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一妻多夫
いっさいたふ |
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作家
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作品
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芥川龍之介 |
【第四の夫から】
謹厳なる君は僕のように、一妻多夫に甘んずるものを軽蔑(けいべつ)せずにはいられないであろう。が、僕にいわせれば、あらゆる結婚の形式はただ便宜(べんぎ)に拠(よ)ったものである。一夫一妻の基督(キリスト)教徒は必ずしも異教徒たる僕等よりも道徳の高い人間ではない。のみならず事実上の一妻多夫は事実上の一夫多妻と共に、いかなる国にもあるはずである。実際また一夫一妻はチベットにも全然ない訣(わけ)ではない。ただルクソオ・ミンズの名のもとに(ルクソオ・ミンズは破格の意味である。)軽蔑されているだけである。ちょうど僕等の一妻多夫も文明国の軽蔑を買っているように。
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福沢諭吉 |
【女大学評論】
扨又結婚の上は仮令い命を失うとも心を金石の如くに堅くして不義するなとは最も好き教訓にして、男女共に守る可き所なれども、我国古来の習俗を見れば、一夫多妻の弊は多くして、一妻多夫の例は稀なるゆえ、金石の如き心は特に男子の方にこそ望ましけれ。然るに此男子をば余処(よそ)にして独り女子を警しむ、念入りたる教訓にして有難しとは申しながら、比較的に方角違いと言う可きのみ。
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南方熊楠 |
【十二支考 馬に関する民俗と伝説】
もし同姓婚が絶対に繁殖の力乏しきものなら、最初の動植が同姓にして如何ぞ無数の後胤を遺し得んや。それからインドで一夫多妻の家の妻と一妻多夫の家の妻とが父系統母系統の優劣について大議論したのを読んだが今ちょっと憶い出さぬ。
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中里介山 |
【大菩薩峠 農奴の巻】
彼が高唱する出鱈目(でたらめ)のその多くは、突飛であり、お愛嬌であるに過ぎないが、彼の口から、一夫多妻、一妻多夫論の一端を高唱せしむるに至っては、断じて、お愛嬌なる出鱈目の一種としてのみ看過せらるべきではない。
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