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歓言愉色
かんげんゆしょく
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作家
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作品
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【吾輩は猫である】
しからずんば、こんな書生が何百人出て来て、何十年かかったって主人の頑固は癒りっこない。この湯槽に浮いているもの、この流しにごろごろしているものは文明の人間に必要な服装を脱ぎ棄てる化物の団体であるから、無論常規常道をもって律する訳にはいかん。何をしたって構わない。肺の所に胃が陣取って、和唐内が清和源氏になって、民さんが不信用でもよかろう。しかし一たび流しを出て板の間に上がれば、もう化物ではない。普通の人類の生息する娑婆へ出たのだ、文明に必要なる着物をきるのだ。従って人間らしい行動をとらなければならんはずである。今主人が踏んでいるところは敷居である。流しと板の間の境にある敷居の上であって、当人はこれから
歓言愉色
、円転滑脱の世界に逆戻りをしようと云う間際である。その間際ですらかくのごとく頑固であるなら、この頑固は本人にとって牢として抜くべからざる病気に相違ない。病気なら容易に矯正する事は出来まい。この病気を癒す方法は愚考によるとただ一つある。
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Last updated : 2024/06/28