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一獲千金/一攫千金
いっかくせんきん |
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作家
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作品
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岡本かの子 |
【バットクラス】
しかし彼の生活がかさむにつれ、段々自分極めで危険率の多い投資に関係し増収を図るようになった。フランス人のブローカーが彼の居間に自由に出入して殖民地の一攫千金的紙上利益をタイプライターが創造しているだけの計画書(プラン)を示し、彼に荘重な約束手形の署名をさせるようになった。
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石川啄木 |
【初めて見たる小樽】
予もまた今年の五月の初め、漂然(ひょうぜん)として春まだ浅き北海の客となった一人である。年若く身は痩(や)せて心のままに風と来り風と去る漂遊の児であれば、もとより一攫千金(いっかくせんきん)を夢みてきたのではない。予はただこの北海の天地に充満する自由の空気を呼吸せんがために、津軽の海を越えた。自由の空気! 自由の空気さえ吸えば、身はたとえ枯野の草に犬のごとく寝るとしても、空長しなえに蒼(あお)く高くかぎりなく、自分においていささかの遺憾(いかん)もないのである。
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泉鏡花 |
【木の子説法】
――そこで、心得のある、ここの主人(あるじ)をはじめ、いつもころがり込んでいる、なかまが二人、一人は検定試験を十年来落第の中老の才子で、近頃はただ一攫千金(いっかくせんきん)の投機を狙(ねら)っています。
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島崎藤村 |
【家(下巻)】
「榊君――小泉の叔父の近所にネ、そもそも洋食屋を始めたという家が有る。建物なぞは、古い小さなものサ。面白いと思うことは、僕の阿爺(おやじ)が昔流行(はや)った猟虎(らっこ)の帽子を冠(かぶ)って、酒を飲みに来た頃から、その家は有るんだトサ。そこへ叔父を誘って行こうじゃないか……一夕昔を忍ぼうじゃないか」 「そんなケチ臭いことを言うナ。そりゃ、今日の吾儕(われわれ)の境涯では、一月の月給が一晩も騒げば消えて了うサ。それが、君、何だ。一攫千金(いっかくせんきん)を夢みる株屋じゃないか――今夜は僕が奢(おご)る」 二人は歩きながら笑った。
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岸田國士 |
【劇場と作者】
一興行二時間半乃至三時間半、その間に、一作家の一作品を上演する。それが原則であるから、劇場主と作者と主役俳優との関係は頗る緊密である。一つの出し物が「当れ」ば幾月でも打ち続ける。歩合でふくらむ作者の懐ろ加減想ふべしである。 たゞ、営利を目的としない劇場では、交互上演法によつて、出し物を毎日入れ替へる。一攫千金を夢みる作者は、かう云ふ劇場をあまり悦ばない。
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石橋忍月 |
【罪過論】
此源因は即ち広意に於ける罪過と同一意義なり。(以下に用ふる罪過の語は衝突(コンフリクト)と同一なりと思ひ玉へ)世に偶然の出来事なし、豈(あ)に罪過なきの結果あらんや。手を相場に下して一攫千金(いつくわくせんきん)の利を得るも、志士仁人が不幸数奇なることあるも、悪人栄えて善人亡(ほろ)ぶることあるも、尊氏(たかうぢ)が征夷(せいい)大将軍となるも、正成(まさしげ)が湊川(みなとがは)に戦死するも、総て何処(いづこ)にか罪過なくんばあらず。罪過なくんば結果なし。
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山本勝治 |
【十姉妹】
行逢った人達は、天気の挨拶より旱りの噂より先に十姉妹の話だった。それは唯、不景気の病的な反動だとだけでとり澄ましていられなかった。個人を利己的に歪めて一攫千金を夢見させる事に於て、賭博に譲らない蠱惑(こわく)を持っていた。……
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宮本百合子 |
【猫車】
国広屋の一つの気風でもあるのだが順平は、いつも先へゆきすぎ早すぎる自分の思惑を、土地柄にあわせてゆこうとはせず、同じ損でも、思い付きが進みすぎていてする損は男のすたれではないと云った。そして、絶えず何か一攫千金の思い付きがありそうに、或はそれが実現するときでもありそうな気配が順平の立居振舞からにおっていて、家のもの皆がそれにつられ、常に半信半疑ながらもその間に益々茂って行く屋敷の雑草に、痛切な傷心も誘われずお縫も育って来た。
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夢野久作 |
【東京人の堕落時代】
職を失った人々は何という事なしに手軽な飲食店を開いた。中には一攫千金を極め込んだものも居る。同時に途方に暮れた弱い女たちは、何故という事なしにその唯一の財産を大道に晒(さら)して売らなければならなかった。
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