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奇奇怪怪/奇々怪々
ききかいかい
作家
作品

直木三十五

【南国太平記】

「先生、一寸一寸」
「何か用かの」
「毛唐の眼玉の蒼いのは、夜眼が見えるからだって、本当かい?」
話説わせつす。目の当り、奇々怪々な事がありやした」
「又、諸葛孔明が、とんぼ切りの槍を持ってあばれたかの」

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甲賀三郎

【支倉事件】

 彼の受縛を境としてこの物語の前篇は尽きる。これより後に現われる訊問より断罪に至る中篇は、後篇に当る彼の執念の呪と相俟って、更に奇々怪々たる事実を諸君の眼前に展開するのである。


          訊問

 捕えられた支倉の奇々怪々な言行を述べるのに先立って、 鳥渡ちょっと断って置きたい事がある。之は読者諸君に取っては退屈な事で御迷惑であるかも知れない。然し之は是非述べて置かないと後の事に重大な関係があるので、一回だけ辛抱をして貰いたいと思う。

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賀川豊彦

【空中征服】

「誰がそんなことを言うていたの? 」と菊子が、その新聞記者に聞くと、
「葬礼人足の間ではもっぱらの評判です。市長は切利支丹伴天連の魔法使いで、夜の夜中に死人と一緒に寝たり、お葬式をするのでも、お坊さんを呼ばないで、伴天連にひとりお祈りをしたり、それは奇々怪々の人物だそうです」
 新聞記者に、その噂をしている葬式人夫に会ったかと尋ねると、
「会いましたよ。なんでも葬礼人足は、賀川豊彦という人物が二人あって、一人の賀川市長は魔術使いで、もう一人の賀川豊彦というのが現市長で、今ではどちらが、どちらか判らなくなっていると言うていましたよ。

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太宰治

【右大臣実朝】

将軍家はその時には、あのいつものお優しい御微笑もなさらず、一座の者に襟を正さしむるほどの厳粛なお態度で、それは違ひます、故将軍の薨去は、武家の権柄を執ること二十年、官位を極めしめ給うて後の御事にして謂はば天寿、それとも何か、あの橋のために奇々怪々の御災厄に逢ひあさましき御最期をとげられたとでも申すのか、まさかさうとも思はれませぬ、また重成法師の事などは論外、あのやうな愚かしき罪をなして殃に逢ふは当然、すなはち天罰、いづれも橋建立のためのわざはひではありませぬ、

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河口慧海

【チベット旅行記】

元来チベットの耕田部こうでんぶではあられを一番恐れて居るのである。特に夏の間に霰が降りますと一年一季あるいは二年一季の収穫の麦あるいは小麦をその降霰こうさんのためにすっかりと荒らされてしまうものですから、チベットの農民はその降霰を恐るることは実に大敵国が攻め込んで来たように恐れて居るのでございます。ですから其霰それを防ぐ方法を立てなくてはならぬ。その方法が実に奇々怪々で抱腹絶倒せざるを得ないのです。

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国枝史郎

【八ヶ嶽の魔神】

 地下に埋められた葉之助は、さてそれからどうなったろう?
 奇々怪々たる出来事が引き続き起こったのであった。
 ちょっと待てと云って立ち去ったまま、一学は帰って来なかった。で葉之助は待っていた。待っているのはよいとしても、呼吸いき の苦しいのは閉口であった。名に負う地下にいるのであった。気味の悪さは形容も出来ない。

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海野十三

【太平洋魔城】

「そうです、あの時、僕はあなたを見つけたのですが、あまりのことにびっくりしたのです。実は、太刀川さん。僕はこの酋長ロロのすんでいるロップ島へながれついて、一命を助ったのです。酋長ロロは、なかなかりっぱなそして勇敢な人間です。そのロップ島からすこしはなれたところにカンナ島という石油が出る島がありますが、そのカンナ島の古井戸から、この海底城(ダン艇長は海底城という言葉をつかった)へ、秘密の通路があることを知って、僕たちをつれてきてくれたのです」
 聞けば聞くほど、奇々怪々な話であった。
「その秘密通路というのは、一たい誰がつくったものですか」
 太刀川は、そう問いかえさずにはいられなかった

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佐藤紅緑

【少年連盟】

「いいえ、なにも、だいじょうぶです」
 と戸をまもるモコウがいった。
 雨はいぜんとして降りしきり、強風はものすごい音をたててふきすさぶ、あかりがチロチロとまたたく、夜はふけた、イバンスの 奇々怪々ききかいかいな物語はいつはてるともしれない。

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伊東忠太

【妖怪研究】

 かたちあらはされたもので、もつとふるいとおもはれるものは山東省さんとうしやう武氏祠ぶしし浮彫うきぼり毛彫けぼりのやうなで、これ後漢時代ごかんじだいのものであるが、その化物ばけものいづれも 奇々怪々きゝくわい/\きはめたものである。山海經さんかいけうてもきはめて荒唐無稽くわうたうむけいなものがおほい。小説せうせつでは西遊記さいいうきなどにも、いたところ痛烈つうれつなる化物思想ばけものしさう横溢わうえつしてる。

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坂口安吾

【織田信長】

老蝮は味方を売った。然し、主を売ることはできなかった。なぜなら、彼自身が総大将であったからだ。総大将の裏切りなどゝいうことが有るべきものではない。裏切りにあらず、それを降参というのである。ところが、老蝮は、降参といえば降参、裏切りと云えば裏切り、なんとも得体の知れない形で始末をつけているのであるから、何事もこの老蝮の手にかゝると奇々怪々な形になってしまうのである。彼は上洛の信長軍に負けて逃げのびて降参したが、敗北して逃げる何ヶ月も以前から、とっくに信長に降参して、自らその上洛をすすめていたのであった。

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Last updated : 2024/06/28