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一切合切/一切合財
いっさいがっさい 「一切」と「合切」という近い意味の言葉を重ね、「一切」を強めた語で、「全部」「残らず」「すべて」ということ。 |
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作家
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作品
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太宰治 |
【津軽】
さうしてSさんの如く、実質に於いては、到れりつくせりの心づかひをして、さうして何やらかやら、家中のもの一切合切持ち出して饗応しても、ただ、お客に閉口させるだけの結果になつて、かへつて後でそのお客に自分の非礼をお詫びしなければならぬなどといふ事になるのである。
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高村光雲 |
【幕末維新懐古談 佐竹の原へ大仏を拵えたはなし】
そうして、胎内に一つの古物見立展覧場を作るとして、色々の品物を買いこむのだが、この方には趣向を主として実物には重きを置きませんからまず百円の見積り……足りない所は各自(てんで)の所持品を飾っても間に合わせるという考えです。それで何から何まで一切合切での総勘定が三百円で立派にこの仕事は出来上がるというのでありました。
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高村光太郎 |
【顔】
顔は誰でもごまかせない。顔ほど正直な看板はない。顔をまる出しにして往来を歩いている事であるから、人は一切のごまかしを観念してしまうより外ない。いくら化けたつもりでも化ければ化けるほど、うまく化けたという事が見えるだけである。一切合切投げ出してしまうのが一番だ。それが一番美しい。
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種田山頭火 |
【行乞記 仙崎】
こゝの主人公――押入聟さん――は私の放浪時代に度々同宿して打解けた飲友達だ、久振に一杯やらうといふので一升買つた、酔うて唄うて踊つて――誰も彼もいつしよになつて――近来の大散財なり。前後不覚になつて、どうして寝床にはいつたやら、いつ寝たやら、一切合切不明なり、しかも些の不都合なし、善哉々々。 |
長谷川時雨 |
【江木欣々女史】
その名箏(めいそう)も、あの大正十二年の大震災に灰燼(かいじん)になってしまった。そればかりではないあの黒い門もなにもかも、一切合切(いっさいがっさい)燃えてしまったのだ。軽井沢の別荘から沓掛(くつかけ)の別荘まで夏草を馬の足掻(あが)きにふみしかせ、山の初秋の風に吹かれて、彼女が颯爽(さっそう)と鞭(むち)をふっていたとき、みな灰になってしまった。
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坂口安吾 |
【明治開化 安吾捕物 その四 ああ無情】
「旦那がお見えになると二階が寝室ですが、荒巻さんと御一緒の時は、そこの離れのような小部屋でございます。玄関からはどこよりも離れていますし、雨戸をあけると、誰にも見られず裏木戸へ抜けられます。荒巻さんは帽子も靴も荷物も一切合切この離れへ持ちこんで、イザと云えば逃げだす用意をととのえて、おやすみになるんですよ」
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三好十郎 |
【ぼたもち】
大事なこたあ、これが一番だと思つたら――これが一番ホントだと見きわめ附いたら、ほかのグジヤ/\した事、一切合切、スペツとかなぐり捨てゝ、そいつをやる事だ。
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中里介山 |
【生前身後の事】
その古機械を三十円ばかりで買って据えつけ、それへ自分でインキつけまでして刷り出したものである、組から刷から活字の買入、紙の買出しに至るまで一切合切自分でやって見たのだが、この道楽は実に面白くて面白くて堪らない程であった、
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国枝史郎 |
【銅銭会事変】
――それから田沼に懇望され、その妾(めかけ)になろうとしたこと、可愛い恋人と切れたこと、妾(めかけ)になることが止めになったこと、今日呼び出しを掛けたところ、恋人が昨日屋敷を出たきり、今に帰って来ないこと――一切合切打ち明けた。
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牧逸馬 |
【浴槽の花嫁】
人間は多くの場合自分の死期を知らないものだから、これは無理もない――その女の身についているものは、なんによらず一切合切(がっさい)もらうことにしておいて、いっこう差閊(さしつか)えない。
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葉山嘉樹 |
【海に生くる人々】
彼は、「秘密」の彼の上陸の前には、対内的にのみ、船長から、人間に変わるのであった。彼は何もかもが、一切合切、妻のこと、子供のこと、その他で持ち切っていた。
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林芙美子 |
【放浪記(初出)】
古新聞を焚いて茶をわかしていると、暗澹とした気持ちになって、一切合切が、うたかたの泡より儚なく、めんどくさく思えて来る。
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徳冨健次郎 |
【みみずのたはこと】
自家(うち)のお春っ子お兼っ子に一貫目(いっかんめ)何銭の掻(か)き賃をくれて、大急ぎで掻いた繭を車に積んで、重い車を引張って此処其処相場(そうば)を聞き合わせ、一銭でも高い買手をやっと見つけて、一切合切(いっさいがっさい)屑繭(くずまゆ)まで売ってのけて、手取(てどり)が四十九円と二十五銭。夜の目も寝ずに五十両たらずかと思うても、矢張(やはり)まとまった金だ。持て帰って、古箪笥(ふるだんす)の奥にしまって茶一ぱい飲むと直ぐ畑に出なければならぬ。
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坂口安吾 |
【日本文化私観】
いわば、事実に於て、彼の精神は「天下者」であったと言うことが出来る。家康も天下を握ったが、彼の精神は天下者ではない。そうして、天下を握った将軍達は多いけれども、天下者の精神を持った人は、秀吉のみであった。金閣寺も銀閣寺も、凡そ天下者の精神からは縁の遠い所産である。いわば、金持の風流人の道楽であった。秀吉に於ては、風流も、道楽もない。彼の為す |
織田作之助 |
【勧善懲悪】
序でに言って置くが、この「渋い顔」という言葉に限らず、少なくともこのあたり「真相をあばく」の筆者は重大な手落ちをやっている。この支店長募集をすべてお前の頭からひねり出したように書いているが、また、そうして置く方が、お前の真相をあばく効果を強めることにもなるわけだろうが、むろんここへはおれの名を書きそえるところだった。いや、もっと正確を期するなら、一切合財おれが下図を描いたものとすべきだった。
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林芙美子 |
【新版 放浪記】
お上さんが、声を |
中里介山 |
【大菩薩峠 恐山の巻】
米友が、ついに堪りかねて、憤然として弁信のお喋りの中へ「わからねえ、わからねえ、お前の言うことは |
夢野久作 |
【暗黒公使】
けれども、それよりももっと大きな眼を |
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