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一得一失
いっとくいっしつ
作家
作品

太宰治

【虚構の春】

私は、いま、取りかえしのつかない事がらを書いている。人は私の含羞(はじらい)多きむかしの姿をなつかしむ。けれども、君のその嘆声は、いつわりである。一得一失こそ、ものの成長に追随するさだめではなかったか。永い眼で、ものを見る習性をこそ体得しよう。

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福沢諭吉

【新女大学】

現在の下女下男を宜しからずと思わば、既往数年の事を想起し、其数年の間に如何なる男女が果して最上にして自分の意に適したるや、其者は誰々と指を屈したらば、おの/\一得一失にして、十分の者は甚だ少なかる可し。既往斯(かく)の如くなれば現今も斯の如し。将来も亦(また)斯の如くならんと勘弁す可し。婢僕(ひぼく)の過誤失策を叱るは、叱らるゝ者より叱る者こそ見苦しけれ。主人の慎しむ可き所なり。

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正岡子規

【墨汁一滴】

東京の子は活溌でおてんばで陽気な事を好み田舎の子は陰気でおとなしくてはでな事をはづかしがるといふ反対の性質が既に萌芽(ほうが)を発して居る。かういふ風であるから大人に成つて後東京の者は愛嬌(あいきょう)があつてつき合ひやすくて何事にもさかしく気がきいて居るのに反して田舎の者は甚だどんくさいけれどしかし国家の大事とか一世の大事業といふ事になるとかへつて田舎の者に先鞭(せんべん)をつけられ東京ツ子はむなしくその後塵(こうじん)を望む事が多い。一得一失

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直木三十五

【南国太平記】

「然し、島津の家憲では、御世子が二十歳になられたなら、家督をお譲り申すのが常法でござりませぬか」
 袋持は、調所に、遠慮のない口調で、いい放った。
「幕府も、いろいろ手を延して、早く、斉彬公の世にしてと、阿部閣老あたり、それとなく匂わしておるが――一得一失でのう」
一得一失とは」
「お前には判らん」
 百城が廊下へ膝をついて
「まだ差立てませぬと、申しておりました」

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  • それぞれの四字熟語の詳しい意味などは、辞典や専門書でお確かめください。
  • このサイトの制作時点では、三省堂の『新明解 四字熟語辞典』が、前版の5,600語を凌ぐ6,500語を収録し、出版社によれば『類書中最大。よく使われる四字熟語は区別して掲示。簡潔な「意味」、詳しい「補説」「故事」で、意味と用法を明解に解説。豊富に収録した著名作家の「用例」で、生きた使い方を体感。「類義語」「対義語」を多数掲示して、広がりと奥行きを実感』などとしています。

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Last updated : 2024/06/28