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一陽来復
いちようらいふく |
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作家
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作品
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與謝野寛 |
【素描】
おれは朝から寝巻の KIMONO のまヽで絵具いぢりを続けて居た。午飯も外へ食ひに出ないでホテルの料理を部屋へ運ばせて済ませた。まづい物を描いて EXTATIQUE な気分になれるおれの愚鈍さと子供らしさとを自分ながら可笑しく思はないで居られないが、またこの子供らしさが久しく沈んで灰色化(グリゼエイエ)して居るおれの LA VIE の上に近づいた一陽来復の兆(シイニユ)のやうにも思はれる。
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坂口安吾 |
【我が人生観 (八)安吾風流譚】
翌朝、目を覚すと、私の全身はいたるところ大きなコブをつけたように腫れあがり、殆ど身動きもできなかった。砂糖や塩や味噌は原形を失い、ドロドロになっ ていたが、それらが私の一命を助けてくれたものとして、なんとも有難く、いじらしく見えた。一日二日は身動きできず、そのドロドロをなめながら、ケダモノ の穴ゴモリのような気持で一陽来復を待っていたのであった。
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紫式部 |
【源氏物語 末摘花】
お訪(たず)ねする人などはその時代から皆無と いってよい状態だったのだから、今になってはまして草深い女王の邸へ出入りしようとする者はなかった。その家へ光源氏の手紙が来たのであるから、女房らは 一陽来復の夢を作って、女王に返事を書くことも勧めたが、世間のあらゆる内気の人の中の最も引っ込み思案の女王は、手紙に語られる源氏の心に触れてみる気 も何もなかったのである。
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太宰治 |
【新釈諸国噺】
世の中は、陰陽、陰陽、陰陽と続いて行くんだ。仕合せと不仕合せとは軒続きさ。ひでえ不仕合せのすぐお隣りは一陽来復の大吉さ。ここの道理を忘れちゃいけない。来年は、これあ何としても大吉にきまった。その時にはお前も、芝居の変り目ごとに駕籠(かご)で出掛けるさ。それくらいの贅沢(ぜいたく)は、ゆるしてあげます。
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平野萬里 |
【晶子鑑賞】
天地の薄墨の色春来れば塵も余さず朱に変りゆく
一陽来復の心持を色彩を以て現はせば、こんなものであらう。塵も余さずと云つて万有にしみ通る春の恩沢をあらはし、然らざれば平板に陥る処を脱出させた。 |
寺田寅彦 |
【映画雑感(III)】
いちばんおしまいの場面で、淪落(りんらく)のどん底に落ちた女が昔の友に救われてその下宿に落ち着き、そこで一皿(さら)の粥(かゆ)をむさぼり食った後に椅子(いす)に凭(よ)ってこんこんとして眠る、その顔が長い間の辛酸でこちこちに固まった顔である。それが忽然(こつぜん)と して別の顔に変わる。十年も若返ったような顔で目にはいっぱい涙がたまっている。堅く閉じた心の氷がとけて一陽来復の春が来たのである。そうして静かにこ の一編の終末がフェードアウトするのである。この終末の取り扱い方にどこかフランス芸術に共通な気のきいた呼吸を見ることができるような気がする。
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中里介山 |
【大菩薩峠 小名路の巻】
先生が唯一の好敵手であった鰡八大尽(ぼらはちだいじん)は、あの勢いで洋行してしまったし、それがために、隣の鰡八御殿は急にひっそりして、道庵の貧乏屋敷に一陽来復の春が来たのはおめでたいが、単にそれだけの嬉しまぎれに、ほうつき歩くものとも思われません。
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高神覚昇 |
【般若心経講義】
あの花を咲かせた桜も、新しい芽を出させた桜も、やがては、また花を散らす桜です。スッカリ枯れ木のようになってしまう桜です。所詮(しょせん)は、「散る桜、のこる桜も散る桜」です。だが、一たび冬が去り、春が来れば、一陽来復、枯れたとみえた桜の梢(こずえ)には、いつの間にやら再び綺麗(きれい)な美しい花をみせています。かくて年を迎え、年を送りつつ、たとい花そのものには、開落はありましても、桜の木そのものは、依然として一本の桜です。
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ビクトル・ユーゴー |
【レ・ミゼラブル LES MISERABLES 第五部 ジャン・ヴァルジャン】
草の間にはひな菊や金鳳花(きんぽうげ)がかわいく咲きそめ、年内の白い蝶(ちょう)は始めて飛び出し、永遠の婚礼の楽手たる春風は、古い詩人らが一陽来復と呼んだ黎明(れいめい)の大交響曲の最初の譜を樹木の間に奏していた
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