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寛仁大度
かんじんたいど
作家
作品

佐藤紅緑

【少年連盟】

いま十五少年諸君の行動を けん するに、 なん しょ して くっ せず、事に のぞ んであわてず、われわれおとなといえども及びがたきものがすこぶる多い。そもそも富士男君の 寛仁大度 かんじんたいど 、ゴルドン君の 慎重熟慮 しんちょうじゅくりょ 、ドノバン君の 勇邁不屈 ゆうまいふくつ 、その他諸君の 沈毅 ちんき にして 明知 めいち なる、じつに 前代未聞 ぜんだいみもん 俊髦 しゅんぼう であります。とくに 歓喜 かんき にたえざるは、十五少年諸君が心を一にして一糸みだれず、すべて連盟の 規約 きやく 遵守 じゅんしゅ したる一点であります。

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徳冨蘆花

【謀叛論(草稿)】

孝の字を忠に代えて見るがいい。玉体ばかり大切する者が真の忠臣であろうか。もし玉体大事が第一の忠臣なら、侍医と大膳職と皇宮警手とが大忠臣でなくてはならぬ。今度の事のごときこそ真忠臣がわざわいを転じて福となすべき千金の機会である。列国も見ている。日本にも無政府党が出て来た。恐ろしい企をした、西洋では皆打殺す、日本では 寛仁大度かんじんたいどの皇帝陛下がことごとく罪をゆるして反省の機会を与えられた――といえば、いささか面目が立つではないか。

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福沢諭吉

【学問のすすめ】

仮りに人民の徳義今日よりも衰えてなお無学文盲に沈むことあらば、政府の法も今一段厳重になるべく、もしまた、人民みな学問に志して、物事の理を知り、文明の風におもむくことあらば、政府の法もなおまた寛仁大度の場合に及ぶべし。法の からきとゆるやかなるとは、ただ人民の徳不徳によりておのずから加減あるのみ。

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菊池寛

【忠直卿行状記】

 与四郎夫婦は、城中から下げられると、その夜、枕を並べて覚悟の自殺を遂げてしまった、なんのために死んだのか、確かにはわからなかったが、おそらく相伝の主君にやいばを向けたのを恥じたのと、かつは彼らの命を救った忠直卿の寛仁大度に、感激したためであろう。

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坂口安吾

【わが精神の周囲】

 人間は意志することによって、又、意志するものゝ中に、自分の姿を見出す以外に法がないと云えるであろう。温灸の婆さんのカケアイ漫才の不潔さに堪えられなかった私は、いさゝか寛仁大度を失し、ユーモアを失していたかも知れぬが、見様によれば、健全でないこともない。狭量ではあっても、不健全ではないようである。

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横光利一

【旅愁】

いや愛国心に理窟はない。中国のインテリの誤りは理窟で抗日抗日ということだよ、抗日抗日と云われれば、そんならよしッとこっちは肚を定める。一ヵ所で肚を定めれば、どこもかしこも戦争だ。そんなときに合理的愛国心だから人を殺さぬの、殺すのといったところで、むかしより合理的ならもっと殺す、非合理なら寛仁大度という非合理の見本みたいなもので、サイン一つでうまく片づく。とにかく僕は合理的愛国心なんて不合理も甚だしいと思うね。そのくせ誰だって愛国心だけは持っているのだ。

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榊亮三郎

【婚姻の媒酌】

代宗皇帝だつて、決して寛仁大度の君主でない、隨分在位十八年の間には、權臣を殺し勢家をも滅したこともある、然るにかう捌けて出たところを見ると、子を思ふ親心に、貴賤の別はないものである、女子もつた親は、御天子樣でも、嫁入り先きへは、遠慮をせねばならぬ、

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泉鏡花

【三枚続】

 お夏は聞正ききただすまでもなく、疑うまでもない、明かに、ちょうど自分が居る背後うしろから煽ぎ参らせよ、といわれたのである。
 それ、頼まるれば越後から米搗こめつきにさえ出て来る位、分けて師の内室うちぎみおおせであるのに、お夏は顔の色を変えてためらった。
(そうだ、勝山さん煽いでお上げ、)とお夏がただちに命を奉ぜぬのを、歌詠うたよみの大人は寛仁大度、柔かに教えるがごとく仰せられる。
 それでも黙って俯向うつむいていた。

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Last updated : 2024/06/28