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加減乗除
かげんじょうじょ
作家
作品

福沢諭吉

【学問のすすめ】

 一国の有様をもって論ずるもまたかくのごとし。たとえばここに一政府あらん。賢良方正の士を挙げてまつりごとを任し、民の苦楽を察して適宜の処置を施し、信賞必罰、恩威行なわれざるところなく、万民腹を鼓して太平を謡うがごときは、まことに誇るべきに似たり。然りといえども、その賞罰と言い、恩威といい、万民といい、太平というも、悉皆しっかい一国内の事なり、一人あるいは数人の意に成りたるものなり。その得失はその国の前代に比較するか、または他の悪政府に比較して誇るべきのみにて、けっしてその国悉皆の有様をつまびらかにして他国と相対し、一より十に至るまで比較したるものにあらず。もし一国を全体の一物とみなして他の文明の一国に比較し、数十年の間に行なわるる双方の得失を察して互いに加減乗除し、その実際に あらわれたるところの損益を論ずることあらば、その誇るところのものはけっして誇るに足らざるものならん。

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太宰治

【正義と微笑】

 五月十日。水曜日。
 晴れ。けさ眼が覚めて、何もかも、まるでもう、変ってしまっているのに気がついた。きのう迄の興奮が、すっかり覚めているのだ。けさは、ただ、いかめしい気持、いや、しらじらしい気持といったほうが近いかも知れぬ。きのう迄の僕は、たしかに発狂していたのだ。逆上していたのだ。どうしてあんなに、浮き浮きと調子づいて、妙な冒険みたいな事ばかりやって来たのか、わからなくなった。ただ、不思議なばかりである。永い、悲しい夢から覚めて、けさは、ただ、眼をぱちくりさせて矢鱈やたらに首をかしげている。僕は、けさから、ただの人間になってしまった。どんな巧妙な加減乗除をしても、この僕の 一・〇いちこんまれいという存在は流れの中に立っているくいのように動かない。ひどく、しらじらしい。けさの僕は、じっと立っている杭のように厳粛だった。

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河口慧海

【チベット旅行記】

 白い石粒と黒い石粒とそれから細い竹屑たけくずのような物を持っておりまして、まず白い石粒が十になりますと黒い石粒一つに繰り上げ、黒い石粒が十になりますと竹屑のような物に繰り上げ、それから竹屑が十本になりますと白い坊主貝のような物に繰り上げ、それが十になりますとチベット銀貨に繰り上げます。そういう風にして十から百、千と沢山な勘定をして行くんです。まあ我々が早く読み早く数えて一時間位で済ます加減乗除の勘定を彼らは四人ばかり掛って たしかに三日間の仕事があるのですから、実に迂遠千万うえんせんばんと言わなければならんです。そういう遣り方で売買をするものですからなかなか暇が掛る。その商いをする所に三日ばかり逗留とうりゅうして見て居りましたところが、誠につまらない話が一つ起って参りました。

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佐野昌一

【虫喰い算大会】

 もちろん、一金五万円也、右借用候事しかじかというような一本建の数値だけがあってそのうちの数字が虫に喰われているのでは、探しようがないが、もしそれが加減乗除の運算書であれば、その一部が虫に喰われていても、前後の関係から推理によって正確に判別することができる。時には、数字の全部が虫に喰われていても、それらの数字の配列が分ってさえいれば、推理の力を積んでその全数字をいい当てることができる。

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岡本かの子

【宝永噴火】

 この話は、白隠の伝記の正史にはない。江戸時代の随筆のうちにある。あまりに昔の型通りな恋愛譚の発端なので、こしらえ話だとする人もあるだろうと思うが、それでもよいと思う。これ以外にはこの聖者に関する恋愛譚は全く見当らないし、私がこの伝記を書く目的は史実の為でなく、この聖者をまさぐって行ってあの神秘とあの神秘に触れた識管が、およそどのようなものであるか、いわば聖者を仮りの道具に使って私は私の中に在る慾望とその満足の仕方とを考えてみたいのが唯一の願いなのだから拵え話なら拵え話を利用して、白隠を掴んで見たい。それはちょうど、数学に於てある計算はわざと虚構な数を設け、置かれた数に加減乗除してみて、所用を達した上は、再びその数を退けるという方法に似たやり方であろう。その方法として私はこの拵え話とも思われるものを使ってみてもいい。兎に角、聖者の心理には一度ぐらい普通の恋愛を関係さしてみて、そこにどんな現象を呈し出すかを試すことは私に於て是非必要なことと思われる。

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太宰治

【虚構の春】

君はいつも筆の先をがらせてものかくでしょう。僕は君に初めて送る手紙のために筆の先をハサミで切りました。もちろんこのハサミは検閲官のハサミでありません。その上、君はダス・マンということを知っているでしょう。デル・マンではありません。だから僕は君の作品において作品からマンの加減乗除を考えません。自信を持つということは空中 楼閣ろうかくを築く如く愉快ではありませんか。

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坂口安吾

【悪妻論】

 ミレンを残すぐらゐなら別れなければ良からうものを、つまり、彼、彼女らは悪妻とか悪亭主といふ世の一般の通念や型をまもつて、個性的な省察を忘れたのだ。悪妻に一般的な型などあるべきものではなく、否、男女関係のすべてに於て型はない。個性と個性の相対的な加減乗除があるだけだ。わが平野謙の如く、戦争をその残酷なる流血の故に呪ひ憎んでゐても、その女房を戦争犯罪人などゝは言はず惜しみなくホータイをまいて満足してゐるから、さすがに文学者、沈着深遠、深く物の実体を究め、かりそめにも世の型の如きもので省察をにぶらせることがない。偉大! かくあるべし。

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三上義夫

【文化史上より見たる日本の数学】

 暦法には数学が要る。しかし当時の暦術では加減乗除さえ達者にできれば足りたのである。いわんや、やや後れて時々改正を要する暦法において、幾年経てもさらに改正しないのだから、正確に計算を施しても正確なことはできないようになっているから、算法の正確を期することも次第に廃れたのであろう。暦法上にも数学はあまり要らなくなる。日本では暦法が数学を発達せしむべき動力にはなっていない。

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Last updated : 2024/06/28