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一触即発
いっしょくそくはつ |
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作家
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作品
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太宰治 |
【桜桃】
それが導火線であった。この夫婦は既に述べたとおり、手荒なことはもちろん、口汚(くちぎたな)く罵(ののし)り合った事さえないすこぶるおとなしい一組ではあるが、しかし、それだけまた一触即発の危険におののいているところもあった。両方が無言で、相手の悪さの証拠固めをしているような危険、一枚の札(ふだ)をちらと見ては伏せ、また一枚ちらと見ては伏せ、いつか、出し抜けに、さあ出来ましたと札をそろえて眼前にひろげられるような危険、それが夫婦を互いに遠慮深くさせていたと言って言えないところが無いでも無かった。
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中島敦 |
【光と風と夢】
一八八九年の三月、アピア湾内には、米艦二隻英艦一隻が独艦三隻と対峙(たいじ)し、市の背後の森林にはマターファの率いる叛軍が虎視眈々(たんたん)と機を窺(うかが)っていた。方(まさ)に一触即発のこの時、天は絶妙な劇作家的手腕を揮(ふる)って人々を驚かせた。
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中里介山 |
【百姓弥之助の話 第一冊 植民地の巻】
武装した日本軍隊は身の毛のよだつほど厳粛壮烈なものである、威力が充実し精悍の気がみなぎって居る、殊にこれから戦地に向うと云う完全武装した軍気の中には触るるもの皆砕くと云う猛力が溢れ返って居る、村落駅々から送られて出る光景には慥(たし)かに一抹の哀々たる人間的離愁がただよっていないという事はない。すでに斯うして武装した軍隊を見ると秋霜凜冽(しゅうそうりんれつ)、矢も楯もたまらぬ、戦わざるにすでに一触即発の肉弾になりきっている。
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小栗虫太郎 |
【人外魔境 水棲人(インコラ・パルストリス)】
「それは、フォルモサの密林の北をながれて、ながらくパラグァイ、アルゼンチン両国の境界争いの場所だったことは、諸君も知っておることだろう。たがいに、川の南北に陣どって堡塁(フオルチネス)をきずき、いまなお一触即発の形勢にある。では、その境界争いはなんのために起ったか。貪ろうとしたのか? それとも、条文の不備か? 何のためかというに、それは、このピルコマヨという化物のような、じつに不可解千万(せんばん)な川のために起っている。
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