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迦陵頻伽
かりょうびんが
作家
作品

紫式部
與謝野晶子訳

【源氏物語 紅葉賀】

 源氏の中将は青海波せいがいはを舞ったのである。二人舞の相手は左大臣家の頭中将とうのちゅうじょうだった。人よりはすぐれた風采ふうさいのこの公子も、源氏のそばで見ては桜に隣った深山みやまの木というより言い方がない。夕方前のさっと明るくなった日光のもとで青海波は舞われたのである。地をする音楽もことにえて聞こえた。同じ舞ながらもおもてづかい、足の踏み方などのみごとさに、ほかでも舞う青海波とは全然別な感じであった。舞い手が歌うところなどは、極楽の迦陵頻伽かりょうびんがの声と聞かれた。源氏の舞の巧妙さに帝は御落涙あそばされた。陪席した高官たちも親王方も同様である。

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幸田露伴

【風流仏】

珠運しゅうんも思いがけなく色々の始末に七日余り逗留とうりゅうして、馴染なじむにつけ亭主ていしゅ頼もしく、おたつ可愛かわゆく、囲炉裏いろりはたに極楽国、迦陵頻伽かりょうびんが笑声わらいごえむつまじければ客あしらいされざるもかえって気楽に、たいなくとも玉味噌たまみその豆腐汁、心同志どし安らかに団坐まどいして食ううまさ、あるい山茶やまちゃ一時いっとき出花でばなに、長き夜の徒然つれづれを慰めて囲いぐりの、皮むいてやる一顆いっかのなさけ、嬉気うれしげ賞翫しょうがんしながら彼もきたるを我にるゝおかしさ。

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高村光雲

【幕末維新懐古談 彫刻修行のはなし】

 それから、また、本体に附属した後光がある。ふな後光の正式は飛天光という。天人と迦陵頻伽かりょうびんが、雲をもって後光の形をなす。その他雲輪光うんりんこう、輪後光、ひごの光明(これは来迎仏らいごうぶつなどに附けるもの)等で各々真行草しんぎょうそうがあります。余は略す。

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泉鏡花

【七宝の柱】

 さて経蔵きょうぞうを見よ。またいやが上に可懐なつかしい。
 羽目はめには、天女――迦陵頻伽かりょうびんが髣髴ほうふつとして舞いつつ、かなでつつ浮出うきでている。影をうけたつかぬきの材は、鈴と草の花の玉の螺鈿らでんである。

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長谷川時雨

【四人の兵隊】

 それをきいた時の感は、迦陵頻伽がりようびんがの聲とは、かうもあらうかと忝けなかつた。含みのある、美しきなさけに富んだ聲音こはね――きくうちに、わたしの心は、花が開くときもまたかうもあらうかと思ふ、やはらぎにみたされた。
 ――好いをもつた。

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Last updated : 2024/06/28