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感慨無量
かんがいむりょう |
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作家
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作品
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島崎藤村 |
【新生】
ああ巴里も、わが巴里も、巴里から同行した美術家仲間はこの手紙を見てリオンへ向けて |
甲賀三郎 |
【支倉事件】
「奥さん、これですっかり手続はすみました」浅田は落着き払って云った。 「どうもいろ/\有難うございました」 静子は丁寧に頭を下げた。 こゝは支倉の留守宅の離れ座敷である。 庭には午後の陽が暖かそうに一杯当っていた。 |
田山花袋 |
【道綱の母】
窕子は首を振つて、『何でもない……何でもない……』『でも、母者はさつきから泣いてゐるんだもの……』童殿上してから丸で別な兒のやうにおとなしくなつた道綱は、いかにも心配さうにこんなことを言つて母親の顏を見詰めた。 『何でもない、何でもない……』 窕子は感慨無量だつた。涙は盡きずに出て來た。 『…………』 不安さうに何か言はうとして言はずに母親の顏を見た道綱が窕子にはたまらなくいぢらしくなつた。 『何でもないのよ……。心配しなくつても好いのよ……。おばアさんのことなのだから……』 |
永井隆 |
【長崎の鐘】
まあ大した数の患者だ。県や市の衛生課、医師会、警察、みんなかねての計画どおり手際よく救護陣を敷いた。近郊の警防団がさかんに活躍している。大村の海軍病院も泰山院長の指揮でいち早く救護隊を繰り出した。久留米の陸軍病院も到着した。救護の本家と自称していたわれわれ大学が被救護者となり、哀れとも残念ともなんともかとも感慨無量である。それでも家を焼かれ家族も重傷の古屋野教授が代理学長として活動の中心をなしておられる。
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林芙美子 |
【瀑布】
上野駅で別れて以来、一度も逢はなかつたので、里子の成長ぶりが直吉には感慨無量だつた。二人は瓢箪池へ出て、大衆的な広い喫茶店に這入つた。隅の方に席をみつけて、差し向ひに腰をかけたが、四囲のものがじろじろ見てゐるやうで、直吉は何となくそれが嬉しかつた。がつちりした胸元のまるみや、なだらかな肩の線が、如何にも初々しい。白い襟をきつちり引き締めて、胸に婦人会の裂地のマークを縫ひつけてゐた。赤つぽい髪だつたが、油で艶々してゐた。
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紫式部 |
【源氏物語 明石】
東宮にお目にかかると、ずっとお身大きくなっておいでになって、珍しい源氏の出仕をお喜びになるのを、限りもなくおかわいそうに源氏は思った。学問もよくおできになって、源氏は明石から送って来た使いに手紙を持たせて帰した。夫人にはばかりながらこまやかな情を女に書き送ったのである。 |
尾崎放哉 |
【入庵雑記】
此の大松の北よりに一基の石碑が建つて居ります。之には、奉供養大師堂之塔と彫んでありまして、其横には発願主圓心禅門と記してあります。此の大松と、此の碑とは、朝夕八畳に坐つて居る私の眼から離れた事がありません。此の発願主圓心禅門といふ文字を見る度に私は感慨無量ならざるを得ん次第であります。此の庵も大分とそこら中が古くなつて居るやうですが、私より以前、果して幾人、幾十人の人々が、此の庵で、安心して雨露を凌ぎ且はゆつくりと寝させてもらつた事であらう。
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中井正一 |
【「焚書時代」の出現】
立法部門が自分で立法機関をもつということ、この当り前のことが、今までなかったということが、実は不思議だといえば不思議だったわけである。しかしこの当り前のことが行なわれるために、今まで、数千年の歴史が無駄というか、たいへんないばらの路を歩みつづけてきたことを思うとき、感慨無量たらざるをえない。 |
葉山嘉樹 |
【井戸の底に埃の溜つた話】
ポムプを除り、竹を抜き、さて井戸屋さんが、縄を伝つて井戸の底へ降りて行つた。「こいつあひでえや。こんな井戸は始めてだ。畑と同じだ、埃が溜つてゐやがらあ」 と、井戸屋さんが、井戸の底で笑ひ出したものだ。 井戸の底で可笑しい位の事だから、二軒の長屋の主婦も、感慨無量な顔を見合はせて、 「まあ」 と云つたまゝ、涙をこぼしながら笑ひ出した。 |
宮本百合子 |
【偶感一語】
どうしようという感じが、言葉に纏まらない以前の動顛でした。私は、二度も三度も、新聞の記事を繰返して読みながら、台所に立ったまま、全く感慨無量という状態に置かれたのです。 |
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