし、なによりも、靴とそのまわりへそれほど水を落しておいて、過失にしろ何にしろ、人一ばい眼と耳と口の働く下宿のおかみなる人物が、それに気がつかずに、靴に水を充満させて放任しておくということは、いうまでもなくちょっと肯定しにくい。
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佐々木味津三 |
【右門捕物帖 闇男】
あば敬のけんまく権柄、当たるべからざる勢いです。どなり、しかり、当たり散らしながら死骸を見調べると、小娘は年のころ十三、四、手甲(てっこう)、脚絆(きゃはん)、仕着せはんてんにお定まりの身ごしらえをして、手口は一目瞭然(りょうぜん)、絞殺にまちがいなく、かぶっている菅笠(すげがさ)のひもがいまだになおきりきりと堅く首を巻いたままでした。
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牧野富太郎 |
【植物一日一題】
右にてインドのパンヤがどの樹にあたっているかが明かによく分るであろう。したがって従来我が学者の誤認もまた一目瞭然であろう。
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紫式部 |
【源氏物語 若菜(下)】
昔からの恋がようやく遂げられたのではあるが、なお苦しい思いに悩み続けていることが、文学的に見ておもしろく書かれてあって、同情は惹(ひ)くが、こんな関係で書きかわす手紙には人目に触れた時の用意がかねてなければならぬはずで、露骨に一目瞭然(いちもくりょうぜん)に秘密を人が悟るようなことはすべきでないものをと、院はお思いになり、りっぱな男ではあるが、こうした関係の女への手紙の書き方を知らない、落ち散ることも思って、昔の日の自分はこれに類する場合も文章は簡単にして書き紛らしたものであるが、そこまでの細心な注意はできないものらしいと、衛門督(えもんのかみ)を軽蔑(けいべつ)あそばされるのであった。
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相馬愛蔵・相馬黒光 |
【一商人として ――所信と体験――】
そこで精一郎を呼んでいろいろ質問してみると、倉庫と工場、販売と仕入れとの間に連絡もなければ明確な計算もなく、至って漠然たるものでした。それから精一郎と相談をして、主人の留守中に完全に整理し、帰朝の主人に一目瞭然の帳簿を呈して留守中の報告をしたい旨を希望して、尽力を頼みました。
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