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肩摩轂撃
けんまこくげき
作家
作品

田山花袋

【蒲団】

一刻毎に集り来る人の群、殊に六時の神戸急行は乗客が多く、二等室も時の間に肩摩轂撃けんまこくげきの光景となった。時雄は二階の壺屋つぼやからサンドウィッチを二箱買って芳子に渡した。切符と入場切符も買った。手荷物のチッキも貰った。今は時刻を待つばかりである。

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高浜虚子

【丸の内】

 ドンがなると丸ビルの各事務所から下の食堂めがけて行く人は大変なものである。各エレベーターはことごとく満員で、そのエレベーターが吐き出す人数は、下の十字路を通る群衆の中になだれ込んで、肩摩轂撃けんまこくげきの修羅場を現出する。これは少し仰山な言葉かも知れんが、兎に角大変な混雑である。

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永井荷風

【上野】

今日不忍池の周囲は肩摩轂撃けんまこくげきの地となったので、散歩の書生が薄暮池に睡る水禽を盗み捕えることなどは殆ど事実でないような思いがする。

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木村荘八

【東京の風俗 序】

 酉の市の売りものは相変らず前年と同じにて盛んなり。とうの芋一たば六十円、三十円、二十円と区別して正札にて示し、熊手は小形張子細工のもの二百五十円と称す。以前は二三円の品なりしとおぼゆ。神社の「はきこめ」は三十円也。かたへに神官の御くじを振るけしきは従前と変らざれども、賽銭の降るものなく肩摩轂撃の雑沓なければ警官も手持ぶさたなるごとし。

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桑原隲蔵

【大師の入唐】

大師時代の洛陽は、さして長安に劣らぬ繁華で、その城内を貫通する洛水の上に架せる天津橋は、實に肩摩轂撃の熱閙を極めたが、今は城外に淋しい名殘を存するのみである。洛陽の市街も殆ど見る影もない程淋れて居る。支那の數ある舊都會の中で、尤も衰微した都會の一つであらう。

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柴田流星

【残されたる江戸】

 酉の市は取りの市、掃き米はき込めの慾の皮がつッ張った連中の、年々の福を祝うてウンと金が儲かるようと、それさに肩摩轂撃こくげき、押すなおすなの雑沓を現ずるのだが、何がさて、大慾は無慾に近く、とりにゆくのはとられにゆくので、おおとり神社には初穂をとられ、熊手屋には見すみす高いものを負けろとあっては縁起にかかわるので、景気よくシャンシャンシャンと手を打たれて、まるでただとりされるような金をとられ、場所が吉原田圃で太郎稲荷にも近ければ、狐ただとりは千本桜にも因みがあり、その千本が縁起だと嬉しがる手合いも尠からず、罪のないことこの上ない。

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国枝史郎

【八ヶ嶽の魔神】

 いつも賑やかな浅草は、その日も素晴らしいにぎわいで、奥山のあたりは 肩摩轂撃けんまこくげき、歩きにくいほどであった。

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  • それぞれの四字熟語の詳しい意味などは、辞典や専門書でお確かめください。
  • このサイトの制作時点では、三省堂の『新明解 四字熟語辞典』が、前版の5,600語を凌ぐ6,500語を収録し、出版社によれば『類書中最大。よく使われる四字熟語は区別して掲示。簡潔な「意味」、詳しい「補説」「故事」で、意味と用法を明解に解説。豊富に収録した著名作家の「用例」で、生きた使い方を体感。「類義語」「対義語」を多数掲示して、広がりと奥行きを実感』などとしています。

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Last updated : 2024/06/28