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一喜一憂
いっきいちゆう |
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作家
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作品
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夏目漱石 |
【思い出す事など】
三世(さんぜ)に亘(わた)る生物全体の進化論と、(ことに)物理の原則に因(よ)って無慈悲に運行し情義なく発展する太陽系の歴史を基礎として、その間に微(かす)かな生を営む人間を考えて見ると、吾らごときものの一喜一憂は無意味と云わんほどに勢力のないという事実に気がつかずにはいられない。
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二葉亭四迷 |
【平凡】
今になって考えて見ると、無意味だった。何の為に学校へ通ったのかと聞かれれば、試験の為にというより外はない。全く其頃の私の眼中には試験の外に何物も無(なか)った。試験の為に勉強し、試験の成績に一喜一憂し、如何(どん)な事でも試験に関係の無い事なら、如何(どう)なとなれと余処に見て、生命の殆ど全部を挙げて試験の上に繋(か)けていたから、若し其頃の私の生涯から試験というものを取去ったら、跡は他愛(たわい)のない烟(けむ)のような物になって了う。
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太宰治 |
【人間失格】
ただ焼酎を飲んで酔っては、わずかに卑屈な誘導訊問(じんもん)みたいなものをおっかなびっくり試み、内心おろかしく一喜一憂し、うわべは、やたらにお道化て、そうして、それから、ヨシ子にいまわしい地獄の愛撫(あいぶ)を加え、泥のように眠りこけるのでした。
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太宰治 |
【津軽】
その作家の作品の大半をまた読み直してみて、うまいなあ、とは思つたが、格別、趣味の高尚は感じなかつた。かへつて、エゲツナイところに、この作家の強みがあるのではあるまいかと思つたくらゐであつた。書かれてある世界もケチな小市民の意味も無く気取つた一喜一憂である。
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福沢諭吉 |
【瘠我慢の説 瘠我慢の説】
また時としては旧時の惨状(さんじょう)を懐(おも)うて慙愧(ざんき)の念を催(もよ)おし、一喜一憂一哀一楽、来往(らいおう)常(つね)ならずして身を終るまで円満(えんまん)の安心(あんしん)快楽(かいらく)はあるべからざることならん。
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下村湖人 |
【次郎物語 第一部】
すべての人が、今や彼と彼の母にとって親しみ深い人のように思える。それはみんなの眼が母の寝顔に集中して、そのかすかな一つの動きにも一喜一憂しているからばかりではない。彼はかれ自身で知らない間に、彼自身の心から永い間の猜疑心(さいぎしん)をとりのぞいていたのである。
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原民喜 |
【廃墟から】
私が広島で暮したのは半年足らずで顔見知も少かったが、嫂や妹などは、近所の誰彼のその後の消息を絶えず何処(どこ)かから寄せ集めて、一喜一憂していた。
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宮本百合子 |
【獄中への手紙 一九三八年(昭和十三年)】
そのために、箇々の問題の出されるごとに、一生懸命それにしがみついて、答えつつ、基本的に見れば、受身で相対的で、それによって現われる一つ一つの表情に、実に現象的に一喜一憂して来たと思う。実にその点では、これまでの自分の生涯に嘗て経験しなかった一喜一憂であり、毎日顔を見るという感性の刺戟が一層それを増し、きのうの顔、きょうの顔、きのうの手紙、きょうの手紙、それらの間に揉まれた。
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