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苛斂誅求
かれんちゅうきゅう
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作家
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作品
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【弟子】
その策士陽虎が結局己の策に倒れて失脚してから、急にこの国の政界の風向きが変った。思いがけなく孔子が中都の宰として用いられることになる。公平無私な官吏や苛斂誅求を事とせぬ政治家の皆無だった当時のこととて、孔子の公正な方針と周到な計画とはごく短い期間に驚異的な治績を挙げた。
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【土の中からの話】
大化改新のとき農民全部に口分田といふものを与へた。つまり公平に田畑を与へたわけであるが、良田も悪田も同じに差別なしに税をとる、元々田畑を与へた理由が大地主の勢力をそぐためであり皇室の収入のためであつて農民自体の生活の向上といふことが考へられてゐたわけではないから、税が甚だ重い。今日の供出と同じことで農民は不平であり、大いに隠匿米もやりたいであらうが、今日と違ふところは上からの天下り命令が絶対で人民の権利だの官吏横暴などと法規を楯にする手がないから、泣く子と地頭にはかたれないといふことになつて、逃亡とか浮浪といふことをやる。尤も本当は逃げずに戸籍だけごまかすといふ手もあつたに相違ないが、奈良朝だの平安朝の今日残存する戸籍簿に働き盛りの男子が甚しく少いのは名高い話で、つまり逃亡してゐるか、戸籍をごまかしてゐるのである。逃亡の理由にも色々とあつて、国守の苛斂誅求をさけるだけなら隣国へ逃げてもよい。かういふ逃亡は走り百姓といつて中世以降徳川時代までつづいてゐた。
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【聖ロヨラ】
サン・セバスティアンのヴィラ「ラ・クンブレ」を車で出かけたのは朝の八時半だつた。八月中旬の炎熱の日ではあつたが、道は山から山を傳つて行くのではあり、車の速度に比例して嵐氣を含んだ風が爽やかに車窓を吹き拔けるので、少しも倦怠を感じなかつた。私たちの車は、初めは南へ南へと山道を登つたり降つたりして進むのであつたが、どつちを見ても鋭い突つ立つた山ばかりで、次次に奇怪な形が展開するので馴れない目には珍らしかつた。それに、エスパーニャといふ國は貧乏國だと思つてゐたが、道路だけは、どんな山の中へ行つてもすばらしい近代的な鋪裝がしてあつて、不思議なくらゐだつた。何しろ最後の王朝時代に政府が思ひ切つた苛斂誅求をして全國に完全な道路網を張つたといふのだから、おかげでわれわれまで助かるといふものである。
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【淡紫裳】
朝鮮の家は小さい。汽車から遠くの山の麓に並んでいる農家を見ると屋根をふいた藁の色が、赤土山の色にとけ込んで、何とも漠々たる感じを与える。そして、屋根の破風というものがないから、掘立小屋みたいだ。王朝時代、多年苛斂誅求に苦しめられた風が残っているためかも知れない。
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【安藤昌益】
正保の昔し佐倉の義民木内宗吾が刑死した事や、寶暦の當時八幡の暴主金森頼錦が封を失つた事や、又夫等の事件ほど人口に膾炙するに至らないとは云ひ、所在聞くところのかの百姓一揆と稱するものは、皆治者と被治者の爭ひで實に苦々しい話である。しかし其原因を探つて見れば孰れも苛斂誅求に堪へなかつた農民の不平から起つた事で、根本の理由は生活を劫かされたと云ふ所に歸するから、實に強いので、其ため往々治者が被治者に負ける樣な珍妙な事になるのである。
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【武装せる市街】
工人の多くは田舎の百姓上りだ。それが、百姓をやめて工人となっていた。百姓は、工人よりも、もっとみじめだった。
百姓は、各国の帝国主義に尻押しをされて、絶えまなく小競合を繰りかえす軍閥の苛斂誅求と、土匪や、敗残兵の掠奪に、いくら耕しても、いくら家畜をみずかっても、自分の所得となるものは、何一ツなかった。旱魃があった。雲霞のような蝗虫の発生があった。収穫はすべて武器を持った者に取りあげられてしまった。
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【世界の一環としての日本】
かつて河北省に於ける農民暴動と夫による自治独立政権運動とが報道された際に、一つどうしても理解の行き兼ねる内容があったのである。それを私は他の機会にも述べたのだが、農民が苛斂誅求を免れようとか平和を得ようとかいう要求と並んで、北支の赤化を防止せねばならぬという要求をかかげて、敢えて蜂起したという云い伝えが夫である。
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【煩悩秘文書】
千代田城菊の間出仕、祖父江出羽守の狩猟地だった田万里は、殺生を好む出羽守のたびたびの巻狩りと、そのたびごとの徴発、一戸一人の助け人足、荷にあまる苛斂誅求のために、ついに村全体たってゆけなくなり、出羽守へ万哭のうらみのうちに、一村散りぢりばらばらに、住み慣れた田万里を捨てて村人は、他国に楽土を求めて、思いおもいに諸国へ落ち延びたのだった。
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【神州纐纈城】
今日の戦は侵略だ。今日の戦は貪慾だ。いやいや今日の戦はほとんど興味に堕している。圧制の快感、蹂躙の快感、戦のための戦だ! さて戦が勝利となる。獅子の分け前を受けるものは、獅子とそれらの眷族ばかりだ。人民はあずからない。さて戦が負けとなる。すると彼らは討ち死にする。不幸のようではあるけれど、その華々しい戦没の様が、詩となり歌となって詠われる。ある者は神にさえ祀られる。だが人民は苛斂誅求、新しい主人の鞭の下に、営々刻苦しなければならない。……諸侯は乱世の華だという! そうであろう、そうであろう。ただしその花は血に咲いた花だ! 民の膏血に咲いた花だ! なんと卜伝、そうではあるまいかな」
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【平の将門】
穀倉院の在庫高は、洛内の窮民に、施粥の炊き出しをするだけでも、日々、気がひけるほど減ってくる。大炊寮の廩院では、財務官たちが、青くなって、全国の庄家(荘園役所)にたいし、私田、公田の徴税と輸送とを、督促するのに、眼のいろを変えていた。
当然、各地とも、徴物使(徴税吏)の取立てが、苛烈を極めた。
抗するにも、訴えるにも、何ら、法の庇護をもたないこの時代の無力の民は、どんな苛斂誅求にも服すしかない。膏血をしぼっても、出さねばならない。
平安朝の民の、その頃の民謡に。
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Last updated : 2024/06/28