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快刀乱麻
かいとうらんま
作家
作品

岸田國士

【ある夫婦の歴史】

「おつしやいました。おつしやらなくても、お話の様子で十分察せられましたわ。お忘れになつたのです。さあ、このあとは、真帆子さん、ご自分でお訊きなさい。でも、ムッシュウ・コンシャアルがあんまり困るやうなことはよしませうね」
 真帆子は、鈴江の快刀乱麻式の応酬に見惚れてゐた。が、自分の名前を言はれると、やつとわれに帰つたやうに、
「もう、あんなに困つてらつしやるわ」

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林不忘

【釘抜藤吉捕物覚書 のの字の刀痕】

実際、彼等の社会ではそうした経験がなによりの誇りであり、また頭と腕に対する一つの保証でもあった。で、繩張りの厳格な約束にもかかわらず、彼だけはどこの問題へでも無条件で口を出すことが暗黙のうちに許されていた。が、自分から進んで出て行くようなことは決してなかった。その代り頼まれればいつでも一肌脱いで、寝食を忘れるのが常であった。次から次と方々から難物が持ち込まれた。それらを多くの場合推理一つで快刀乱麻の解決を与えていた。名古屋の金の しゃちほこにお天道様が光らない日があっても、釘抜藤吉の睨んだ犯人ほしに外れはないという落首が立って、江戸の町々に流行はやりの唄となり無心の子守女さえお手玉の相の手に口吟くちずさむほどの人気であった。

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喜田貞吉

【法隆寺再建非再建論の回顧】

ここにおいてさらに小杉先生の書庫について、古今目録抄・良訓補忘集・伽藍縁起流記資財帳、その他法隆寺に関係ありげな写本を拝借して、繁劇なる文部省勤務の余暇を割いて、夜を日に継いで研鑽を重ねてみると、すべての物がハッキリと判って来る気がして、所謂快刀乱麻を絶つの快感を覚え出した。有頂天になったとはけだしこんな場合の心情を言うのであろう。

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佐野昌一

【虫喰い算大会】

 ここが第十五会場です。遠い道路のちょうど半分に当ります。
(1)は小手調べ。(2)は快刀乱麻を断つ――というほどではないが、一度でばらばらと解けてしまいます。(3)は軽く貴下を楽しませてくれるでしょう。(4)は相当骨が折れます。

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佐々木味津三

【右門捕物帖 千柿の鍔】

 なぜまた弓を取りに来た辰がこんな災禍に会ったか! どうして専介といっしょに、かような巻き添えくって、むざんな横死を遂げるにいたったか?――それです。なぞと不審は、その一事です。
 だが、名人の明知は、真に快刀乱麻を断つがごときすばらしさでした。

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甲賀三郎

【支倉事件】

 筆者は茲に支倉の死と共に筆をくに際し、かくの如き至難比類なき疑獄事件に、終始一貫、不屈不撓の精神を以てよく犯罪を剔抉てっけつし得たる庄司署長、快刀乱麻を断つ如く判決し了った宮木裁判長の英断、正道を踏んで恐れざる神戸牧師の勇を たゝえ、尚被告の為めに献身的努力を惜まざりし能勢氏の労を多とすると共に、支倉が苦闘八年遂に第二審の判決に至らしめず、疑いを千古に残して自らくびれ、死後尚庄司署長以下の名声を傷つくる挙に出でたる彼の妄執を憐れみ、且つ恐れるものである。

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Last updated : 2024/06/28