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勤王攘夷
きんのうじょうい
作家
作品

島崎藤村

【夜明け前 第一部上】

民間にある志士、浪人、百姓、町人などの捕縛と厳刑とが続きに続いた。一人ひとりは切腹に、一人は獄門に、五人は死罪に、七人は遠島に、十一人は追放に、九人は押込おしこめに、四人は所払ところばらいに、三人は手鎖てじょうに、七人は無構かまいなしに、三人は急度叱きっとしかりに。勤王攘夷きんのうじょうい急先鋒きゅうせんぽうと目ざされた若狭わかさ梅田雲浜うめだうんぴんのように、獄中で病死したものが別に六人もある。水戸の安島帯刀あじまたてわき越前えちぜんの橋本左内さない、京都の頼鴨崖らいおうがい、長州の吉田松陰よしだしょういんなぞは、いずれも恨みをのんで倒れて行った人たちである。

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島崎藤村

【夜明け前 第二部上】

今度わたしは総督の執事なぞと一緒になって見て、はじめていろいろなことがわかりました。あの仲間には三つの内規があったと言います。幕府をたすけるもの。浪士を妨害するもの。唐物とうぶつ(洋品)の商法あきないをするもの。この三つの者は勤王攘夷の敵と認めて 誅戮ちゅうりくを加える。ただし、私欲でもって人民の財産を強奪することは許さない。そういう内規があって、浪士数名が江戸金吹町かなぶきちょうの唐物店へ押しかけたと考えて見たまえ。前後の町木戸まちきどめて置いて、その唐物店で六連発の短銃を奪ったそうだ。

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中里介山

【大菩薩峠 京の夢おう坂の夢の巻】

「本来、新撰組というのが、幕府の爪牙そうがとなって働く放漫有志の鎮圧を専門としているが、もともとかれらは生え抜きの幕臣でもなんでもないから、その御すべからざるところに価値ねうちがあったのだ、彼等は事情やみ難く幕府のために働くとは言い条、彼等の中には勤王攘夷の熱血漢もあれば、立身の梯子として組を利用しているものもある、天下の壬生浪人として大手を振っていたものが、公然幕府の御用壮士と 極印ごくいんされることを本意なりとせざるものがある」
「それはそうありそうなことだ、で、右のように彼等が役附いたとなると、当然それに帰服せざるやからの出処進退というものが見ものだな」

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Last updated : 2024/06/28