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一世一代
いっせいちだい |
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作家
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作品
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夏目漱石 |
【吾輩は猫である】
あなたは三十三間堂も御嫌いか知らないが、私に聞かせるのだからいっしょに行って下すっても宜(い)いでしょうと手詰(てづめ)の談判をする。御前がそんなに行きたいなら行っても宜(よ)ろしい、しかし一世一代と云うので大変な大入だから到底(とうてい)突懸(つっか)けに行ったって這入(はい)れる気遣(きづか)いはない。
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夏目漱石 |
【野分】
道也先生に逢(あ)って、実はこれこれだと云ったら先生はそうかと微笑するだろう。あす立ちますと云ったらあるいは驚ろくだろう。一世一代の作を仕上げてかえるつもりだと云ったらさぞ喜ぶであろう。――空想は空想の子である。
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芥川龍之介 |
【続澄江堂雑記】
ゲエテをワイマアルの宮廷から退(しりぞ)かせたのはフオン・ハイゲンドルフ夫人である。しかも又シヨオペンハウエルに一世一代の恋歌(れんか)を作らせたのもやはりこのフオン・ハイゲンドルフ夫人である。
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太宰治 |
【新ハムレット】
こんな無分別なお若い人たちのなさる事を黙って傍観していると、藪(やぶ)から蛇(へび)みたいな、たいへんな結果が惹起(じゃっき)するかも知れぬ、ここはポローニヤス、一世一代の策略、または忠誠の置土産、躊躇(ちゅうちょ)せずに若い人たちの疑惑を支持し、まっさき駈(か)けて、正義を叫び、あのような甘ったるい朗読劇を提唱し、
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坂口安吾 |
【裏切り】
小夜子サンがだんだん深間へはまりそうになったので、ここにヤブから棒にとんでもないことが突発しました。それはこれにたまりかねたトオサンが一世一代の沈思黙考のあげく実に突如として愛の告白に及んだことです。
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北村透谷 |
【三日幻境】
ふところに収めたる当世風の花簪(はなかんざし)、一世一代の見立(みたて)にて、安物ながらも江戸の土産(みやげ)と、汗を拭きふき銀座の店にて購(か)ひたるものを取出して、昔日(むかし)の少娘(こむすめ)のその時五六歳なりしものゝ名を呼べば、早や寝床に入れりと言ふ、
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泉鏡花 |
【取舵】
「これはどういう事実だと聞くと、長年この渡(わたし)をやッていた船頭が、もう年を取ッたから、今度息子(むすこ)に艪(ろ)を譲ッて、いよいよ隠居(いんきょ)をしようという、この日(ひ)が老船頭、一世一代(いっせいちだい)の漕納(こぎおさめ)だというんだ。面白(おもしろ)かろう。」
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幸田露伴 |
【五重塔】
黙つて居よ余計なと叱り飛ばして夜の眼も合さず、工夫に工夫を積み重ね、今度といふ今度は一世一代、腕一杯の物を建てたら死んでも恨は無いとまで思ひ込んだに、悲しや上人様の今日の御諭し、道理には違ひない左様も無ければならぬ事ぢやが、此を譲つて何時また五重塔の建つといふ的(あて)のあるではなし、
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下村湖人 |
【次郎物語 第四部】
次郎にはまるでわけがわからなかった。少佐自身としては、そんな表現を用いたことが何か哲学者めいた、一世一代の思いつきのように思え、また、それがきっと次郎の急所をつくにちがいないと信じ、内心大得意でいたが、次郎にしてみると、迷信などという言葉は、あまりにも自分とは縁遠い言葉だったのである。
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徳田秋声 |
【黴】
ぼっとしたような目には、桟敷(さじき)に並んでいる婦人たちの美しい姿がだんだん晴れやかに映っていた。お銀は十年ほど前に、叔父と一緒に一世一代だという団十郎の熊谷(くまがい)を見てから、ここへ入るようなこともなかった。
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宮本百合子 |
【獄中への手紙 一九四三年(昭和十八年)】
今年のお誕生日は、何をさし上げようかと思っていたのよ。去年は眼もろくに見えず、字もかけず、頭は妙で、その代り一世一代に献詩いたしました。今年は正気でしょう?
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林不忘 |
【丹下左膳 日光の巻】
「さすがは柳生じゃ。世を捨てた名人を探しだして、一世一代の作を残させるとは、このたびの日光造営は、おおいに有意義であった。その作阿弥の神馬とともに、柳生の名も、ながく残るであろう……と上様からおほめ言葉のひとつも、いただこうというもので」
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豊島与志雄 |
【反抗】
すると、お清の奴、さんざん焦(じ)らした揚句に、一時間も奥に引込んで、自分一人でかそれとも誰かの智恵をかりてか、そこの所は分らないがね、一世一代の名句をひねり出したのさ。
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中里介山 |
【大菩薩峠 山科の巻】
よって念のために、大菩薩峠の「農奴の巻」までさかのぼって、それを検討してみますと、弁信法師は、長浜から竹生島(ちくぶじま)へ渡って、一世一代の琵琶を奉納せんと志したが、どう間違ってか、竹生島ならぬ多景島(たけじま)(竹島)に漂着してしまいました。
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海野十三 |
【浮かぶ飛行島】
ああ川上機関大尉! と叫んだのは、杉田が早くもこの場の空気を感づき、自分が上官の首実検に使われているなと知って、一世一代の大芝居をうったのであった。
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牧野信一 |
【バラルダ物語】
ガラドウが今にも私の許へ鎧櫃を瞞しとる目的で、一世一代の智謀をふるつた(と彼が云つた由。)狐となつてやつて来る筈だから決して化されてはならぬといふ注進であつた。
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佐々木味津三 |
【右門捕物帖 千柿の鍔】
弓を取りに参った辰九郎に争うべき筋があるとも思われず、専介とても辰九郎にいどみかかるべき節があろうとも思われぬのに、かく相討ち遂げているとは気がかりゆえ、じゅうぶん心いたして、一世一代の知恵ふるってみい!」
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久生十蘭 |
【顎十郎捕物帳 初春狸合戦】
「どうも、弱った、弱った」仙波阿古十郎、一世一代の大しくじり。喰い意地を張ったばかりに、女賊の小波にうまくしてやられ、金蔵破りの張り番をしたという眼もあてられぬ経緯(いきさつ)。 |
菊池寛 |
【小学生全集に就て(再び)】
「文藝春秋」の愛読者諸君も此の仕事は仕事としては、僕が一世一代の仕事であり、文藝春秋社の浮沈の分るゝころでもあるから、ぜひ充分なる理解と声援との下に、小学生の子女弟妹のある方は、もれなく予約していたゞきたいと思ふ。
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